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赤ちゃん見たら「いないないばあ」はルール? 海外〝里帰り〟の衝撃
世代や育った文化で、思いっきり〝常識〟が異なるのが「子育て」です。ゆえに、義実家への〝里帰り〟は相当緊張するものですが、パートナーが海外出身だったらどうなるのでしょうか? 初めて夫の出身国トルコに里帰りをした日本人ママの衝撃を聞きました。
都内在住のリンさんは、昨年5月から2カ月間、夫の出身国であるトルコへ、1歳の誕生日を控えた娘と〝里帰り〟しました。
結婚をきっかけに、長期休みに何度か遊びに行ったことはありましたが、〝里帰り〟と旅行はまったくの別物。異文化の中で、家族として暮らしながら、子育てをすることになります。
夫はリモートワークが可能。日本が好きで、これからも日本で暮らすことを望んでくれている夫に「親と一緒に住む」かけがえのない時間を、リンさんが育休の間に過ごさせてあげられればと決心しました。
娘カヤちゃんの食事は当時、離乳食でしたが、幸い、アレルギーはなく、「トルコにも赤ちゃんはいるし、きっと大丈夫」と腹をくくって、日本からは最低限のレトルト離乳食を持参しました。
到着した初日に、義理の母がさっそく、「タルハナ」で離乳食を作ってくれました。
タルハナとは、トルコではおなじみのヨーグルトと小麦を発酵させた粉末スープの素。離乳食用のタルハナもあり、どろどろした食感で、タマネギや赤ピーマンが入っています。
リンさんは味見をして「大丈夫かな」と、娘に食べさせました。
日本では離乳食を食べさせる時間も食べさせて良いものも必死で勉強して、自分がしっかりしなきゃと向き合っていました。
だから、最初のうちは「トルコでは赤ちゃんにも食べさせる」と生のアボカドが出てくると「日本では果物にも加熱していたのに」とひやひやもしたそうですが、娘もおなかを壊さず、喜んで食べている様子を見て、「私は子育てに真面目過ぎたのかも」と思うようになったと言います。
日本では、日中に子どもと二人きりになる「孤育て」にならないよう、なるべく娘と一緒に子育て支援施設に行くのが日課でした。トルコでも事前に同様の施設を探しましたが、見つからず、途方に暮れました。
「一体、どこで子どもを遊ばせたらいいんだろう」
夫の実家は地中海に面したリゾート地にあります。滞在したのは雨が少なく一番過ごしやすい時期だったため、近隣のヨーロッパの国々から、たくさんの観光客がやってきて、バカンスを楽しんでいました。
義実家の周りで観察してみると、徒歩5分のところにあるビーチに、子どもを連れて行っている人もいるようだと気づきました。「もう生後6カ月過ぎているし、きっと大丈夫」と、どきどきしながら娘を連れて行きました。
すると海では生後3カ月ぐらいの赤ちゃんが寝転び、生後1カ月ぐらいの子までベビーカーで散歩しています。
日本では子育て情報を集める中で「海に赤ちゃんを連れて行くのはまだ早い」と思ったり、「新生児は外に連れ出したらだめ」と見聞きして守ってきたけど、拍子抜けしてしまうほど。
大人たちは「子育て期間に、せっかくなら子どもとバカンスすればいいのよ」と楽しんでいました。
カヤちゃんは毎日のように海に行き、砂山や波打ち際でたっぷり遊び、ネコやカメを追いかけてよく歩き、よく寝るようになりました。
日本では「ママ友」を作るのは子育て支援施設でしたが、トルコでは、海に行く道中でもたくさんの人に話しかけられて友達ができ、自然に人との出会いがありました。
トルコの「圧倒的な子育てのしやすさ」にも衝撃を受けました。
赤ちゃんを抱いて町を歩くとき、日本では「うるさくして、ごめんなさい」と萎縮していたと言います。
でもトルコでは、どこでも人が寄ってきて「チョク・タトゥル(めっちゃかわいい)」と話しかけてくれ、レストランではスタッフが「抱っこしてもいい?」。老若男女問わず「いないいないばあ!」のしぐさでとあやしてくれるため、「トルコでは赤ちゃんには『いないいないばあ』せよ、というルールがあるの?」と思ったほど。
「この子がいることを、みんなが喜んでくれていると感じられて、どこに行っても、気が楽でした」
すると、娘にも変化が現れました。リンさん以外が抱っこすると泣いていたのに、トルコで初めて「バイバイ」を覚え、会う人会う人に満面の笑顔で手を振るようになりました。
日本に帰国したリンさん一家。
カヤちゃんはトルコでしてきたように、東京でもにこにこと会う人会う人に手を振りますが、期待していた反応は返ってこず、さみしそうな顔をしているそうです。
リンさんの考えにも変化が現れました。日本では主体的に子育てに取り組むあまり「私だけのカヤ」と思ってしまっていたのかもと気づいたそうです。トルコでは義理の親をはじめ、たくさんの人に接してもらい、育つカヤちゃんを見ながら、「私もカヤの周りにいる大勢の中の〝一員〟なんだ」と考えられるようになったと言います。
もちろん日本は、道がきれいで、エレベーターやおむつ替えスペースは整っており、レトルト離乳食も豊富で、トルコより子育てに便利な面はあります。
それでも、リンさんはどこでおむつ替えをしていても受け入れてくれるトルコの「子どもが社会に歓迎されている雰囲気」を、ときどき懐かしく思い出すそうです。
異なる文化で子育てをして気づいたことは多く、「もし第2子に恵まれたら、今度は育休中に子連れで世界一周したいなと思うようになりました」。
カヤちゃんは自然豊かな環境で遊ぶのに慣れてしまい、「日本ではどこで遊ばせていたんだっけ?」と、今は逆に東京での遊び場をまた模索していると言います。
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