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「ヤンキー」と「ファンシー」の意外な関係 観光地みやげの謎文化

平成初期、バブル景気でノリにノっていた日本に広がりつつも、長らく人々の記憶から消された特殊な文化があります。それは全国の観光地のお土産屋さんで売られていた、「ファンシーな絵」が描かれたお土産。実はこのお土産、「ヤンキー文化」と共に語られることが多いそうです。「ファンシー」と「ヤンキー」……一体どうい

「ヤンキー」と「ファンシー」の関係って?
「ヤンキー」と「ファンシー」の関係って? 出典: 撮影協力:山下メロさん

目次

 平成初期、バブル景気でノリにノっていた日本に広がりつつも、長らく人々の記憶から消された特殊な文化があります。それは全国の観光地のお土産屋さんで売られていた、「ファンシーな絵」が描かれたお土産。キーホルダーやのれんが中心でしたが、もうほとんど生産されていないといいます。これらを「ファンシー絵みやげ」と名付け、収集・保護している研究家に聞くと、実はこのお土産、「ヤンキー文化」と共に語られることが多いそうです。「ファンシー」と「ヤンキー」……一体どういうことなのでしょうか。

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「これ持ってた…」あのお土産

 2010年から全国各地の土産店をめぐり、「ファンシー絵みやげ」(略して「ファみやげ」)を9千種集めたという山下メロさん。今年2月に出版された「ファンシー絵みやげ大百科 ~忘れられたバブル時代の観光地みやげ~」の著者でもあります。

 「ファンシー絵みやげ」とは、こんなお土産のことです。
(1) 「MORI NO NAKAMA」のように、ローマ字を使った日本語表現を使用している(とっても読みづらい)
(2) 動物は擬人化され、2頭身の子どもっぽい雰囲気のキャラクターイラストが使用されている(威厳のあるイメージの歴史上の人物も否応なく子どもっぽくされる)
懐かしい「ファみやげ」
懐かしい「ファみやげ」 出典: 撮影協力:山下メロさん

 1980年代~1990年代に日本全国の観光地で販売された「ファみやげ」はスキーブームやラッコブームなど、当時の流行を色濃く採り入れながら、日用品や衣服までさまざまな商品で展開されていました。

 バブル崩壊をきっかけに、観光客の消費行動は低調になり、土産店からその姿を消すことになります。気付くとそのポジションは「ご当地キティ」に変わってしまっていました。

 「観光地を席巻していた『ファみやげ』の中には、当時の『ヤンキー向け』と思われる商品が多数存在する」と山下さんは語ります。

山下メロさん
山下メロさん

いきなり触れにくいものを…

 

野口

ヤンキー向けのファみやげって、どんなものなんでしょうか

 

山下さん

ファンシー絵が施されていて、思わず脱力するようなローマ字日本語が使われているのはファみやげそのものなのですが、特徴は「柄」です

 

野口

柄?

 

山下さん

まずは、「旭日旗」

 

野口

ちょっと待ってください、いきなり触れにくいものを…

 

山下さん

旭日旗のファみやげっていうのはめちゃくちゃ多いんです

 

山下さん

80年代だと「ビー・バップ・ハイスクール」とか、いわゆるツッパリ系が全盛期でした。暴走族カルチャーが根強い地域を中心に、ヤンキーが好む商品が展開されていたんです

 

野口

なるほど、確かにイラストがファンシーで、ファみやげ要素がふんだんにありますね…

 

山下さん

他にも多いのが「英字新聞風」の柄です

 

野口

英字新聞柄って、80年代にシャツとかファッションで流行りましたよね

 

山下さん

そうなんですが、ヤンキーの文脈だと衣服ではなく、財布とかコームとかのアイテムが中心になるんです

 

野口

むむ、それはどうして……

 

山下さん

だいたい各地域にひとつくらい、改造学生服とか売っているお店があるじゃないですか

 

野口

あ~、ありました

 

山下さん

そういう用品店で売っているアイテムをお手本として、観光地で売られていたようです。ちなみに英字新聞風でも、背景色が紫やピンクなど、独特の表現もあります

 

山下さん

これらの総力を結集したようなファみやげがこちら

 

山下さん

これは中尊寺のおみやげです。歴史的なお寺で、「英字新聞」。

 

山下さん

そして旭日旗と思いきや、真ん中に「男」

 

野口

主張がだいぶ混雑してますね…

 

山下さん

龍のモチーフも多いです、これとか

 

野口

マジカルドラゴンファンタスティックワールド…

 

野口

意味がわからないですね

 

山下さん

意味がわからないですね

「所帯を持つ」みたいな感じ

 

野口

でも、どうしてヤンキーにファンシーの世界が受け入れられたのでしょうか

 

山下さん

割とイメージで「ヤンキーってファンシー好きだよね」って言われてるんですが、実はヤンキーとファンシーの関係って、あまりはっきりと論じられていないんですよね

 

野口

そうなんですか?

 

山下さん

もともとヤンキーって男臭い硬派の世界だったんです

 

野口

そのイメージはあります

 

山下さん

でも、その中に女の子のカルチャーに寄るヤンキーが増えてきました

 

野口

え、どうしてでしょう?

 

山下さん

ヤンキーってかわいい女の子と付き合うんです
「ヤンキーってかわいい女の子と付き合うんです」
「ヤンキーってかわいい女の子と付き合うんです」

 

山下さん

一般的な中学生の男の子って、女の子とは仲良くなりづらい時期なんです

 

山下さん

80年代になってレディースの文化が入ってきたこともありますが、ヤンキー自体が女の子に近付きやすく、そういった要素をとり入れやすかったんじゃないかと

 

野口

なんだかとっても納得しちゃう自分がいます

 

山下さん

みんながみんなそうだった訳じゃないでしょうけどね

 

山下さん

女の子が好むファンシーグッズを持つということが、恥ずかしいことではなく、むしろ女子とのつながりを示していたんですね

 

山下さん

「早く所帯を持つ」みたいなことに近かった訳です

 

野口

マブい

現代だったら「マジ卍」

 

山下さん

ヤンキー向けのファみやげって、修学旅行で行く観光地に置いてあることが多いです

 

野口

それはどうしてですか?

 

山下さん

普段学校に来ないヤンキーも、修学旅行には来るんですよ

 

野口

確かに

 

山下さん

あと家族旅行で買うような感じじゃないですよね。修学旅行先では、ヤンキーになりきれない、でもヤンキーに憧れていた子にも買えたっていう

 

野口

ちなみに、現代にファみやげの感性が残っていたとしたら、どんなものをとりいれると思いますか?

 

山下さん

う~ん、だいたいその時のブームをとりいれるので、若者言葉とかはアリですね

 

山下さん

「それな」をローマ字で「SORENA」とかはありそう

 

山下さん

あと「マジ卍」とか

 

野口

「マジ卍」

 

山下さん

「マジ卍」は寺で売れますね、全国の寺で売れる

 

山下さん

実は寺を回っているときに結構「マジ卍」って言ってます、普段言わないんですけど

 

野口

逆にその発想はなかったっす

 

山下さん

ちなみに参道とかの土産屋さんだと、「小坊主」をモチーフにしたファみやげが多いです

 

野口

「小坊主」?

 

山下さん

歴史上の人物や祀られている人物を描くと、問題になることもあるんです。小坊主だと誰でもないので、「小坊主いじり」が全国で多発していました

 

山下さん

これとか

 

野口

「いい友!小坊主隊」「なるほど ザ・京都」、ちょっと詰め込みすぎじゃないですか

 

山下さん

それがファみやげの象徴的なところで、今だったら「どっちかにしよう」ってなりますよね

 

野口

貪欲な時代だったんですね

 当時のヤンキーとの結びつきから、「小坊主いじり」まで、ファみやげの世界はどこまで広がっているのでしょうか。嚙み応えのあるカルチャーを持ちつつも、お土産屋さんから、また人々の記憶から消えていったファみやげ。

 この日の取材の翌日に、山形に調査に向かうという山下さんに、「もしもファみやげが見つからなかったら?」と聞くと、力強い答えが返ってきました。

 

山下さん

「ない」という結果も、ひとつのおみやげとして持ち帰ります

「ウェブメディアびっくりセール」に出ます!

 withnews編集部は、ネットを飛び出して21日に東京都世田谷区で開かれる「ウェブメディアびっくりセール」に参加します! 前回(2017年11月)に引き続き、2回目の参加となる今回のテーマは…

 原 点 回 帰
 withnewsといえば、あなたの「気になる」を「フカボリ」

 これまでさまざまなニュースをフカボリしてきましたが、今度はあなたの耳を「フカボリ」する時がきました!ということで、耳かき出します

 実はこの耳かき、山下メロさんにデザインしてもらいました!
これが「withnews耳かき」だ!
これが「withnews耳かき」だ!
 「ファみやげ」で代表的なアイコン「キツネ」のイラストと、手書きの丸文字、そして軽快なローマ字日本語。台紙の背景は、ヤンキーが好んだ英字新聞風と、山下さんのこだわりがたっぷりつまっています。

 でもこれ、withnewsびっくりセール史上、一番びっくりすることがあったんですけど
「s」がない
「s」がない
 弊社からのデータの送付ミスなのか、業者のミスなのか判然としないまま、単数形でびっくりセールに挑むことになりました。ちなみに、まだ会社の偉い人には何も言っていません
 このほか、前回好評だった神田大介記者による「ウェブメディアの人にも役立つ、新聞記者の超基本的な取材のコツ」をバージョンアップし、withnews記者による「薄い本」として出す予定です。購入者には今月からスタートした企画#withyou」のステッカーもプレゼントします!

 お楽しみに!
第三回ウェブメディアびっくりセール

 日時:2018/4/21(土) 12:00~17:00(入場無料)
 場所:iTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズ

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