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着物って作れるんだ…「自分で染めた振袖」で成人式、完成度に涙
専門学校生が伝えた「ものづくり」の素晴らしさ
「自分で染めた振袖で成人式に出席しました!」。波の上を海鳥が舞うようすが描かれている振袖姿のツイートに、たくさんの「いいね」と、「目の覚めるような青」「すてき」といった反響が集まっています。投稿したのは専門学校で着物の制作を学んでいる鶴居夕さん。大変だったことや友人・家族の反応を聞きました。
鶴居さんの通う着物の専門学校では、2年生のときに成人式用の振袖をつくる課程があります。
制作にとりかかったのは昨年5月ごろ。反物を選んでいるとき、波の地模様がとてもきれいで一目惚れしたそうです。
「素敵な反物とご縁があったので、海のような青い地色にして、白い海鳥を全面に飛ばそうと、すぐにイメージが広がりました」
着物の制作にはさまざまな工程があります。反物を着物の形に生地を仮止め(仮絵羽)し、ひな型の図案を、実際のサイズにおこした下書きをもとに生地へ描き入れます。
反物の地色を染めて、その染色を定着させる「蒸し加工」を工房に依頼。それが戻ってきたら、鳥たちに色を乗せていきます。
最後に振袖全体が華やかになるよう金粉で描く「金彩」が施されます。
和裁科の学生たちが着物に仕立ててくれて、年末に手元に届きました。
「反物の状態の時は不安だったんですが、箱を開けて袖を通してみるとちゃんと振袖になっていて。助言をくれた先生方や、和裁科の子たちには感謝してもしきれないです」
小さな頃から「ものづくり」が好きで、絵を描いたり手を動かしたりすることが好きだったという名古屋出身の鶴居さん。
着物が好きな祖母や母の影響で、着物の制作を学ぼうと奈良の専門学校に進みました。
友禅染めや絞り染めといった「染め」や、手織り機で着物を織る「織り」、図案の描き方やグラフィックデザインを含め、着物のつくり方をいちから学んでいるそうです。
作家名である「鶴居夕」は、お世話になった人に「お礼に着物を作ります」と持ちかけたところ、「『鶴の恩返しの夕鶴みたいだね』って言われて。それはいいなと作家名にしました」と話します。
鶴居さん自身も、普段から着物を身につけて楽しんでいるといいます。
「作業が多いので、洋服と合わせたり、男ものの細い『角帯』を締めたりすることが多いです。おはしょりが苦手なので帯の中にしまっています」と笑います。
リサイクル着物など安価なものもあり、帯や小物でバリエーションが出せるので「1着でいろんな雰囲気にできる」と指摘します。
「体型が変わってもカバーしてくれるし、お手入れが簡単な着物もあります。もっと気軽に着てほしいです」
成人式では鮮やかなブルーの振袖が目立ち、友人からも褒められたそう。「自分で作ったんよ」と明かすと「作れるの!?」と驚かれたといいます。
「自分の好きなように染めた着物ですが、『きれい』『こんなの着たい』ってSNSでも声が上がって、こんなにたくさんの人が『いいね』って言ってくれて、自信につながりました」
着物の制作を習い始めてまだ2年目。「間近で見ると粗もあったかな」と謙遜する鶴居さんですが、お母さんは振袖の完成度の高さに思わず涙したそうです。
「『想像を超えたクオリティー。本当にすばらしい』と、着物が好きな母が言ってくれて、とてもうれしかったですね」
着物作家として、いつか自分でデザインした図案を自分の工房で染めたり織ったりできたら……。そんな夢を抱いています。
自分で染めた振袖で出席しました!
— 鶴居 夕 (@Tsurui_yu) January 10, 2022
色んな方々から褒めていただけてとても嬉しかったです…!#成人の日2022 #振袖 https://t.co/OrUdlrWgai pic.twitter.com/Wen5GIcOGV
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