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惚れた!ディズニー級に溶け込んだ「街の景観に配慮しすぎた自販機」
「街の景観に配慮し過ぎた自動販売機」――。そんな文言に添えられた自販機の写真が、「ディズニー並みの徹底感」「擬態しとる」と反響を呼びました。自販機は木造カバーで覆われ、世界遺産「石見銀山」の街並みにすっかり溶け込んでいます。投稿者とカバーの設計者に話を聞きました。
写真を投稿したのは、国内外で廃墟や一風変わった建築などを撮影しているフォトグラファーのSahoさん @urbex_34 です。「廃墟探検家」と名乗っています。
「街の景観に配慮し過ぎた自動販売機」については、今年6月と8月の2回ツイート。6月分は「いいね」が17万件を超えるなど、いずれも反響を呼びました。
街の景観になじんでいることから「ディズニー並みの徹底感」「擬態しとるがな」というコメントが寄せられました。ほかには「惚れた」「江戸時代からある自販機」などの感想がありました。
街の景観に配慮し過ぎた自動販売機。 pic.twitter.com/YbGb9Ol6CY
— Saho / 廃墟探検家 (@urbex_34) June 16, 2022
「石見銀山遺跡とその文化的景観」が世界遺産に登録されたのは2007年。鉱山跡や美しい街並みなど一帯が評価されました。自販機は、この一帯に位置する島根県大田市大森町の古い街並みの中に設置されています。
Sahoさんが現地を訪れたのは、今年2月ごろ。「古い街並みを撮影するのが趣味で、この日もいつも通り建物の撮影に来ていました」
「自販機は高台にある駐車場から見下ろせる位置にあり、駐車場から街並みを撮影した際に気づきました」
最初は「格子状のへんな塊」に見えたとSahoさん。よく見て自販機だと分かったそうです。自販機について「完璧に周囲に溶け込めていると思います」と話します。
今回の投稿によって、大森地区内に同じような木造カバーで覆われた自販機があると知ったSahoさんは「探しに行きたくなりました」としています。
どんな経緯で、自販機カバーが生まれたのでしょうか。
石見銀山のある大田市観光協会に尋ねてみると、「設計者」として地元の建築設計事務所「ゆまにてく」の渡部孝幸さんを紹介してくれました。
渡部さんによると、自販機を木造カバーで覆ったのは、石見銀山の世界遺産登録よりも10年ほど前の1996年ごろだそうです。
自販機のある島根県大田市の大森地区は1987年、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。「伝統的な町並みの整備を進める中で、目立っていた自販機をどうしようかという話になりました」と渡部さん。「移転するという構想もありました」と明かします。
ただ、自販機は元の位置に残すことに。そこで、周囲の景観にあわせた木造カバーを設置することになったと言います。
「町並みの中にある格子のデザインを取り入れました」と渡部さんは話します。周囲の風景に溶け込ませるためです。また、時代とともに古びた雰囲気が出るよう、柿渋や顔料などを混ぜ合わせた手作りの塗料を使ったそうです。
自販機なので、飲料を補充できるよう扉式に。素材はスギを使い、工期は1週間程度だったそうです。
実は、現存の木造カバーは2代目とのこと。自販機のリニューアルにあわせ、2008年に新たなカバーを作りました。初代の屋根は木造でしたが、劣化のスピードを抑えるため2代目では周囲の色になじむような色の鉄板にしました。
自販機は、石見銀山を訪れた観光客の目を引くもので、たびたびSNSをにぎわせています。新たな〝名所〟となりつつある?
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