——安定期に入ると「もう大丈夫」と考えがちですが、気を付けなければいけないことはありますか?
これは誤解が多いというか、社会的な認識がちょっと難しい要素のひとつですね。
もともとの意味合いは、胎盤が子宮の中で完成して、ホルモンの環境が安定するということです。
初期流産の確率が大きく減ることは確かで、つわりもだんだん良くなってくるので当然ポジティブな意味はあります。「お仕事や家庭内の調整をする時間に使ってくださいね」と伝えることもあります。
ただ、切迫流産や切迫早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病はこのくらいの時期にも起こります。安定期以降はそのような病気に気を付けないといけないですよという説明もしますね。
——切迫早産とはどのような状態ですか?
妊娠22〜36週での出産が「早産」とされるのに対し、切迫早産というのは一言でいうと「早産になるリスクが通常より高い状態」を意味します。
具体的には妊娠22週から36週の間に、子宮の強い収縮がたびたび起きてしまったり、子宮の出口の部分(子宮頸管)がちょっと開いてしまったりすると、切迫早産の状態になっていると言えます。
切迫早産の原因はほぼ分かっていません。腟内に感染が起こった場合などにリスクが上がると言われていますが、予防は難しいです。
切迫早産と診断された場合は状況を見て張り止めの点滴をすることがありますが、妊娠を延長する効果は最大で2日までだろうということが研究で分かっています。
大事なのは、切迫早産は早産とイコールではないので、切迫早産と診断されても早産にならなかった人はかなり大勢いるということです。
過去に早産の経験がある人は次の妊娠も早産になりやすいと言われていますが、過去に切迫早産になったけど早産にならなかった人は、次の妊娠で早産のリスクが上がるわけではありません。
切迫早産については以前ニュースレター(※)でも書きましたが、日本と海外の認識がまったく違います。アメリカなどでは今日か明日に生まれるだろうという人しか切迫早産と言いません。
※
産婦人科医・重見大介の本音ニュースレター:切迫早産の治療について 〜日本の課題、海外との違い〜