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連載

#5 #withyouインタビュー

「生き心地」大切にできる場へ 石田ひかりさんが思う学校のこれから

笑顔を見せる俳優の石田ひかりさん=仙波理撮影
笑顔を見せる俳優の石田ひかりさん=仙波理撮影 出典: 朝日新聞

目次

 フリースクール「東京シューレ」の奥地圭子理事長と対談した、俳優の石田ひかりさん。芸能界で活躍する一方、中学生の娘2人を育てる母親でもあります。わが子と向き合う中で、勉強主体の学校教育のあり方に、疑問を持つ機会もあったそうです。対談を通じ胸に宿ったのは、「子どもと同じ目線で、その『生き心地』を大切にできる場に変わってほしい」という思いでした。(withnews編集部・神戸郁人)

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登校しない選択は「あり」

出典: 朝日新聞
<学校が嫌いではなかったという石田さん。しかし、実際はなじめない子どもが多い現状を知り、「勇気をもって『登校しない選択』をしたって良い」と考えるようになったそうです>
 
――対談で、夏休み明けに子どもの自殺が増える「9月1日問題」への言及がありました
 
時代は変わっているんだな、と思いました。娘たちが終業式前「夏休みの宿題ができず、休むほど悩むなら、先生に相談を」と書かれた保健だよりをもらってきました。「先生たちは優しいな」と感じました。私の子どもの頃は、何が何でもやり切らないといけない空気がありましたから。
 
でも学校って、子どもにとっては一日のほとんどを過ごす場所。どの子にとっても自己肯定感が持て、楽しい場所であってほしいと心から思いました。

――「不登校児が全国に13万人以上いる」と奥地さんに言われたときも、驚いていましたね
 
学校になじめず、苦しんでいる子が、そんなにいるんだなと。ちょっと想像ができませんでした。奥地さんのお話だと、登校できている小中学生は、全体の97%~98%程度。でも、約2%~3%の子は違う。その事実から、目を背けてはいけないと思いました。

以前、「あえて学校に子どもを行かせない」という親御さんの新聞記事を読んだことがあります。その人は、代わりに我が子を旅に出し、博物館などを訪ねさせていました。「それがうちの教育なんだ」と。
 
今思えば「学校だけが育ちの場ではない」という意見を投げかけていたのかな。勇気をもって登校しない、行かない、という選択があっても良いんじゃないでしょうか。
 

「無理しなくて良い」言える自分に

出典: 朝日新聞
<学校になじめない子どもを認めつつ、「学校に通うことで社会性や生きる力を身につけてほしい」と願う親心との間で、揺れ動く様子も垣間見えました>
 
その子らしさが大事にされる。そんな人生を送れるなら、必ずしも学校という形にとらわれなくても良い、とは思います。ただ、今は子育てのまっただ中。客観的になれない自分も、やっぱりいるんですよね。
 
――親としては当然の心境かもしれません
 
「何とかこの子を一人前に」ということは、すごく意識しています。どうしたって、親は早くいなくなります。子どもたちに、自分の足で立ち、社会で生き抜く力をつけさせるのは、保護者の役目だと思っています。
 
私は根っこが体育会系なので、つい厳しいことを言ってしまいます。でも、娘たちが本当につらい環境におかれて、登校したくなくなったとしたら、「無理しなくて良いよ」と伝えたいですね。

――お子さんが落ち込んで帰ってくることって、ありますか?
 
泣きながら帰ってきたときもありましたよ。でも、詳しい事情は聞かないです。話したくなったら話すだろうな、と思いますし。実際は心配で、心拍数が上がりまくってますけど(笑)。
 
「おやつ食べる?」などと言って、平静を装っています。本人はただでさえつらいのに、親まで取り乱すと、もっともっとしんどくなるでしょうから。
 
――優しい関わり方ですね
 
でも、口うるさくなってしまう時もありますよ。黙って見守るには、修業が必要だと感じます。奥地さんのお話を聞いて、私も気をつけなきゃな、と思いました。
 

学校を「生き心地」高める居場所に

出典: 朝日新聞
<取材では、勉強主体の学校教育に対する考え方も話題になりました>
 
――奥地さんからは、フリースクールで自分を肯定され、夢を見つけた子もいるという話がありました
 
フリースクールが、しんどい時のシェルターになったんでしょうね。「一日中漫画を読んでいる子もいる」とも聞いて驚きましたが、人生における「生き心地」を高める居場所をつくるというのは、本当に重要だと思います。
 
そういう場がなければ、学校がつらい子はどこにも行けず、引きこもるしかない。「今日も元気に来られて良かったね」と言ってくれる大人がいることは、幸せなことですよね。
 
――学校や家庭も、そうした場であれば良いのですが

学校にはこなさなければならないカリキュラムがありますし、なかなか、フリースクールのようにはならないのが現実です。家庭は家庭で、親の思いがありますし。
 
――勉強だけを重視するのではなく、子どもが主人公になれるような教育が広がると良いですね
 
そうですね。子どもたち主体で色々と試行錯誤して、失敗したり、足りないことに気付いたりすることにこそ、価値がある。恥ずかしいことや挫折って、長い人生で考えたら、全然マイナスじゃないと思います。むしろ宝物ですよ!
 

子どもの苦しみ、一緒に向き合いたい

出典: 朝日新聞
<最後に投げかけた質問は「もし子どもが学校に行きたがらなくなったら」。石田さんの答えは……>

――お子さんが登校できなくなったとき、どんな態度で接したいと考えますか
 
もし娘たちが学校に行けなくなったら、ものすごく動揺するし、焦るし、悩むでしょうね。でも、奥地さんのお話を聞いた今は、「寄り添って、見守りたい」と思えます。命を絶つほどの苦しみを生むような状況からは、遠ざけてあげたいです。
 
奥地さんは「いつも子どもの目線に立ちなさい」とおっしゃっていました。親って、つい上から目線というか、「私の時代はこうだった」ってなりがちじゃないですか?まず、そこから考えられれば。一緒に苦しみと向き合う、かな。
◆石田ひかり(いしだ・ひかり)
 1972年、東京都出身。中学生時代に芸能界デビューし、大林宣彦監督の映画「ふたり」などで主演を務める。現在はテレビ番組の司会を始め、各方面で活動。中学生の娘2人を育てる母親でもある。
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