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五稜郭のサクラがボヤ、穴にたばこの吸い殻 あえてツイートした思い
「犯人捜しをしたいわけではない」
北海道函館市の観光名所、五稜郭公園のサクラ。たくさんの人に愛されているサクラの老木から、煙が上がる痛々しい写真がツイッターで話題になりました。公園担当者がツイートに込めた思いを聞きました。
話題になったのは、函館市内の公園を管理する「函館市住宅都市施設公社・公園管理部」のツイートです。
10月22日に投稿されたのは3枚の写真。1枚目では、サクラの木の穴から煙が上がっている様子。2枚目では地面に集められたゴミ。3枚目では、サクラの穴が緑色のもので覆われています。
写真にはこんな文章がつけられました。
「五稜郭公園でボヤがありました。
サクラの幹にある穴へ火のついたタバコを捨てた事が原因です。
消火後、穴の中を確認したところタバコのフィルターなど多くのゴミが入ってました。
穴はしっかり埋めましたが。。。
五稜郭公園のサクラは函館市の観光資源であり財産です。
絶対にやめてください!」
このツイートは1.7万回以上リツイートされ、「これは放火だよ」「桜が悲鳴をあげている」「ひどい」「五稜郭の桜、本当にきれいなのに・・・」「木が元気になりますように」と200件以上のコメントがつき、反響を呼びました。
五稜郭公園でボヤがありました。
— 函館市住宅都市施設公社 公園管理部 (@sr08v4IuE4iUitc) October 22, 2020
サクラの幹にある穴へ火のついたタバコを捨てた事が原因です。
消化後、穴の中を確認したところタバコのフィルターなど多くのゴミが入ってました。
穴はしっかり埋めましたが。。。
五稜郭公園のサクラは函館市の観光資源であり財産です。
絶対にやめてください! pic.twitter.com/d6QLX9wUvb
話題になったツイートをした、五稜郭公園担当者に話を聞きました。
写真のサクラがあったのは、五稜郭の堀の外周。誰でも入れる道のすぐ脇に植わっている老木でした。
ボヤが発生したのは、9月22日。夕方ごろ公園を散策していた人から、サクラから煙が出ていると管理者に連絡があり、急行。水をかけて火を消しました。
煙が出ていた木のうろ(穴)の中をかき出すと、たばこの吸い殻や空き箱、あめの包装紙など、大量のゴミが出てきました。
「今年に入ってからすでにボヤ騒ぎは3回目でした」。いずれも周辺にあったサクラでした。
五稜郭公園はサクラが有名で、園内には古いもので樹齢100年ほどになる木があるなど、サクラの老木1600本が植わっています。
開花時期の2週間は、見事なサクラを見るため、年間の観光客数の3分の1にあたる大勢の人が訪れるそうです。
それでも、華やかなサクラの裏には、問題もありました。
「公園は文化財に指定されており、簡単に新しい木に植え替えたりできません。もし枯れてしまえば、園内のサクラの本数が減ることになる。今ある木を大切に維持していかなくてはいけないんです」
限りあるサクラは「財産」そのものでした。地元の人や企業が協力して、肥料を与えていました。その矢先のぼやでした。
6月17日(水)から五稜郭公園「サクラの木へお礼肥」プロジェクトが始まりました!
— 函館市住宅都市施設公社 公園管理部 (@sr08v4IuE4iUitc) June 18, 2020
初日は午前・午後合わせて約40名の市民や企業の方々にご参加いただきました。
当プロジェクトは6月30日まで行っております!
興味のある方はぜひご参加下さい。#五稜郭公園 #五稜郭 #函館 #サクラ #桜 #公園 pic.twitter.com/4SkoRLsT83
「とても残念でした。でもそれ以上に、『なんでこんなことをするのかな』『どうすれば防げるかな』という思いがありました」
ボヤが上がったうろ(穴)は、人工樹皮を取り寄せて、ふさぎました。木にとって害がないもので、木が自分の力で回復するときに妨げになりません。でも、回復には長い年月を要します。
人工樹皮を施した段階で、五稜郭公園の担当者は、このボヤについて、どんなことが起き、どんな措置をしているのか、ツイッターで発信することにしました。
ツイッターでは「防犯カメラをつければいい」「警察に通報した方がいい」「公園内を禁煙にすればいい」などの考えが寄せられました。
実際には防犯カメラは設置すること自体に様々なハードルがあるなど、「どれも、最後の手段だと思っています」。
何より、強い思いがありました。「犯人捜しをしたいわけではありません。シンプルに、やめてほしいんです」。
再発防止に向けて、五稜郭公園の担当者が考えたのは、「やりにくくする」ように、社会の目を向け、やりにくい空気を作ることでした。
多くの関心が集まれば、防犯カメラよりも効果があるかもしれません。
そのための投稿でした。
公園の美しい景色が多い投稿の中で、ボヤの投稿は異色でした。それでも、「公園は、華やかなことばかりじゃない。こういうこともあると知ってほしかった」。
投稿する前は、マナーがある愛煙家の人などに肩身が狭い思いをさせるかもしれない、という懸念もあったそうです。
今のところ、問題のサクラがある一帯は、喫煙が可能です。灰皿などは設置されておらず、多くの愛煙家は携帯灰皿を持参していると強調します。
ボヤが起きたサクラは、いまのところ、元気だといいます。でも、木が自分の力で修復するのには相当な時間がかかります。「いつ樹勢(生育状況)が落ちるか、わかりません。最悪、枯死してしまいます。注視していくことが必要です」
被害にあったほかのサクラも、人工樹皮で覆うか検討していますが、園内約1600本のサクラに施すのは難しいです。
かといって、園内中に注意書きの看板を立てるなどのことは考えていません。
マナーを守って公園を楽しむ人がほとんどの中、公園が注意書きの看板ばかりになってしまうことを想像すると、「不快な気持ちになってしまう人がいるかもしれない」という葛藤があるそうです。
ツイートには、予想を超える反響が集まりました。それを一つの希望にしています。
「これをきっかけに、五稜郭だけでなく、函館市内、ひいては全国で、身近な公園に関心を向けて、自然を大切にする人が増えてほしいです。そして、何より、もう二度とこういうことが起きないように願っています」
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