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2016年09月18日

ボルトの一人称は「俺」?「僕」?「私」? しっくりくるのは?

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男子100mで優勝したボルト選手の記事につけられた「俺を超えられるか」の見出し

男子100mで優勝したボルト選手の記事につけられた「俺を超えられるか」の見出し

出典: 8月16日朝日新聞朝刊

ボルトの一人称、「俺」が多いのはなぜ?

リクエストの内容

陸上のボルト選手の一人称で「俺」が多いのはなぜ?

ジャマイカ

2016年09月13日

 リオデジャネイロ五輪で、3大会連続3冠を達成した陸上のウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)。メディアがボルト選手を邦訳する際、一人称を「俺」と訳すことが圧倒的に多いのです。果たして、なぜなのでしょうか。なぜ「僕」ではないのでしょうか。

3連覇のボルト「俺を超えられるか」

 英語での一人称「I」。男性が使っている場合、それを「俺」と訳すか「僕」と訳すか、はたまた「私」と訳すかは、訳者次第になります。

 例えば、8月16日の朝日新聞には、100mで優勝したボルト選手が、ゴールした直後に人さし指を胸の前で掲げ「No.1」のポーズをしている写真が掲載されています。その写真の上には、こう見出しがつけられています。

 「俺を超えられるか」

男子100mで優勝し、ポーズをとるウサイン・ボルト選手

男子100mで優勝し、ポーズをとるウサイン・ボルト選手

出典: 朝日新聞社

男子100mで優勝したボルト選手に付く記事は「俺を超えられるか」と見出しがつけられた

男子100mで優勝したボルト選手に付く記事は「俺を超えられるか」と見出しがつけられた

出典: 8月16日朝日新聞朝刊

 見出しをつけた男性編集者(37)によると、ボルト選手の力強さを示すような見出しをつけたかったとのこと。4年前のロンドン五輪の際、ボルト選手の記事に付いた「俺は伝説になる」という見出しが強く印象に残り、今回の見出しに至ったということです。記事の本文中では、一人称は使われていませんでした。

 編集者はこう言います。「『僕』や『私』も考えたけど、ボルト選手といえば『俺』だった。他の言葉は考えられなかった」

4年前のロンドン五輪で、「顔」となる外国人選手を紹介した記事に登場したボルト選手

4年前のロンドン五輪で、「顔」となる外国人選手を紹介した記事に登場したボルト選手

出典: 2012年7月21日朝日新聞朝刊

調べてみたら、やっぱり多かった「俺」

 ほかのメディアが、ボルト選手の一人称をどのように訳しているのか調べてみました。

 ボルト選手が3大会連続3冠を達成した日、海外メディアによると、ボルト選手は「I am the greatest」と述べています。直訳すると、「俺が最強だ」といったところ。そのコメントに言及のあった社は、記事中で以下のように訳しています。

朝日新聞:「オレは最強だ」
東京新聞:「おれが最強だ」
サンケイスポーツ:「ほら見ただろう。I’M THE GREATEST(おれが最強だ)!」
スポーツ報知:「俺が最強だ! 自分を誇らしく思う」

 「I am the greatest」に言及はありませんでしたが、同じ日の記事で毎日新聞は「俺にバトンが回ってくると、それが金メダルに変わる」としています。やっぱり、多い「俺」。

 ちなみに朝日新聞では、「俺」だけでなく「僕」や「私」訳も登場しています。

ボルト選手について取り上げた、各紙の朝刊

ボルト選手について取り上げた、各紙の朝刊

体操ベルニャエフ選手は「僕」

 もちろん、スポーツ選手の邦訳全てが「俺」というわけではありません。

 体操の内村航平選手と個人総合で接戦を繰り広げた、オレグ・ベルニャエフ選手(ウクライナ)。内村選手が逆転で金メダルをつかんだ時、記者からの「あなたは審判に好かれているのではないか?」との内村選手への質問に対し、横からベルニャエフ選手が「いったん得点が出ればそれは公平な結果。そういう質問は無駄だと思う」と答える潔いシーンが、日本でも話題になりました。

 そんなベルニャエフ選手の邦訳は、「次は僕が勝つ」(朝日)、「僕たちは一生懸命にやっている」(読売)、「僕はウクライナ人だ」(日刊スポーツ)など、ほとんどが「僕」です。

 記者会見で内村にこんな質問が向けられた。「審判があなたにシンパシー(親しみ)を感じているから、こんな(高い)点数が出たのでは?」
 自分への質問ではないのに、わざわざこう言い返した。「いったん得点が出れば、それは公平な結果。その質問は無駄だと思う」
 6種目を演じて、内村との差は0・099点。「ここまで彼に肉薄した選手は過去にいない」と誇った。そして誓った。「ものすごく内村を尊敬しているけれど、次は僕が勝つ」

出典: 2016年8月12日:(この世界で)憧れの内村に肉薄「次は勝つ」 オレグ・ベルニャエフ:朝日新聞紙面から

跳馬の演技をするベルニャエフ選手

跳馬の演技をするベルニャエフ選手

出典: 朝日新聞社

 調べてみると、競泳のマイケル・フェルプス選手(米)も「僕」。必ずしも人種が関係しているわけではなく、ゴルフのタイガー・ウッズ選手も「僕」です。いかがでしょうか。皆さんのイメージとは合いますか?

競泳男子400mメドレーリレーで優勝し、金メダルを手にしたフェルプス選手

競泳男子400mメドレーリレーで優勝し、金メダルを手にしたフェルプス選手

出典: 朝日新聞社

「俺」と「僕」の違い、専門家に聞く

 「俺」や「僕」は「役割語」の一つ。役割語とは「その言葉を聞くと、どのような人物かをイメージしやすくなる言葉」です。そんな役割語研究の第一人者である、大阪大大学院の金水敏教授(言語学)に話を聞きました。

 金水教授が考える「俺」と「僕」には以下の違いがあります。

 「俺」:マッチョで男らしい・力強い・男性的
 「僕」:おとなしい・知的・インテリ

 金水教授は言います。「例えば『ドラえもん』を想像してみてください。ジャイアンは『俺』、のび太や出来杉は『僕』を使う。ジャイアンが『僕』を使う姿は想像できないでしょう」

イメージで変わる「俺」「僕」などの役割語

イメージで変わる「俺」「僕」などの役割語

出典:pixta

 リオ五輪の時のように、最近のスポーツ報道では、その背景にドラマやストーリー性が求められ、メディア側としてもキャラクター性を各選手に与える傾向にある、と金水教授は指摘しています。ボルト選手の場合、その強さはもちろんのこと、陽気でひょうきんなジャマイカ人である親しみやすさも手伝い、「俺」というキャラクターが出来上がっているとのこと。

 全ての選手が一律に「私」と邦訳されては味気なくなってしまうため、一定程度のキャラクター性を与えることは必要だと金水教授は言います。「どの訳し方が正しいとは言えないが、どのように訳されてもそれは『加工された個性』であることに書き手も読み手も留意して、スポーツを楽しむのが良いのではないか」としています。

 海外スポーツに接する際は、選手たちの活躍ぶりはもちろんのこと、各選手の一人称がどのようになっているかに注目してみるのもいいかもしれません。

「歴史的快走」「あと一歩なのに」…見出しで振り返るリオ五輪の熱狂
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「日本焦燥」(8月6日付朝刊) サッカー男子の日本代表が、初戦のナイジェリア戦で競り負ける。この負けが響き、予選突破ならず。
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