連載
#239 #withyou ~きみとともに~
ヨシタケシンスケさんに聞いてみた「子どもが不登校になったら?」
悩みながら…「まずほめる」
絵本作家のヨシタケシンスケさんは、今年2月に「にげてさがして」を出版しました。嫌いなことからずっと「逃げて」きたからこそ、いま自分にとって居心地の良い場所を見つけることができた――。自身の経験から、「逃げる」という言葉をポジティブにとらえてほしかったと言います。ただ、親の立場から、自分の子どもに「逃げてもいいよ」と伝えるのは、とても難しいことだとも思います。学校に行きたくない、と子どもが打ち明けてくれたとき、どう接すれば良いのでしょうか。ヨシタケさんと一緒に考えてみました。
ヨシタケシンスケさん: 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。広告美術やイラストレーターなど多岐にわたって活動し、2013年、初の絵本「りんごかもしれない」が大ヒットした。その後もベストセラー多数。
ヨシタケさんには、お子さんが2人います。
ヨシタケさんは、「学校に行きたくない、と自分の子が言い出したら、『逃げていいよ』と言いたいですが、迷います。自分の子だから許せること、自分の子だから許せないことも当然ある。家族ってそういうもの」と正直な気持ちを話してくれました。
「逃げる」は、どうしてもマイナスなイメージで使われることが多い言葉です。
そんな言葉をタイトルにしたヨシタケさんの新著『にげてさがして』ですが、出版社によると、不登校のお子さんがいる親から「逃げていい、と息子に言えなかった自分を恥じた。自分が消化できたら、この本を息子に渡したい」といったメッセージが寄せられているそうです。この親御さんのように、自分を納得させるために、たくさん悩んでいる方もいます。
絵本作家だけれど、色つけが苦手。編集者に「デザイナーさんにお願いしましょうか」と言われ、ほっとしたというヨシタケさん。「逃げる」を繰り返した先に自分にとって居心地の良い場所を見つけることができたと話します。だからこそ、取材では自身のダメダメなエピソードをさらけ出して、「逃げる」という言葉の違った意味を伝えようとしてくれました。
私には未就学の幼い3人の息子がいます。
5歳の息子に「にげてさがして」を読み聞かせたとき、まだ内容が難しかったようで、ぴんと来ていない様子でした。
将来、もし子どもたちが「学校に行きたくない」と言った時に、絵本に出てくるような、「きみを守ってくれる人」「わかってくれる人」のような存在になれるか。私には、まだ自信が持てません。
夫婦共働きで、頼れる親族も近くにいない今の私。親の勝手な都合とは分かりつつ、息子たちには毎日元気に問題なく保育園に通ってほしい、逃げずに頑張ってほしいと期待してしまっています。
余裕のなさや、自分が望んでいる子どもの姿から、SOSにきちんと耳を傾けられない時もあるかもしれません。
ヨシタケさんも、不登校の親子とやり取りする中で、仕事をしながら子どもの面倒をみないといけなかったり、子どもの将来も考えないといけなかったり。大変そうな親たちの姿を見たそうです。
だから「親として迷うけれど…」と少し間を置き、「親は、子どもに学校に行って欲しいわけじゃなくて、『幸せになってほしい』と願っているはず。その最終目標を見失わないようにしたいですね」と話します。
「学校に行かないと将来的に幸せになれないんじゃないか。そんな不安から、学校に行って欲しい、と思う気持ちも間違いじゃない。でも、子どもが不幸になってまで行くところではない」
ヨシタケさんが強調するのは、「学校に行きたくない」と勇気を出して話してくれたことを、ほめてあげること。そのうえで、学校に行けない時間を何に使うのか、パワーをどこに振り分けていくのかを子どもと一緒に話し合って、とアドバイスしてくれました。
逃げた先に、どうするか。
「だいじなひとを だいじななにかを さがしにいこう。」
「そのひとは、えいがのなかにいるのかもしれない。」
「そのひとは、ほんのなかにいるかもしれない。」
ヨシタケさんは、絵本の中で、手がかりを優しく示してくれています。
親として、「逃げて探す」という選択肢があることを子どもたちに伝え、悩みながらも一緒に考えていけるようになりたいと思います。
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