地元
お地蔵さん、空飛んでるよ! 福井のお寺「ファンキー仏像」の秘密
人口10万人あたりの寺院数がダントツで全国1位(162件)という福井県にはあちこちに寺があります。そのうちの一つで地蔵などの石像がたくさんのこの寺は越前市にあり、名を宝円寺といいます。膨大な数の可愛い系地蔵が出迎えてくれます。眼鏡をクイッと上げる地蔵。「あー何も聞こえません」と言っているかのような地蔵。果ては空を飛ぶ(?)地蔵まで。その数は日に日に増えているとか……。(朝日新聞福井総局・影山遼)
昨年8月にNTTタウンページが集計したところ、福井県の人口10万人あたりの寺院数は162.78件でした。2位の島根県(132.14件)、3位の富山県(125.42件)に大差をつけての1位です。NTTは、浄土真宗が盛んな点などを理由として挙げています。
そんな福井県で、ひときわ個性的なのが越前市にある宝円寺の石像たちです。今年2月。寺を訪れてみましたが、インターホンを押しても誰もいません。約4千坪だという広大な敷地に人は自分と友人の2人しかおらず、他は石像だけ。不思議な感覚でした。
境内では、一休さんに似た看板がにこやかに「まるって不思議です 見ているだけで心がなごみます」といった名言めいたことを呼びかけています。
地蔵以外にも、カエルの石像がいっぱいありました。見ざる、言わざる、聞かざるに加え、えんま大王の石像まで存在。門には巨大なてんぐが飾られ、寺の入り口は洋風ちっく。丸めがねの地蔵に、本好きの二郎、ポケモン的な石像も…。全く統一されていない無秩序な空間です。
理由が気になって調べを進めてみると、住職の桑原伯州さん(58)は福井でなく東京に住んでいました。児童養護施設の施設長なんだそうです。
寺には留守番の人がいて、桑原さんは月2回ほど福井に帰るといいます。
寺について詳しく聞いてみました。
――宝円寺の由来は。
1388年に創建した曹洞宗のお寺です。加賀百万石を築いた戦国武将の前田利家と深く関わりがあったと伝えられており、境内の墓地には利家の父母が供養されています。
――なぜたくさんの地蔵が。
見て分かるかと思いますが、お参りに来てホッとする環境を作るためです。児童養護施設で働いている関係もあり、子どもたちを大事にすることを基本にしています。子どもたちの寺離れが進む中、変わった地蔵などが話題を呼んで来てもらえるようにしたかったです。木が生い茂って薄暗かった寺を脱するため、2000年ごろから改革してきました。
――一休さんのような看板は何のために置いているのでしょうか。
ただ看板に文字がボンと書いてあるより、坊主が話しているようにすることで目から色々学んでもらえるようにしています。
――カエルたちは。
葬儀の後、亡くなった人たちが「あの世に無事カエル」ようにと建てています。このカエルたちは増えることがあっても減ることはないのです。
――門のてんぐは。
ああ、あれは人がくれたので飾っているだけです。自分がてんぐにならないようにしています。
――庭にはボートもありましたが。
池があるからボートがあるだけです。
――結局、来る人は増えたのでしょうか。
いえ、それほどは。ただ、「利家とまつ」(2002年のNHK大河ドラマ)が放映されていた時に来てくださる方は圧倒的に増えました。これからは、テーマパークのつもりで気軽に家族でおいでください。
たしかに、何度か足を運んでみても、子どもどころか人がおらず…。桑原さんの理想とするテーマパークになる日は遠そうですが、これからも変わっていく寺が、いつか日の目を見ることを祈ります。
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