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眞子さま訪問「幸せの国」ブータンは「フォトジェニック王国」だった

「キラ」と呼ばれる民族衣装を身につけた女性たち=2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影
「キラ」と呼ばれる民族衣装を身につけた女性たち=2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

目次

 「幸せの国ブータン」を、婚約の準備で幸せいっぱいの秋篠宮家の長女眞子さまが訪れる――。その海外公務に急きょ同行した。(朝日新聞東京映像報道部・北村玲奈)

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覆されたイメージ

 ブータンと聞いて私が思い出したのは、1994年出版の「地球家族」という写真集。世界30カ国の家族を、彼らの全ての所有物と共に撮影していた。

 アメリカの家庭で白物家電やソファがずらりと並ぶ一方、ブータンの一家は農具と仏具だけ。トイレも、掘られた穴をついたてで囲んだだけだった。

ブータンの首都ティンプーの街並み=2017年6月1日、ティンプー、北村玲奈撮影
ブータンの首都ティンプーの街並み=2017年6月1日、ティンプー、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 そんなイメージは現地に到着してすぐに裏切られた。パロ国際空港は白い壁と朱色の柱を基調にした伝統様式で、とても立派。

 首都ティンプーは20分も歩けば一周できる小さな街だが、カフェ、ハンバーガー店、バーがあって、Tシャツにデニム姿の若者がスマホを片手に歩いている。

ブータンには交通信号がなく、交差点にはラウンドアバウトが設置されている。首都ティンプーの中心街の交差点では、警察官が手信号を出して交通整理をしていた=2017年6月3日、ティンプー、北村玲奈撮影
ブータンには交通信号がなく、交差点にはラウンドアバウトが設置されている。首都ティンプーの中心街の交差点では、警察官が手信号を出して交通整理をしていた=2017年6月3日、ティンプー、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞
ブータンの首都ティンプーの洋服店で壁までびっしりと並べられた若者向けのスニーカー=2017年6月3日、北村玲奈撮影
ブータンの首都ティンプーの洋服店で壁までびっしりと並べられた若者向けのスニーカー=2017年6月3日、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

ここは「霞が関」

 色鮮やかな「キラ」と呼ばれる民族衣装の女性たちに出会ったのは、眞子さまがワンチュク国王を表敬訪問した時のことだ。

 その場所は、「タシチョゾン」という政府機関や僧院が入る城塞(じょうさい)で、日本で言う霞が関のような場所になる。仏教の総本山でもあって、建物は18世紀の建築技法を用いている。白い壁に、ダークブラウンの木枠の縦長窓、その周りは朱色を基調に花や雲、鳥、ブータンの文字で装飾されている。

ブータンのワンチュク国王夫妻を表敬に訪れる秋篠宮家の長女眞子さまを待つ、「キラ」や「ゴ」と呼ばれる民族衣装を身につけた現地の人たち=2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影
ブータンのワンチュク国王夫妻を表敬に訪れる秋篠宮家の長女眞子さまを待つ、「キラ」や「ゴ」と呼ばれる民族衣装を身につけた現地の人たち=2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 気づくと奥から続々と民族衣装姿の人が現れ、壁際に並び始めた。おそらくここで働く人たちなのだろう。その色彩、美しさ、フォトジェニックな光景に、私は慌ててシャッターを切った。眞子さまの到着を待ってそわそわ、そんな表情だった。

ブータンのワンチュク国王夫妻を表敬に訪れる秋篠宮家の長女眞子さまを待つ、「キラ」と呼ばれる民族衣装を身につけた女性たち=2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影
ブータンのワンチュク国王夫妻を表敬に訪れる秋篠宮家の長女眞子さまを待つ、「キラ」と呼ばれる民族衣装を身につけた女性たち=2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

市場、おしゃべり、昼寝… カラフルな日常

 8日間の滞在中、市井の人々にも度々レンズを向けた。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 街中の弓技場でアーチェリーを楽しむ人たち。ルールは国技である弓技と同じで、2組に分かれて140メートル離れた的を狙って順番に矢を放つ。1ゲーム5~7時間ほどかかるという。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 青空市場で野菜を売っている女性たち。市場にはタマネギ、キャベツなどの見慣れた野菜のほか、から煎りしたお米、乾燥させた赤い唐辛子、石のように固い乾燥させたヤックのチーズなどが売られていた。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 女性用の伝統衣装である「キラ」織る女性。最高級品は絹製で手織り。女性は長時間の作業に備えて、お茶やお菓子を横に、イヤフォンをつけて作業していた。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 田植えは女性たちの仕事で、近所の人たちと協力して行う。作業中は歌声や話し声が絶えない。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 県庁であるパロ・ゾンへつながる橋を歩く民族衣装「ゴ」を着た男性。正装の際に必要な白い布を広げている。

2017年6月3日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月3日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 街中には赤い布をまとった僧侶の姿も目立つ。

2017年6月6日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月6日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 タクツァン僧院のふもとに開かれたお土産屋。観光客で賑わっているにもかかわらず、店主は昼寝をしていた。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 県庁であるパロ・ゾンにつながる橋の手前で話し込む民俗衣装「ゴ」を来た男性たち。

2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影
2017年6月5日、ブータン・パロ、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 家を守る魔除けとして壁に描かれた男根「ポ・チェン」。首都ではあまり見かけなかったが、パロでは多く見受けられた。

2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影
2017年6月2日、ティンプー・タシチョゾン、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 タシチョゾンの中庭に飾られたマニ車の前を歩く僧侶。マニ車は経文が収められた回転車で、回すとお経を読んだと同じ功徳を得られるとされている。

「幸せ」の理由、見えた気がした

 わたしがレンズを向けると、ブータンの人たちは必ず笑顔を返して、受け入れてくれる。カメラの前で自分を良く見せようとしたり、取り繕ったりすることもない。彼らには、ありのままの自分たちを肯定し、その中で幸せを見いだす強さがあるように感じた。

 ブータンが「幸せの国」と言われる理由が、見えた気がした。

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