巨大で特徴的な形をしていることから“恐竜クレーン”とも呼ばれるガントリークレーン。これを間近で見ることができる国内でも珍しいスポットが、お台場にあります。目と鼻の先にはその法律上の扱いから「日本だけど日本じゃない」と説明される場所。どういうことなのか、管理する東京都港湾局などを取材しました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
国内外からの物資を詰め込んだ多数のコンテナが行き交い、物流の拠点でもある東京港。
管理する東京都港湾局によれば、そのふ頭の一つである青海ふ頭は、コンテナやそれを運搬する巨大なガントリークレーンを「至近距離で見ることができる国内でも珍しい場所」です。
一般的に、コンテナ船のような大型船は、船底が深く作られています。そのため、停泊にも特別な設備が必要で、街の近くまで船体を寄せることができません。コンテナ船の停泊地は、多くの場合、市街地から離れた場所になっています。
しかし、青海ふ頭のあるお台場エリアは、臨海副都心開発により、ふ頭のほど近くまで街が広がっています。そのため、“至近距離”からコンテナ船や、コンテナの荷役作業を見ることができるのです。
『東京港港勢 令和3年』によれば、青海ふ頭(専用貸付ターミナルと公共ターミナルの合計)のコンテナの取り扱い状況は2021年度で隻数、総トン数ともに港湾内2位(1位は大井ふ頭)。
その歴史は古く、青海ふ頭の第1バース(※)が供用を開始したのは1985年にさかのぼります。ふ頭を管理する東京港埠頭株式会社によれば、青海ふ頭は全長1570mで現在5バース、コンテナクレーン9基を有するとのこと。
※着岸する場所、岸のこと
背後には、コンテナ貨物を荷さばき・保管・配送するための「青海流通センター」「ワールド流通センター」が稼働しています。
そんな青海ふ頭の観察スポットは、すぐ隣にある青海南ふ頭公園。現在は閉館した旧「東京お台場 大江戸温泉物語」跡地の隣に位置する公園で、街との近さがうかがえます。
実際に訪れると、公園の敷地がガントリークレーンの足元まで迫っていることに驚きます。ガントリークレーンは巨大で特徴的な形をしていることから“恐竜クレーン”と呼ばれることもあり、クレーンを眺める人もちらほら。
また、この公園の横には東京港のメインストリートである第一航路が走るため、船影を多く確認でき、対岸には東京港最大の大井ふ頭の様子も見られます。
ただし、いくら近いとはいえ、もちろんコンテナが荷役されるふ頭の内部は関係者以外の立ち入りが禁止されています。
ここでもう一つ、おもしろいのが、ふ頭内のコンテナを置いておく場所が「日本だけど日本じゃない」と言われることがある、いわゆる「保税地域」であることです。
保税地域とは、関税法上、外国から輸入された貨物を、税関の手続きが完了するまで、関税を留保したまま、積卸し、運搬、一時蔵置することができる場所。
貨物を人間にたとえると、海外旅行をしたときに“飛行機で到着してから入国審査までの間”と似た状況とされ、そのため保税地域の概念を説明するときに「日本だけど日本じゃない」と表現されることがあります。
フェンスを挟み目と鼻の先に広がる、特殊な景色。臨海副都心という比較的、新しい都市計画は、身近にちょっとした“異世界”を生み出しています。