連載
#31 コミチ漫画コラボ
顧問の「叫べ!」に羞恥心、王子と呼ばれて…漫画「部活動の黒歴史」
文化部の「運動部コンプレックス」、好きな人に見られたくない「本気の顔のわたし」……。
文化系の部活の生徒にとって、運動部はキラキラ輝いて見えがちです。「文化部ってネクラっぽい」と言われたことがきっかけで、自分の見え方を気にし始めた主人公。一念発起してバレー部に体験入部するも……。主人公の「気付き」から、頑張る人たちに自信を持たせてくれるストーリーです。
学校生活で、部活同士で互いの練習や目標、熱意を詳しく知る機会はさほどありません。それでも、部のイメージは何となく持っていて、感じてしまうコンプレックス。もしかすると、他人の熱意や頑張る理由を知ることが、自分の「好き」を大切にするきっかけになるかもしれないということを、作品を読んで考えました。
(彼氏への)羞恥心と(顧問への)恐怖心の入り交じり方が絶妙で、「あるある……」と、思わず遠い目をしてしまった作品です。
吹っ切れたようで吹っ切れていない、理解できたようで理解できていないまま、とにかく叫んだ乙女の気持ちに、むなしく響く彼氏の拍手は秀逸でした。あなたに見せたいのは「叫ぶ私」ではなく「かわいい私」なの……。「どっちの私も好きになりなさいよ」くらいの図太さを持てるようになるのは、きっともう少し先のお話。「がんばれ!」とエールを送りたくなりました。
美術部なのに、部室の一角で寝てばかり。後輩とは言葉も交わさない。主人公「僕」の気だるげな姿は、世間一般で言う「青春」からかけ離れています。何となく存在することを許してくれる。一コマ一コマを満たすのは、そんなぬるい空気です。
時は流れ、卒業の日。部員の寄せ書きにしたためられた一文が、彼の目に留まります。自分の行動を、誰かが見てくれていた。だからこそ、そこにいた「証」を残せば良かった――。キャラクターの静かな感動と後悔が、深い余韻とともに感じられる作品です。
シンプルなストーリー展開だと油断させておきながら、ボディーブローのような読後感を味わせてもらいました。
服装や顔つきなどの些細な特徴からあんなにも突拍子も無い「あだ名」を生み出せた発想力を、私たちはどこに置いてきてしまったのでしょう。あの頃は気付いてやれなかったヒエラルキーの低さを上回る「ガチじゃない部」の包摂という価値。きれいじゃないし、ざらざらしていて、でも忘れていたらもったいない青春の日々をよみがえられてくれる。そんなかけがえのない作品です。
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