IT・科学
グノシー福島「なぜ大学へ?」 斎藤佑「引退後のことは…」異色対談
「グノシー」を学生時代に開発した福島良典CEO。甲子園で田中将大投手と熱戦を繰り広げた日本ハムの斎藤佑樹投手。同じ1988年生まれの2人が語り合いました。
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「グノシー」を学生時代に開発した福島良典CEO。甲子園で田中将大投手と熱戦を繰り広げた日本ハムの斎藤佑樹投手。同じ1988年生まれの2人が語り合いました。
国内有数のニュースアプリ「グノシー」を学生時代に開発した福島良典CEO。甲子園で田中将大投手と熱戦を繰り広げた日本ハムの斎藤佑樹投手。同じ1988年生まれの2人が、注目され続けてきたこれまでの歩み、データの生かし方、将来について語り合いました。
――ITベンチャーの起業家、甲子園での伝説の投手、お互いの印象は?
福島「浪人していた時、甲子園見てましたよ。とにかくすごいな、というイメージでした」
斎藤「甲子園で決勝まで行ったら、いつ負けてもいいっていう感じです。だから逆に楽ですよね。応援してくれている人のために変な負け方はしないようにと思っていました」
福島「僕は、そんなに自慢できる学生生活じゃなくて。それが嫌だった。人生賭けることを探していて起業したんです」
斎藤「IT企業の社長ってどんな人かと思っていました。もっとおじさんで、金ぴかのネックレスをつけたような。そんなイメージでした。でも実際は若いし、好青年。グノシーの存在はCMで知りました。既に多くのインターネットサービスがある中で、新しくグノシーをつくろうと思ったのはなぜですか? 情報を届けるサービスであれば、例えば、ヤフーなどがあります」
福島「スマホのユーザーってヤフーを使っていなかったんですよね。それは僕らの肌感覚でわかったから、チャンスだなって。あと、ヤフーは人が、グノシーは機械(アルゴリズム)が記事を選ぶ」
斎藤「じゃあ、全然、違う?」
福島「見た目は似ていても、使われ方や裏側の仕組みは全然、違います。だから、どの記事を配信するとユーザーにより読まれるか、だいたいわかります」
――「ゆとり世代」と言われる年代ですが、自分たちに共通している価値観は?
斎藤「『ゆとり世代』という名前には、物申したいことがあるんです。100歳からみたら80歳はゆとりだし、『ゆとり』という言葉をつけられたから、そう思われてしまったところがあるんじゃないのかな」
福島「土曜日が休みになっても、(部活などの)練習時間が増えただけだから。全然、ゆとってない。言っている人はしょうもない人ですよ。若い人でも、才能あれば輝いているんで」
斎藤「自分たちより下の世代でも、おとなしくてしゃべらないやつとかいるんですけど。心を許した人には話してくれるし。自分もそういう存在になりたい」
福島「自分たちの世代は、生まれてからずっと不景気と言われている。だから、上の世代の言うことをそのまま鵜呑みにはしなし、自分で考えないとやべえなって。大企業に入って、リスクを減らす。それって今の世の中に合っていない。親の世代の20年以上前の価値観だと思います」
斎藤「トレーニング方法でいうと、昔は根性論。いっぱい走って、いっぱい食べて、いっぱい遊んで、ゴルフ行って……。僕らの世代は、ちゃんと栄養を取って、睡眠時間も取って、トレーニングをやる。そういう世代ですね」
――注目されながらプロを続ける大変さとは?
斎藤「甲子園で注目されたことで、たくさんの人に出会えた。よくしてもらうことも多いです。ただ、時にはメンタルの面でダメージを食らうこともあった。でも、プロに入る前に注目されたことで、よかったと思う。人の痛みを感じられるようになったから」
福島「すごいスピードで上場して、年も若いので色々言われるんですけど、注目されるってパワーを持てることでもある。投資も受けられる。どう生かすか次第。サービスを開始して初めてネットで炎上した時、精神的にはダメージを受けたんですけど、会社の数字は伸びたんです。それ以降、気にならなくなった。アドバイスには正しいものもあれば間違っているものもある」
福島「なまじ経験者が言うアドバイスほど危険なんですよね。ちょっと合っているけど、でも間違っている。経営的には、数字で意思決定をするように注意しています」
――経営者として、投手として、データとの向き合い方は?
福島「僕の最大の仕事は、誰でも僕の役割ができるようにすること。それができるのがデータだと思っています。データの反対が芸術。その人にしかできない。意思決定も勘や感覚でやるのではなく、データに基づき、再現性が高くなるように気をつけています」
斎藤「僕の方は、芸術的な要素にたけている人が活躍している世界。でも初球の打者の打率など、見ているデータはあります。その上で、フォアボールを恐れるピッチングをすると僕はやられるっていうのもわかってきた。それは感覚なんですけど、データ優先になると間違えることもあると思うんです」
福島「データを使うときに気をつけなきゃいけないのは、データが過去の話であるということ。初球の打者の打率データは投手も打者も知ることができるわけです。お互いそれを知った上での投球だと、(知らない時の投球に比べて)結果は変わる」
斎藤「ミーティングでこのバッターのどこを攻めていくべきかを話し合っても、そうやらない方がいいと思うことはありますね。僕との相性、対戦する選手の調子もあるし」
福島「(斎藤投手に)すごく聞いてみたかったんですけど、高校の時に活躍して、そのままプロに行けたのに大学に進学したのはなぜですか?」
斎藤「あんまり話したくないんですけど……。大学に行って野球をやって、そこでダメだったら、プロでもダメだと思ったんです。だったら、遠回りっていう形になるけど、色んな経験できる大学を選びました。プロ野球選手はがんばっても35歳から40歳くらいまでしかできない。そこからの人生何やるんだろうって考えました」
――引退について考えることは?
斎藤「引退後のこと、本気で考えている選手は少ないです。選手同士で口にしたくないという。風潮として、そんな先のことを考えるべきではないというのもある。だから(大学進学の理由を)あんまり話したくないって言ったんですけど。でも考えるべきだとも思っている」
福島「年を取っている人になりたくない。この業界、80歳なのにハードワーカーな人とかいて、そういう人はとても若い。先のことはわからないですけど。あんまり考えないようにしてます」
――大型の提携話から最近の株価の低迷(最高値2140円に対し今は500円台が続く)までIT業界で注目を集めるグノシー。甲子園での鮮烈な記憶と現在の成績(5年目は1勝)を比較されがちな斎藤投手。2人の今後の目標は?
福島「業績は売上利益ともに過去最高を達成している。さらなる成長のために、協業パートナーとの業務提携やコンテンツ拡充などを加速させていく。よく、崇高な目標を聞かれるんですけど、それよりは会社を大きくすること、それが純粋に楽しい。めちゃくちゃ多くの人に使ってもらえるサービスを作りたい」
斎藤「先発ピッチャーをやっているので、二桁勝利を狙っていきたい。まずはそこだけ。その先のことはあまり考えずに。そこだけに向かっています」
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さいとう・ゆうき 1988年、群馬県生まれ。東京・早稲田実高から早大へ進み、東京六大学リーグ史上6人目の通算30勝、300奪三振を記録。
ふくしま・よしのり 1988年、愛媛県生まれ。東京大大学院在学中に「グノシー」を開発。2012年11月に法人化。2015年4月、東証マザーズ上場。
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