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「手は出さず 口出す夫 うっせぇわ」夫の〝自虐〟川柳に集まる共感
「積極的に育児にかかわり、妻と協力できているつもり」でしたが…
手は出さず 口出す夫 うっせぇわーー。こう聞いて、「わかる〜」とうなずいた人、思わず目を伏せたくなった人はいませんか? 「働くパパママ川柳」に応募された1句に、多くの共感が集まりました。妻が夫のことをグチった句……ではなく、川柳を作ったのは男性です。なぜ自虐的な句を作ったのでしょうか?
作者は静岡県に住む甘えん坊将軍さん(36)です。小学3年生と1年生の兄弟の父親で、国立大学の職員として働いています。
川柳は、妻(36)から「口だけじゃなくて、体を動かして」と言われた経験をもとに作りました。
休みの日に一日中掃除や洗濯をしたり、役所や職場・学校などへ提出する子育て関係の書類に記入したり、長男のサッカーチームの練習に付き添ったり、「家事育児は苦にならない」という甘えん坊将軍さん。「積極的に育児にかかわり、妻と協力できているつもりでした」と話します。
しかし、妻の視線は厳しいようです。
ある日の夜、寝る時間が近くなった子どもたちに、「いつまで起きてるの?」「早く寝なさいよ」と言ったときのこと。妻から鋭いツッコミが入りました。
「じゃあ、あなたは早く寝かせるために何をしたの?」
主に寝かしつけをしているのは妻です。甘えん坊将軍さんは子どもたちに歯磨きをさせていたものの、妻には「寝るまでの過程を逆算して行動してほしい」と言われたそうです。
「率直に『厳しいな』と感じましたが、妻が求めるレベルに達していなかったんだと思います」
考えてみると、「口が先に出ちゃうこと」はたくさんありました。
「『宿題やったの?』『明日の準備は?』と声をかけるのも、妻には『口だけではなくて、自分の目で見て確認してからにして』と言われます」
やったか、やっていないかの確認も必要ですが、その前に子どもをサポートする、一緒にやるという姿勢が大切です。問われていたのは、子育てをする〝当事者〟の意識でした。
「まずは行動して、やることをやってから言おう。口より先に体を動かさなきゃなと反省しました」
川柳を応募することは、妻にも話していました。
「手は出さず 口出す夫 うっせぇわ」の句を伝えると、妻からは「その通りだよね(笑)反省してこれから頑張ってください」と言われたそうです。
「一般的な家庭に比べたら、はるかに家事育児をやっていると思う」甘えん坊将軍さんは、「妻が求めてくる『子育てのハードル』が高い気がします」と笑います。
周りの同級生や先輩に家事育児について聞いても、ギャップを感じることはありました。
「ゴミ捨てをしただけで感謝されている人がいて、そんなの当たり前なのになぜ褒められるのかと思いました。父親が夕飯を作ったら『すごいね、珍しい』と言われるような家庭もあって、妻には『ほかの家庭を見てくれよ』とも言いたくなりますね」
一方で、妻の「厳しさ」の背景には、育った環境が関係していると話します。
「妻は中学校から高校の6年間をアメリカで過ごした帰国子女です。男女平等の考え方が根づいています」
「でも、日本は家事のメインを担うのが女性という風潮が相変わらず根強い。『なんで男性が〝手伝う〟という位置にいるの?』『やって当然のことなのに、なんで男性がやったら評価されるの?』と常々言われますね」
妻は看護師で、現在はパートタイムで働いています。明確に家事育児の分担はしていませんが、掃除・洗濯を主に甘えん坊将軍さんが担当し、帰宅時間の早い妻が学童のお迎えに行ったり、食事を用意したりするそうです。
「妻の言うことはもっともで、女性がどんなに家事育児をやっても誰からも褒められることはありませんし、『やってやったぞ』と主張する女性もいないと思います」
「でも、男性は『あれもやった、これもやった』とアピールしがちな気がします。僕もそうなんですけど、家事育児については『これやってるよ』とつい言いたくなる。でも、本来それはやって当たり前のことなんですよね」
今回の「第6回オリックス働くパパママ川柳」には4万7188作品が寄せられ、男性からの応募が52%でした。
甘えん坊将軍さんの川柳は、「働くパパママ川柳」の優秀賞を受賞しました。また、受賞作品と佳作の合計39句のうち、一般投票で多くの共感を集めた「みんなで選ぶ共感賞」の一つにも選ばれました。
「『女性が夫に対して文句を言った句』と捉えられて共感を受けたのかなと思いました。世の中の男性的には、僕と同じ『口だけ出している』と思われている人が多いのかもしれません」
「共感賞」を受けたことについて、妻は「多くの方の共感を得る作品だったことに、『私だけが思ってるんじゃないんだなぁ』と正直ほっとしました」と話します。「この作品がたくさんの旦那さんの目にとまって、少しでも家のことを主体的にやる気持ちになってくれたらいいなと思います」
今後、甘えん坊将軍さんには「子どもたちの見本になるような父親になってほしい」と考えています。「口だけの父親の言うことは、どんな子どもにも響かないと思います。『家のこと、こんなにやってるよ』アピールも必要ありません」と〝辛口〟です。
一方、甘えん坊将軍さんは、家事育児をする姿から息子たちにも何か伝わっているのでは、と期待します。
「男性が家事育児をするのは当たり前、特別ではないと感じて育ってくれるとうれしいです」
今後の家事育児の取り組み方については、「妻にいろいろ注意されることが多いので、同じことを何回も言われないように気を付けようと思います」と笑いました。
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