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#217 #withyou ~きみとともに~
ゲームが“心の支え”に…専門家が警鐘「信頼関係崩す取り上げ方」
「何らかの問題からの逃避としてゲームをしている場合」も
withコロナ時代、外出を控えたりする中で、オンラインツールを使ってのやりとりが日常の一部として、より浸透してきています。子どもたちも、スマホやタブレットなどのデバイスを使い、SNSや動画サイト、ゲームなど、日常の中でオンラインを採り入れていますが、親からは、依存などを心配する声も聞かれます。「単純に何時間以上使用したら依存するというわけではない」と話す臨床心理士の森山沙耶さんに、子どもとオンラインとの「ほどよい距離感」のカギを聞きました。
withnewsでは6~7月にかけて、休校中・休校明けの不安についてアンケートを行いました。休校期間中の「学習以外の時間に何をしていたのか」を聞く項目では、インターネットを使って動画を見たり、ゲームをしたりしたという声が多く聞かれました。
ネットやゲーム依存に悩む本人と家族のカウンセリングを行う森山さんは、「現実生活における何らかの問題からの逃避としてゲームをしている場合は、その問題解決が大切となります」と話します。
特に、コロナ禍において、中学1年生、高校1年生など、進学したばかりの子どもたちの中に、心配な子どもが多いといいます。
「入学式もままならないままオンライン授業になった子どもたちは、最初はがんばっていても、ついて行けなくなった場合は親子で焦り、やる気を失うこともあります」
「やる気を失った状態で学校再開を迎えた子どもたちは、学校生活にうまく乗ることが難しくなります」と指摘。
そのストレスの発散がゲームなどに向く可能性もあるのだといいます。
「現実のストレスやプレッシャーから逃れるためのゲームであれば、ゲームは心の支えになっている。大人がそれを取り上げると不信感につながります」と指摘します。
そんなとき、「子どもが何をやっているのかわからない」と親が疑いの目で見たり、行動を監視したりすることは得策ではありません。「それでは信頼関係が崩れてしまう」と、森山さんは警鐘を鳴らします。
「子どもに100%を求めるのではなく、できる部分を見て、褒めて、その先に進むのがいいでしょう」
一方で、ゲームをしすぎたり、スマホを見たりしている時間が長くなっていると、依存状態にならないかが心配です。
アンケートに届いた声の中にも、「ダラダラと見続けてしまい、孤独感につながった」といったものがありました。
森山さんは、オンラインツールに触れる時間について、「単純に何時間以上使用したら依存するというわけではない」と話します。
注意すべきことは、「いままでと比べて使用時間がどのくらい増えているか」そして、「使用時間の延長を求めたり、(使用時間を制限するための「スクリーンタイム」を設定している場合は)無断でそれを解除したり、隠れて使用していないか」。
つまり、依存傾向にあるかどうかの見極めの尺度は「自分で自分をコントロールするのがどのくらい難しくなっているか」だといいます。
また、自身の行動をコントロールすること自体が難しい小学生の場合は、食事や睡眠などのリズムが崩れたり、ゲーム以外を楽しむことが無くなったときは注意する必要があるといいます。
「プロゲーマーも、パフォーマンスを上げるため、生活を整えトレーニングをしています。『プロゲーマーになる』と話す依存状態の子どももいますが、生活習慣がおろそかになったときは注意をしてほしい」
森山さんの元を訪れる相談者の8割はゲームに関する相談がメインですが、子どもたちはその他にもオンラインツールを使い、動画視聴やSNSを併用しています。
その際、森山さん自身の感覚として、「一日中動画を見たりしてスマホを触っているような状態であれば、抑うつ的になっているかもしれない。意欲低下が起こっている可能性があります」と話します。
その場合は、専門機関への相談を検討すると同時に、「『ちょっとした』家の手伝いなど、子どもの関心や興味に合わせて『いまできること』を増やしたり継続できるようにサポートしてほしい」と話します。
一方で「動画から情報を得ている場合もある」として、長時間動画を見続けているからといって一概に意欲低下が起こっているわけではないともします。withnewsに届いた声の中にも、オンラインツールを有効に使ったという声も届きました。森山さんは「目的があるかどうかが大切です」と話します。
「ダラダラすることもストレス対処の一つの方法ですが、それが続くと罪悪感になります。大事なのは、ストレスの対処方法のバリエーションを持っておくことです」
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森山沙耶(もりやま・さや)さん
公認心理師、臨床心理士、社会福祉士。2012年、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。家庭裁判所調査官を経て、ネット・ゲーム依存に特化した回復支援サービス「MIRA-i」(ミライ)を立ち上げ、依存に悩む本人と家族のカウンセリングを行う。
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