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金魚が野生化すると…巨大化、驚きの繁殖力「最も厄介な生物の一つ」
金魚が野生化すると、どうなるの? オーストラリアのマードック大学の研究チームが、現地の川で野生化した金魚を十数年間、研究した結果、驚くべき生態が明らかになりました。野生化した金魚は巨大化、驚異的な繁殖力を見せたというのです。一体何が起きたのか? 研究チームのリーダーのスティーブン・ビーティ博士に話を聞きました。
研究の舞台になったバス川は、オーストラリア西南部にあります。20年前から農業排水や住宅地からの栄養豊富な下水が川に流れ込み、水質が著しく低下しました。そして、誰かが何匹かの金魚を川に捨てた結果、金魚がバス川にあふれるようになったのです。
金魚の生態を調べた結果、わかったのがその成長の早さです。1年間で18センチになり、世界でも最も高い成長率を記録しました。
その繁殖力の強さも明らかになりました。現在までに1500匹、1キロ以上の金魚が駆除されていますが、金魚の数は減ったどころか、むしろ増え続いています。
ビーティ博士は「これまで金魚はあまり泳がない怠け者という認識さえありました。ところが、金魚は川だけでなく、湿地や睡蓮の生息地にも活動範囲を広げていることが確認できたのです。金魚は決して怠け者ではなく、カープ(鯉)と同じ運動力を持っていることも分かりました」と話します。
ビーティ博士は「金魚は、かしこい魚です。異なる楽曲を聞き分ける能力も持っています」と明かします。
2013年の慶応大の研究では、金魚にバッハの「トッカータとフーガ ニ短調」とストラヴィンスキーの「春の祭典」を水中のスピーカーから聞かせました。一方の音楽が流れた場合、ビーズのついた紐をひけば餌が得られるようにしたところ、金魚は音楽を聞き分けて紐を引くことを覚えました。
もともと、金魚は鯉科のフナを原種に飼育観賞用に品種改良された魚です。本来は自然界にいないはずの金魚が川で野生化すると、様々な変化が起きます。
外見は茶色に変わります。水槽ではない自然の川の水の色になじむ、フナのような色になります。そして身長が伸び、体重も増えます。
気になるのは、生態系への影響です。金魚は湖や川の底を泳ぐので、水生植物の根を抜いてしまいます。さらに水底をかき回して、栄養素を散乱させ、藻類の異常繁殖を促します。未知の伝染病をほかの魚にうつすこともあります。
ビーティ博士は「野生化した金魚は世界でも最も厄介な繁殖型水生生物の一つ」と話します。
日本では、お祭りの「金魚すくい」があり、金魚は昔から親しまれてきました。家で飼育している人も少なくありません。
金魚好きな日本人に対してビーティ博士は「普段から魚を飼育することは、自然をよりよく理解するには非常に大事なこと」と言います。
その上で、次の2点を注意点としてあげます。
(1)水槽に魚を入れすぎないように。そして水質をよく確認してください。
(2)自然の川や海、人工の湖に絶対、放流しないでください。ちょっとした行為が、世界レベルの環境を乱す恐れがあります。
巨大金魚を見続けてきたビーティ博士ならではのアドバイスでした。
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