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AKB順位予測、大学・企業が熱心なワケ データで読める?人の心理
6月17日に沖縄で開かれる予定のAKB48選抜総選挙を前に、今年もネット上のつぶやきや書き込みなど膨大なデータを独自の方法で解析した順位予測が、相次いで発表されています。論文発表やビジネスに直結はしないのに、大学や企業が取り組む「ワケ」は? 人間の心理にデータで迫ろうと、飽くなき挑戦をする姿がありました。
鳥取大の石井晃教授の研究室は6月14日、順位予想をまとめました。
1位指原莉乃さん(HKT48)、2位渡辺麻友さん(AKB48)、そして3位に宮脇咲良さん(HKT48)を予想。速報発表で1位になり、驚きが広がった荻野由佳さん(NGT48)も5位としました。
石井さんは「荻野さんは3月以降ずっと勢いを示す指数が高い」と話し、「世代交代が進むのではないか」と期待しています。
石井さんの研究室では普段から
①広告宣伝
②友人らからの情報(直接コミュニケーション)
③周囲のうわさなど(間接コミュニケーション)
の三つの要素に注目、数理モデルを使って人気を解析しています。AKB選抜総選挙の予測でも「間接コミュニケーションの指数が大きいほど浮動票を広く集め、上位に来る」と考えています。
昨年も投票開始翌日に発表された速報では、渡辺さんが1位、指原さんが2位、3位が松井珠理奈さんでしたが、間接コミュニケーションの指数がより高かった指原さんを1位と予想。上位3人は予想と最終順位が一致しました。
今年は、速報前に加えて速報発表後約10日間の直接、間接コミュニケーションの指数の変化を初めてウオッチし、勢いがどう変化しているかを調べ、精度向上を目指しています。
「この予測モデルは多くの人の心の動きを捕らえるのにも応用できる」と一般での活用への期待も口にします。
なぜ選抜総選挙を対象にして毎年予測しているのでしょうか。
「分析をSNSの書き込みから行うには、書き込みが多いほどやりやすい。選抜総選挙は毎年開催されるうえ、AKBグループは数年に一度の国政選挙より圧倒的に書き込みの数が多い」と石井さん。毎年行われるので、学生に研究としてやらせるのに適しているそうです。
ただし、票数が接近している下位の予測はかなり難しいといいます。
1人で大量投票が可能な選抜総選挙の順位は1人で数票程度を入れる「ライト層」に加え、数百票以上を大量投票する「コア層」の動向が大きく左右しますが、同じメンバーを応援するファン有志で「選挙対策委員会」をつくり、水面下で準備することがままあります。その動向をネット上の情報でつかむのは簡単ではありません。
また、CDについた投票券だけでなく、モバイルサイトなど複数の方法で投票できるのも選抜総選挙の特徴。「1票の値段」は大きく異なり、店頭で買える通常盤は1枚1646円、ネットからの抽選予約で購入する劇場盤は1枚1028円。そしてグループごとのモバイルサイトやモバイルメールは大半が1件324円。
今年は1台のスマホで各グループのモバイルサイトに加入、モバメも取ると最大11票を3千円台で投票できます。いかに限られた資金で多くの投票に結びつけるかが熱心なファンの知恵の絞りどころ。知人などにモバイルサイトへの加入をお願いし、票の上積みを図っている人も少なからずいます。
残念ながら、こうした動向はツイッターやブログの記述に表れない限り「調べようがない」と石井さん。どのメンバーも同じぐらいの割合で大量投票するファンがいると仮定して計算しているそうです。
2012年から選抜総選挙の順位予測を発表しているルグラン(東京)も今月9日、順位予測を発表しました。1位を25万7千票あまりで渡辺さん、2位はわずかの差で指原さん、3位松井さんと予想。速報1位だった荻野さんは7位に、そして、速報96位だったチーム8の坂口渚沙さんを5位に予想しているのが目をひきます。
今年は秋葉原を拠点とするAKB48と各地にあるいわゆる「支店」と呼ばれるグループで別々の予測モデルを作ったのが特徴です。具体的にはAKB48は2ちゃんねるの書き込み数が、HKT48はブログへの書き込み数が、SKE48はツイッターでの男性の書き込みの数が、それぞれメンバーの得票と強い相関関係にあると独自に解析。それを反映したモデルを使っているそうです。速報からの伸び率も勘案したそうです。
ただし、実際のCDの販売枚数や握手会の完売状況などは考慮していません。あくまでネット上のデータを使ってより高い精度で予測するのが目標だそうです。
ビッグデータを活用した調査結果や、マーケティング戦略などを企業などに提供している同社。選抜総選挙を分析する理由について広報担当者に尋ねるとこんな答えが。「ビッグデータ解析は注目されつつありますが、多くの企業などはデータから世の中の何が見えるのか、イメージを持ちにくいのが現状です。そこで、選抜総選挙を通じて、データからここまで人々の行動や心理が読めるということを紹介したいと思っています」
現地は雨が続いており、天候が気がかりですが、メンバー、そしてファンだけでなく、順位予想を発表した人たちにとってもどれほど予想が合っているか緊張の時はもうすぐ。「選んだ予測モデルを信じて、開票結果を待ちます」
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