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エムグラム、今どうなっている? 人工知能の学者社長が描く野望
5月の大型連休中、SNSで次々とアップされた正方形を9分割したカラフルな性格診断結果。覚えていませんか? 利用者数は数百万人規模になっているそうですが、あれっていったい何だったの? まだ、はやっている? 実は「今も1日1万人くらいずつ、受験者は増えている」そうです。最初、イマイチだったユーザー数が、インスタを意識した改修によって、爆発的に広がった理由。運営会社LIPの松村有祐社長(34)があたためている「野望」について聞きました。
LIPは、上場企業9千社以上、のべ1千万人以上に性格診断サービスを提供してきた国内企業と連携して「エムグラム」を4月8日にリリースしました。
「ながっちを構成する8性格 #診断コードで相性がわかる予定 #私を構成する8性格 #エムグラム診断 #本質をすぐに捉える #石橋を叩きまくって渡る #少し繊細 #ムードメーカー #合理主義者 #誘惑に強い #新しいもの好き #腰が重い」
実際にやってみた結果を松村社長に見せてみると……松村社長が注目したのは意外な場所でした。
「詳細データ」という14種類の性格特性の数字です。
「これ、偏差値なんですよ、言ってしまえば。直観的に本質的なところをとらえる力が偏差値65。日本人の中で高い方ですね。『思考』が63というのは、理想主義よりは現実主義でとらえますよね。協調的、というところも60。これが、起業家だとすごく低いんです。さらに起業家は論理的に物事を考える、という点も強く出る傾向があり、血も涙もない感じになるわけですね」
偏差値50が、各性格についての平均的な日本人の値となるそうです。
性格診断は、少ない問題数で無料で楽しめる占いのような形態と、ビジネス目的の形態、つまりは企業が採用試験などの際に適性検査の一環として実施する有料で問題数も多い形態の二つに分かれます。
性格診断は、統計学的手法を活用するため、もちろん問題数が多いほど精度が高まります。
エムグラムは提供会社と連携できたことで無料でサービスを運営しています。そこで課題となるのが105問という問題数です。
採用試験で出題されたら、最後までやらないと入社できないので受験者は必死になってやりますが、エムグラムはある意味、「別にやりたくなければやらなくても良いサービス」です。
絞りに絞った数、とのことですが、当初は松村さんの友達など身近な人に呼びかけても、3割程度しか最後までやってくれなかったそうです。
「やらなくてもいいサービス」のために、どうやって集中力を持続してもらうか。
こだわったのは操作性です。一つの設問に回答したら、次の設問までカーソルを受験者にとって心地よいタイミングで移動させるように調整するなど、様々な改善を施しています。
若い女性がインスタグラムなどでシェアしたくなるように、最初は文字ばかりだった診断結果も9分割のカラフルなものに変えました。その結果、5月3日から状況が一変しました。
受験者数が前日の40倍以上の約1万6千人となり、4日はさらに一桁増えた数の受験者数になり、ソーシャルメディア上でもツイッター、フェイスブック、インスタグラム、ユーチューブ、の順で次々とバズる結果になったそうです。
そもそも松村さんはなぜこのサービスを立ち上げたのでしょうか。
北海道旭川市出身の松村さんは元々、人工知能の研究者で、旭川高専を経て北海道大学で博士号(情報科学)を取得。現在の人工知能研究をリードしているIBMのワトソン研究所(米国)の客員研究員にもなりました。
「遊びほうけていた」学生時代、恩師の一喝が人生を変えました。
「結果を出している人間はアヒルの水かきのようにちゃんと努力している。能力があるのにそれが分からないのは、最低の人間だ」
そこから改心して研究に熱意を傾けます。「教育者になりたい」という思いがありましたが、「人と真摯に向き合えるのは、ビジネスの世界ではないか」と考え、会社を興しました。
20代のころから恋愛相談を受けることが多かったという松村さん。別れの原因はたいてい「性格の不一致」だったそうです。
「2、3年付き合った後で性格の不一致に気づいて別れるのは時間の無駄。科学を使って、適正・不適正のお手伝いをすることができないか」と考え、起業するならばこの分野で、と考えたそうです。
松村さんのいう「相性が良い相手」とは何でしょう?
「性格特性において、自分と共通する部分が一つ以上あり、対照的な要素が少ない相手」と説明します。
「2、3日一緒にいるだけ良いですが、仕事や恋愛など長期的な関係性を営む際には、ぶつかる要素が多すぎると困るわけです」
今後、エムグラムはどのように進化するのか。
松村さんによると、7月中旬をめどにスマホアプリをリリースし、エムグラムを利用する友達などとの相性チェックができるようなサービスを加えていくそうです。
ちなみに、私の診断結果によると「相性が良い相手と知り合う確率」が422人に1人と出ました。これは、アプリを使って「相性が良い相手」と出た人に最初に会ってしまえば、わざわざ他の421人に会う必要がなくなる、ということ。
松村さんは「422人に1人ならば、全然ましな方です。500万人に1人とか出ていた人もいますから」と笑います。
「統計的にこうです、という形で性格の違いが分かっていると、逆に忖度したお付き合い、非常に良いコミュニケーションができるようになる。最初からお互いに性格の違いが分かっていると、感情的になってこじれる前に、気をつけるようになるんです」と松村さん。
今後は自身の専門である人工知能を活用したサービスを加えたり、日本各地の人工知能研究者と連携したりすることも考えているそうです。
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