お金と仕事
メガバンクを3ヶ月で辞めた東大生 「日本型雇用慣行」への違和感
東大卒、留学も経験してメガバンクに昨春入行しましたが3ヶ月で退職を決めた東京都に住む20代の男性がいます。職場は決して「ブラック」ではなかったと言います。しかし、「定められたルールを忠実に回していくこと」「電子化されるであろう紙での仕事の多さ」、そして「辞令一つでどこかに行かなくてはいけない転勤」をきっかけに、辞表を出しました。男性の決断からは若者が抱く「日本型雇用慣行」への違和感が見えてきます。
男性は、大学4年生で海外留学をし、就職活動では銀行や商社などの大企業に加え、ベンチャー企業も含めて幅広く受験。
「お金を稼ぐことに関わる知識とスキルを身につけたい」。そんな思いがありました。
希望通りメガバンクから内定をもらい、就活を終えました。ただ「銀行は肌に合わないのではないか」との思いもあったと明かします。
元々型にはめられることが好きではなく、自由奔放に生きたいタイプ。大企業の文化は自分に合うのだろうか。就活を辞めはしたものの、そんな気持ちが膨らんでいきました。
考えてばかりでは前に進まないと、内定をもらった後でしたが、人材関連のベンチャーでインターンを始めました。
ベンチャーで働きながら、若者の雇用や子どもの貧困などの問題に興味を持ちました。次第に、教育自体に課題があると感じ、次は教育関連のベンチャーでのインターンを始めます。そのまま教育関連のベンチャーに就職することも考えましたが、会社と相談し、まずは銀行で社会人経験を積むことにしました。
ただ、入行して感じたのは、「自分の頭で考えることが期待されていない」ということでした。
定められたルールに沿って、それを忠実に回していくことが第一に求められる――。支店で目にした先輩たちの働く姿がそう見え、「自分の性格や目指すものと合わないのでは」と感じました。
インターンで働いたベンチャーでは、自ら提案したことが採用された経験もしました。そうした経験からスピード感や社員一人一人の裁量の大きさに違いを感じました。
銀行の先輩は皆優しく、会計の知識などを丁寧に教えてくれました。ベンチャーと比べて手厚い教育体制でした。ただ、今後電子化されるであろう紙での仕事が多いとも感じました。
「先輩が持っているスキルを身につけたとして、自分の人生に役立つかと言われるとちょっと違うかもしれないと。銀行で覚える知識やスキルは、銀行の外でも使えるものがそれほどたくさんあるわけではない気がして」。
地方配属が決まったことも退職の理由の一つになりました。総合職で入行したので、転勤があることはもちろんわかっていました。ただ、いざ辞令が出ると、「自分の住む場所を自分で決められないことに強いストレスを感じてしまうことがわかりました。辞令一つでどこかに行かなくてはいけないことを考えると、自分にはその生き方は辛いかなと」。
東京生まれ東京育ちですが、地方に住むのが嫌だ、というわけではありません。ただ、自分の意思とはあまり関係なく住む場所や担当する業務が決められる仕組みは、自分の性格には合っていないようだという気持ちが強くなりました。「銀行の方々には本当にお世話になりました。結果的に自分の理解が不足していたせいで辞めるという形になるのは申し訳ない」と思い悩んだ末に、6月末に退職を決めました。
いまは、自分の強みになる分野の知識やスキルをきちんと学びたいと考え、大学院の受験を念頭に勉強しています。インターンや銀行での経験を通して、将来的に自分が貢献できる場所で働きたいと考えるようになりました。
「いまは会社が面倒を見てくれる時代ではない。目先の給料は気にしすぎず、自分の性格や得意分野と合う仕事を選んで働いていけたら」。
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