4月18日から東京・上野の東京都美術館で開催される「ブリューゲル『バベルの塔』展」。タイトルになったピーテル・ブリューゲル1世の「バベルの塔」をはじめ、オランダのボイマンス美術館が所蔵する作品を紹介し、16世紀のネーデルラント美術の魅力に迫る展覧会です。この展覧会に合わせ、レゴ界では有名な東大LEGO部が「レゴバベル」という何やらスゴイものを制作したという情報が。「1日を50円で売る」で様々な依頼をこなしてきた、東京大学法学部3年生の高野りょーすけさんが、東大が誇るレゴ職人のすごさに迫りました。
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◇ ◇
東京大学3年生の、高野りょーすけと申します。
本日は、東京大学の駒場キャンパスにやってきました。
何度見ても、美しいキャンパス。何回通っても、飽きない校門。
わが学びの里・東京大学には、様々なサークル・部活がありますが、最近ブイブイ言わせているのが…
.....なるほど。レゴだけであらゆるものを作ってしまうのは、まさに職人技。
こういった方々と苦楽を共にしながら学べるのが、わが学びの里・東京大学の良さですね。入学できて本当に良かった。
そんなレゴ部がどうやら、今スゴいモノを作っているというウワサが入ってきました。
東京大学の学生たるもの、その名に恥じない活動をしなければなりませんが、大丈夫でしょうか。
大学の品位を落としていないか不安なので、実際にレゴ部へお邪魔し、なにを作っているのか確かめてこようと思います。
万が一、お粗末なモノを作っていた場合は……。
「なんですか、これは」
東大LEGO部 高橋さん(1年生※取材時)
「『バベルの塔』を制作しています。展覧会との協同プロジェクトです」
【バベルの塔】
昔、地球上の人々が同じ言語をしゃべっていたころ、天まで届く塔をみんなで建てようとした。
神は彼らを恐れて、人々が話している言語を混乱させ、人間を世界各地に散らした。
参考:創世記 11章 1節~9節 絵:ピーテル・ブリューゲル1世
「いただいた一枚の絵を参考にして作るのですが、直径1m・高さ1.2mの巨大サイズになり、レゴパーツは46,000個使いました。足りない部品は世界中から取り寄せて、今日で完成する予定です」
「えっと……… 一枚の絵を参考に作るというのは…」
「絵を見てたら、どんな構造にするかのアイディアが湧いてくるんです。まずは絵に垂直方向と水平方向の補助線を描き込んだ結果、二重螺旋の建築物として解釈しました。それから、塔を上下に分割して、下部をさらに4つに分けるという方式はわりとすぐに思いつきまして。
大事なのは、4つに分けた下部をさらに何個のユニットで表現するかです。2つのスロープ部分で挟まれたアーチ2つで1つのユニットと考えました。いただいた絵を見ると一周あたりのアーチの数が100ぐらいなんですけど、アーチの幅が徐々に小さくなっている感じを出すには分割しすぎると良くないんです。なので結局、下部のユニット数は24としてカウントして、4分割できる数字にしました」
「……」
「ほかにも、作る上でポイントとなった箇所がいろいろありまして…」
「塔の中心部分は円に近くなるように十二角形で考え、さらに頂角30度の三角形によって無理数である√3がでてくるのでこちらを1.75で近似し、レゴで長さを表しやすいように工夫しましたし」
「立体構造としての強度を保つために、ブロックをたて・よこ・ななめにつないでもいます。これなんかが、三平方の定理を利用した5:12:13の三角形です。ペグ止めしてあるので上下方向に離れませんし、圧縮にも強いフレームを内部に作ってあります。水平方向やねじる方向でない限りは外れません」
「全体のざっくりしたイメージができた後は、より詳しく内部構造を考えます。レゴブロックというと、ただ単にブロックを積んでいくシンプルなイメージだと思いますが、今回はテクニックシリーズと呼ばれる丸い棒を通してパーツをはめるようなものを取り入れていて、様々な角度を可能にしているんです」
「そのせいで内部もかなり複雑になっているので、細部は専用ソフトで設計しました。ソフト上では、ブロックを置いたり消したり、複数のブロックをユニットとして複製することが可能です。といっても、立体を作るのに特殊なツールがあるわけではないので、結局はソフトの中で地道にレゴを組んだのですが」
「塔を見てみると、上にいくにつれて直径が小さくなりますよね。下の段の横幅のポッチ数をいくつにするか、あらゆるパターンで直径を計算して比較します。どれぐらい小さくなるかを考えつつ、1番上が細くなりすぎず、下が底面のプレートに収まる範囲で調整しました。
ななめのスロープ部分を2ポッチにして通路部分は4ポッチにします。すると、二重螺旋構造でなおかつ24分割されているので、12ユニットで4ポッチのずれがあり、つまり1ユニットで3分の1だけ内側にずれます。これをソフトの中で表現するとなると、3分の1ポッチの指定ができないので、角度を調整できるパーツをつかって、まあ適当にごにょごにょって計算して…」
「ぼく自身はあまり芸術的なものに興味はなかったのですが、絵を立体にすることによって、絵への理解が深まるんだなと思いましたね。たとえばこちら」
「ぼくの解釈だと、ここから船が塔の真ん中に入って荷物を運び、石材をあげて塔を高くしていくんです。細部まで見ながらその立体がどのように作られているのか考えることで、この『バベルの塔』を描かれたブリューゲルの工夫も見えてきました。このあと塔を完成させますが、今までの過程では自分の設計は間違っていなかったんだなと確信しています」
「高橋さん」
「なかなかですね」
「ありがとうございます。高校までの数学は、そこそこ出来るので」
……。
お兄様やお姉様がレゴをやっていた影響で、3歳ぐらいから自分もやりはじめたという高橋さん。
高校では基本寝るか、工作をしていたそう。
「昔から、物を作るのがお好きだったんですね」
「はい。そのせいかはわかりませんが、クラスメイトの名前をあまり覚えないまま大学に入りました」
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「準備ができたので、塔の上部を下部に乗せて完成させます」
「お願いします」
(レゴ部の部長さんも手伝う)
「一箇所が取れて、連鎖的にほかのパーツも落ちたんだ…」と高橋さん。
圧巻。塔の中に胃カメラみたいなのを刺せば、一日中遊べる気がします。
今後の展望をお聞きすると、
「もっとサブカルチャー寄りの、小さいモノも作ってみたいです」
とのこと。
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この「レゴバベル」は、バベルの塔と期間限定で「友好タワー」として提携することになった東京タワーのフットタウン1階ロビーで4月16日まで展示されています。
「バベルの塔」展は、4月18日から7月2日まで、東京・上野の東京都美術館で開催(月曜日は休み)。一般の当日券は1600円です。
東京タワーに「バベルの塔」 4万6千個のレゴで再現 出典: 朝日新聞デジタル