ネットの話題
「食物連鎖」のぬいぐるみが人気、ペンギンもアザラシも食われる衝撃
「10年に1度の教材」
シャチに飲み込まれるペンギン、ペンギンに飲み込まれる魚・・・。かわいい見た目とはうらはらに、「食物連鎖」をテーマにしているぬいぐるみが、ネットで話題です。なぜこんな商品を作ったのか、制作した会社に聞きました。
話題になっているのは、水族館や動物園の売店で販売するぬいぐるみの製造を手がける株式会社AQUAが発表したぬいぐるみです。
「可愛いだけじゃなく、生き物についての知識を深めていただけるように工夫しました」との文章を添えてツイッターに投稿された写真を見ると、「北極」と「南極」の2種類があり、「北極」の場合は頂点にホッキョクググマのぬいぐるみ。その口にはアザラシのぬいぐるみが飲み込まれ、アザラシの中には魚、そして最後にオキアミが、順番に飲み込まれるようになっています。
「南極」の場合は、シャチがペンギンを飲み込み、ペンギンは魚を飲み込み、魚はオキアミを飲み込んでいます。
それぞれが「主役級」、単体でも売れるぐらいかわいいぬいぐるみが、捕食される様子は、どこかシュール。ツイッターには「すごい」「10年に1度の有能教材」「マトリョーシカみたい」とコメントが寄せられ、「いいね」は2万件を超えました。
どちらにしても飲み込まれる「オキアミ」への注目も集まり「解せぬ」と代弁する投稿もありました。
新発売の「食物連鎖」がテーマのぬいぐるみをご紹介します!
— 株式会社AQUA公式 (@aqua_yokohama) October 19, 2020
可愛いだけじゃなく、生き物についての知識を深めていただけるように工夫しました。北極と南極の2種類です。
口の中に順番に入れて遊べてます。
取扱店舗とシリーズ情報はこちら⬇︎https://t.co/P6SQGzJqA7#ぬいぐるみ #水族館 #動物園 pic.twitter.com/mAUUSzOsGm
株式会社AQUAに開発の背景を聞きました。
昭和56年の創業以来のぬいぐるみメーカーとして、愛らしい玩具や雑貨を世に送り出してきましたが、ここ数年は水族館や動物園の売店を「お客様が最後に見る展示場所」と位置づけて取り組んできたといいます。商品の企画開発はもちろん、直営店についても「海の中」を感じられるなど内装デザインにも、力を入れてきました。
「食物連鎖」をコンセプトにした商品が生まれたのは、そんな同社ならではの発想でした。
「動物園や水族館は、動物のこと、人間と生物の関わりを考えていただく場所です。だから、ぬいぐるみメーカーとして、お客様に『かわいい!』や『おもしろい!』と感じていただけるだけでなく、一歩踏み込んで、間近に見た生き物の生態や生育環境にも興味を持っていただきたいと思いました」
「食物連鎖」は、「Sense of wonder (センスオブワンダー)」としてシリーズで展開したぬいぐるみの一つでした。
ぬいぐるみといえば、子どもが愛でる「かわいいもの」というイメージ。食物連鎖などをテーマに扱うことに、躊躇はなかったのでしょうか。
開発では、「ぬいぐるみならではのやわらかさ、かわいらしさを楽しみつつ、生き物についての知識を深めてもらう」という挑戦をしました。
大切なのは、「生態や生育環境に興味を持つ『入り口』になること」。デザイナーが心がけたのは「リアルすぎない」「遊びやすい形状」にすることでした。
リアルすぎない表現を目指す一方で、伝えたいのはリアルな自然界のメッセージでした。
「ぬいぐるみの表現上、サイズが大きいシャチやホッキョクグマが自分より小さな生命を食べるところまでのように見えてしまいますが、本当の食物連鎖とは、その先に、シャチやホッキョクグマの死骸を微生物が分解し、それをプランクトンが食べ、オキアミがプランクトンを食べることで、また、生命はつながっていきます」
「弱肉強食」ではない、すべてがつながる命のサイクル。
ぬいぐるみでは、サイズ感の問題で、プランクトンまでの表現が難しかったところ、これらの説明を、商品に取り付ける下げ札(購入後に取り外すこともできる)を通常よりも大きくして、専門家にも監修を受け、イラストと文章で説明したそうです。
ツイッターでも結局飲み込まれるかなしさが注目された「オキアミ」ですが、「生態系全体に大きな影響力を持つ重要な生物」として重視していました。
「オキアミは外せない。でも、ホッキョクグマやシャチとの大きさの比率を再現すると、小さくなりすぎて縫製ができないので、実際の比率からするとかなり大きめになりました」
「Sense of wonder (センスオブワンダー)」には、ほかにも動物の出産をテーマにした「うまれてくるよ」があります。イルカとマンタのお母さんぬいぐるみのおなかから、赤ちゃんを取り出すことができます。
また、「ごはんちょうだい」では、ペンギンの親鳥が口移しで魚をヒナに食べさせる様子を、ぬいぐるみで遊びながら理解することができます。
ツイッターでの反響は「予想以上だった」といいます。
「社員一同感激しております。コメントも一つ一つ読ませていただいておりますが、開発の背景である『生態や生育環境の表現』へのメッセージを受け取って頂き、興味を持って頂いて、大変うれしく思っています」
「食物連鎖を意識しながら、一緒にぬいぐるみで遊んでいただき、学びのきっかけにしてもらえたら幸いです」
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