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「窃盗だろ!謝れ!」 桃太郎で描くネット炎上 CM制作者の思いは?
誰もが知っている昔話「桃太郎」。冒頭の桃が流れてくる場面が、もし現在だったらどうなるか?
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誰もが知っている昔話「桃太郎」。冒頭の桃が流れてくる場面が、もし現在だったらどうなるか?
【ネットの話題、ファクトチェック】
誰もが知っている昔話「桃太郎」。冒頭の桃が流れてくる場面が、もし現在だったらどうなるか? 「窃盗だろw」「通報!通報!」「早く謝ってください」……。先週、現代社会の「ネット炎上」を昔話を題材に描いたCMが話題になりました。どんな狙いで制作したのか? 制作したACジャパンと、広告会社のクリエイティブディレクターに話を聞きました。
話題になっているのは「苦情殺到!桃太郎」です。テレビCMや新聞広告など複数パターンがありますが、いずれも同じテーマで作られています。
テレビCMでは、川で洗濯をしていたおばあさんが、桃が流れてきたことに気づき、拾い上げると、画面上に無数の吹き出しコメントが流れます。
「警察に届けないの?」
「桃の気持ちを考えたことあるの!」
「川で洗濯するなよー」
「早く謝ってください」
「徹底的に抗議しよう!」
相次ぐ非難の言葉に、おばあさんは桃を落とし、涙を流します。すると画面に「悪意ある言葉が人の心を傷つけている」「声を荒らげる前に、少しだけ考えてみませんか?」という文字が表れます。
最後はおじいさんが「大丈夫か~」と走って駆け寄り、笑顔を取り戻したおばあさんが桃を抱きしめて「もうちょっと待っててね」と呼びかけて終わります。
このCMの狙いについて、ACジャパンはホームページでこう説明しています。
担当者は「自由にものが言えるのはいいことですが、ネット上では誰もが『ちょっと行き過ぎでは』と思っているのではないでしょうか。スマホやパソコンなど便利なツールの使い方について、改めて考えてみませんか、という思いを込めました」と話します。
この企画を担当したのは、博報堂中部支社のクリエイティブディレクター・神谷一孝さんです。
「桃太郎を題材にするというアイデアは、同じチームのコピーライターの発案です。誰もが知っている昔話と現代社会の対比が核になっています」
こだわったのは、画面に流れる無数の批判コメントの内容でした。
「ネット上で実際に使われている言葉を参考にしながら選びました。リアルなほどエッジが効いてきますが、悲惨になりすぎてもいけません。中にはクスッとしてしまうようなものも交ぜながら、バランスを取りました」
最初に完成した動画は、あまりにおばあさんが可哀想に思える内容だったため、おじいさんが駆け寄って笑顔になるシーンを加えたそうです。
なぜ最後のシーンは、「もうちょっと待っててね」と呼びかけて終わったのか?
「実は、桃太郎が生まれてクレームを退治するというアイデアもありました。でも、あえて生まれる前で終えることにしたんです」
その理由について、こう説明します。
「インターネットは怒りの集積装置じゃないし、炎上騒動をおもしろがったり、ましてやメディアが油を注いで変なスパイラルが始まってしまっては、桃太郎という正義は生まれてきませんから」
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