連載
#32 コミチ漫画コラボ
「文化部はネクラ?」美術部がバレー部に入り気づいた自分のものさし
「文化部ってネクラっぽいよね~」。美術部に所属する主人公は、そんな言葉がきっかけで、バレー部に体験入部することに。でも、そこで見えてきたのは……。
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#32 コミチ漫画コラボ
「文化部ってネクラっぽいよね~」。美術部に所属する主人公は、そんな言葉がきっかけで、バレー部に体験入部することに。でも、そこで見えてきたのは……。
「文化部ってネクラっぽいよね~」「暗っ!」
主人公は、美術部に所属する女の子。彼女の耳に入ってきたのは、美術部の部活の様子を見て笑う生徒の声です。
「暗い?」。思いもよらない言葉に、自分の振る舞いについて考えてみます。休み時間は画集を読み、部活中は静かにキャンバスに向き合う……体勢も変えずに。
「確かに、明るくはない!」。自分の印象にショックを受ける一方で、対照的に見えてきたのは運動部の子たちの明るさでした。
「もしかして運動部に入れば 明るい性格になれるんじゃ?」。そう思った主人公は、バレー部に体験入部をすることにしました。
当初は「運動だってそこそこできるし ダイエットになれば一石二鳥」という考えで参加しましたが、まもなくその甘さに気付きます。
「無理だ…」。練習の厳しさに衝撃を受ける主人公。そこで浮かんだ疑問は、明るい雰囲気の部員たちのモチベーションです。「あんなに厳しくて楽しいのかな?」
バレー部員に「勝ちたいから頑張るの?」と聞く主人公。返ってきた言葉に重なったのは、絵が上手くなりたい一心で、美術部で試行錯誤する自分自身でした。
「なんだ 胸はっていいんだ」
そう気づいた主人公。最後の1コマは美術部で笑顔で絵を描く姿と、「今日も明るくネクラします」というセリフで締められています。
中学時代、美術部に所属していたちえむさん。今回の漫画にもちえむさんの体験が織り交ぜられており、自身の「運動部コンプレックス」についても話してくれました。
「私は好きで絵を描いていたのですが、『運動部みたいなキラキラしたものがない』と感じていた時期があります」
もともと内気な性格。自分が好きなものに対しても、周囲に「暗い」と言われることが気になっていたといいます。比べてしまうのは運動部所属の明るい子たちで、「『暗いと思われる自分を変えたい』と考えたとき、『暗いのは私が美術部だからなのかな』って部活のせいにしてしまっていた」と振り返ります。
その頃、ちえむさんが持っていた運動部のイメージは、「楽しい」「キラキラ」「明るい」。その憧れを抱きながら高校に入学したちえむさんは、友だちの誘いでバレー部に体験入部することにしました。
ところが、ちえむさんの淡い期待は打ち砕かれたのでした。待ち受けていたのは朝も夜も厳しい練習。現実の生活は、ちえむさんにとって「うらやましい」と思えるものではありませんでした。
「私には無理だっていう挫折感とともに、運動部の子たちがこれだけの練習に耐えて、頑張っているっていうことを痛感しました」
そんな苦しい思いをしても、運動部の子たちが部活に打ち込める理由って何だろうーー。そう考えたときに、たどり着いたのは、「頑張りたい目標があるから」でした。クラスでの立場や、キラキラした青春を謳歌するためではなく、自分の「好き」のために練習を重ねる姿は、運動部でも文化部でも変わらないのだと気付いたのです。
「表面的には違うかもしれないけど、目標に向かっていく気持ちは実は一緒だよということが、漫画で伝わればいいなと思って描きました」
普段はなかなか交わらない2つの世界を、覗き見たちえむさんだからこそ描けるストーリーになっています。
ちなみに、「暗い」と言われることを気にして、明るいキャラになろうとしていた高校時代のちえむさんは、その後どうなったのでしょうか。
「実際は、無理して明るく振る舞おうとしたこともありましたが、きつくて続かなかったですね。やっぱり、自分の居心地のいいテンションっていうのがあって、結局そうしてる自分が一番自然なんですよね」
そんな思いが、漫画の最後の「今日も明るくネクラします」という言葉にも込められています。運動部か文化部か、明るいか暗いか、誰かのものさしに自分をあてはめることより、「好き」に打ち込むことが自分の自信につながるのかもしれません。
ついつい運動部と比べてしまう、文化部の気持ちに共感できる今回の漫画。ちえむさんは、同じような思いを抱く文化部の人に向けて、「胸をはって」と話します。
「例えば美術部であれば、絵が描けることは自分の中では当たり前すぎて、すごいと思えないかもしれないけど、他の人にとってはできないこと。好きなことのために、もうちょっと練習しよう、今日もやろうって思えること自体が、すごい才能だと思うんです。そんな自分の中のキラキラした宝物を大切にしてほしいです」
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