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115kgから40kgダイエット成功、コツは食事?運動? 医学的に考察

左:やせる前の記者、右:やせた後の記者
左:やせる前の記者、右:やせた後の記者

目次

ベンチャー企業で激務を経験し、2015年には体重が115kgまで増加してしまった記者。転職などで環境が変化した5年後の2019年現在、合計40kgのダイエットに成功。減量後、この1年の体重は75kg、体脂肪率は18%前後で安定しています。
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2019年現在。体重が75kgほどになった私の写真。
2019年現在。体重が75kgほどになった私の写真。
さまざまなダイエットの方法を試し、失敗を重ねてきましたが、振り返ると疑問なのが「肥満者にとって効率のいいダイエットはあるのか」「あるとしたら一体どんなものか」です。

中でも最大の問いの一つとされるのが「食事」か「運動」かの選択。ダイエットの医学的な「コツ」について、ガイドラインや専門家の取材、自分の体験と照らしながら紹介します。(朝日新聞デジタル編集部・朽木誠一郎)

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BMIなんと「37.5」高度肥満のリスク

2015年。体重が115kgだったときの写真。
2015年。体重が115kgだったときの写真。
そもそも、医学的に「ダイエット」が必要なのは、どのような人でしょうか。日本肥満学会が発行する『肥満症診療ガイドライン2016』では、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」で、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算される体格指数(BMI)が「25以上」を肥満と定義しています。ちなみに、BMIが25以上でも、ボディビルダーのように脂肪の蓄積がなければ肥満ではありません。

2015年当時の私は身長175cmに対して体重が115kgでしたから、BMIはなんと37.5。同ガイドラインでは高度肥満に該当します。肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症、脂肪肝、高尿酸血症などたくさんの生活習慣病を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などの心・脳血管疾患やがん、認知症などを発症・増悪させるリスクです。肥満の人が体重を減らすことによって、このリスクを回避するメリットがあるのです。

さらに医師の診断により、実際に健康障害を伴うか、伴うことが予測され、減量が必要だとされた場合は、肥満症として食事療法や運動療法などの治療がなされます。
肥満症診療ガイドライン2016より
肥満症診療ガイドライン2016より
肥満症診療ガイドライン2016より
肥満症診療ガイドライン2016より
実際に治療をするときに、基本になるのは食事療法と運動療法。肥満の主な原因は過食と運動不足なので、食べる量を減らし、動く量を増やすことで、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを消費の方に傾けるように指導されます。※太りやすさには体質も関わり、肥満を伴う遺伝病もあります。

治療においては、食事療法が必須で摂取エネルギーを肥満症では標準体重(※)1kgあたり25kcal以下、高度肥満症で20〜25kcal以下とし、運動療法を併用すると効果が高まることがガイドラインに記載されています。そしてこの実現性こそが、ダイエットで私たちに問われるポイントでもあります。※身長に対してBMI22として計算した値/身長175cmなら約67kg。

「食事」と「運動」、どちらが大事?

さて、いざダイエットをしようとしたときに、食事と運動をどう改善すればいいのか、途方に暮れてしまう人もいるのではないでしょうか。闇雲に食事量を減らし、運動量を増やしたところで、効率のいい方法とは言えません。

私自身、2016年頃に一念発起し、極端に食事を摂らなくなり、運動を始めたことがあります。口に入れるのは豆腐や果物、深夜に5kmのジョギング……。そのときは1カ月で8〜9kgほど体重が減りました。しかし、ダイエット中は常に空腹で、仕事の集中力低下を注意されたことも。

このときは残念ながら、3カ月ほどでリバウンドしてしまいました。量が少なく、偏った食事に、耐えられなくなったのです。一度はやせたのをいいことに、反動で好きなものを好きなだけ食べ、運動は面倒だからとしなくなり、半年後にはむしろ5kgも体重が増えてしまっていました。
2017年。リバウンドして体重はまた100kgに。
2017年。リバウンドして体重はまた100kgに。
リバウンドを防ぎ、効率よく体重を減らすためには、どうしたらいいのでしょうか。「まず食事の改善から取り組むべき」と勧めるのが、北里大学北里研究所病院の内分泌・代謝内科部長で糖尿病センター長の山田悟さんです。山田さんは日々、肥満を伴うことも多い糖尿病患者の治療に取り組む経験から「食事の方が圧倒的にパワーがある」と指摘します。

もちろん食事と運動、どちらも改善する方が減量効果が高くなります。ただし、私たちは1週間に20回くらい食事をするわけですよね。一方、一般的な社会人であれば、運動はがんばっても週1〜2回に留まるのではないでしょうか。頻度からしても、食事を改善する優先度が高いことは明らかです。

エネルギー収支の観点でも、摂取エネルギーは基本的にすべて口から入る食事によって決まります。これは自分で選ぶものなので、コントロール可能でエネルギー収支に与えるインパクトも大きい。では消費エネルギーはと言うと、一般的に約6割は基礎代謝で、約3割は生活活動。運動しようとして意識的に増やせるのは残りの1割。これを2倍にしても合計では1.1倍にしかならず、エネルギー収支への影響が少ないのです」

ジョギングなど有酸素運動によるエネルギー消費や、筋トレなどレジスタンス運動による筋肉量増加、それに伴う基礎代謝の増加の効果はあるものの、食事を変える方が「手っ取り早い」ということは言えそうです。

コツは「食べたい」を否定しないこと

では、どのように食事を変えればいいのでしょうか。「コツは『食べたい』を否定しないこと」だと山田さん。肥満の背景には社会的要因、例えば心理的ストレスなどがあることがわかってきており、ただ「食べてはいけない」と否定しても、行動を変えることができないことはうなずけます。そのため山田さんは「カロリー制限を入口にした食事の改善はうまくいかない」と言い切ります。

カロリーを制限しようとすると、食べる量が減るので、飢餓感との戦いになってしまう。これは分が悪く、そう簡単には制限できません。一定期間なら我慢することができても、どこかのタイミングで誘惑に負けてしまい、リバウンドにつながります。『食べたい』心は否定せず、食べていながら肥満を防ぐという方法が、長期的に見ればかえって効率のいいダイエットになるのではないでしょうか」

「食べていながら肥満を防ぐ」というのは、いわゆる「糖質制限」に通じる考え方。糖質を摂取すると血糖値が急に上がり、それを下げるためにインスリンというホルモンが大量に放出されます。インスリンは脂肪を溜め込むように働くため、糖質を減らした方が体重は減りやすい、という理論です。また、最近では大量のインスリンによる急激な血糖低下が飢餓感を生み出すという説もあり、いずれにせよ食後の高血糖を防ぐことが肥満予防に効果的とみられる、と山田さん

「糖質制限は海外のガイドラインでも治療法として記載され、日本の『肥満症治療ガイドライン2016』でも『体重減少のためには糖質制限が有効であるとの報告が多い』とされています。そこで私たちが提唱するのが、ゆるやかな糖質制限、通称“ロカボ”です。この場合、糖質をまったく摂らないのではなく、1食あたり20~40g、1日70~130g以内が目標になります
 
山田さんが提唱するロカボの商品は、今や有名コンビニチェーンやスーパーなどで当たり前に見かけるようになりました。普及に尽力した熱意の源は「一時のブームではなく、文化にしなければ意味がない」という信念だったそうです。「とにかく食べる量を減らそう」とするカロリー制限では挫折してしまう患者や肥満者に寄り添うために、山田さんはさまざまな商品を開発しています。

私も減量が軌道に乗った2017〜2018年は、パンや麺類など一食のほとんどが炭水化物(糖質)で完結してしまうそれまでの食事は避け、パーソナルジムで管理栄養士の指導のもと、肉や魚、野菜、大豆類、ナッツなどを中心とした食事に切り替えていました。まずは満腹まで食べる内容をたんぱく源や野菜中心のメニューに置き換え、そこから「腹八分目」に慣らしていったことが、私の場合の成功のポイントだったように思います。

ダイエットはまず食事から。そして、いきなり量を減らすことが難しければ、その内容を置き換えていくのがコツ。わかっているつもりでも「なぜそれが必要か」を理解していないと、実行すること、継続することができません。不健康は落ちやすく、上りにくい落とし穴。経験者として引き続きその穴を埋め、誰かが落ちてしまったときの上がり方を伝えていきます。

【連載】医療記者の40kgダイエット

ベンチャー企業で激務を経験し、2015年には体重が115kgまで増加してしまった記者。転職などで環境が変化した5年後の2019年、合計40kgのダイエットに成功。以降は体重75kg前後をキープしています。この経験から、医療記者として「人はなぜ太るのか」「どうすればやせるのか」を取材する連載です。

体重115kgの私がダイエットに苦しみ、後に40kgの減量に成功した理由
115kgから40kgダイエット成功、コツは食事?運動? 医学的に考察

ダイエットとリバウンド 40kg減量して学んだ戦い方「週150分の壁」


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