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ネットの話題

まるで写真!自閉症の画家が描いた表紙が話題に 作者の父に思い聞く

ある会社が公開した株主向けの報告書の表紙がネット上で話題になっています。列車が並んだ写真にしか見えませんが、実は「手描きの絵」なのです

日本信号の報告書の表紙に使われた福島尚さんの絵画
日本信号の報告書の表紙に使われた福島尚さんの絵画 出典: 日本信号提供

目次

 ある会社が公開した株主向けの報告書がネット上で話題になっています。といっても、注目されているのは内容ではなく「表紙」。列車が並んだ写真にしか見えませんが、実は「手描きの絵」なのです。描いたのは埼玉県日高市に住む福島尚(ひさし)さん(46)。自閉症で人とのコミュニケーションが苦手ですが、大好きな鉄道の絵を得意としています。なぜ、報告書にこの絵を使うことになったのか? 福島さんや家族は話題になっていることをどう捉えているのか? それぞれ聞きました。

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「記憶だけを頼りに下書きなし」


 話題になっているのは、鉄道信号事業や交通情報システムなどを手がける「日本信号」が公開した第133期中間報告書です。

 表紙の絵のタイトルは「首都圏」。報告書の末尾には作者の福島さんの紹介が書かれています。

 「知的障害(自閉症)で、幼少期に鉄道に興味をもち、列車や信号機、踏切等、鉄道に関する絵を描きはじめた。一度見た風景を詳細に脳裏に焼き付けて克明に描く能力を有し、記憶だけを頼りに下書きなしで写真のように精緻な絵を描く。現在は、地元をはじめ全国の鉄道をテーマに独自の創作活動を展開している」

2014年12月の日本信号の報告書に使われた作品
2014年12月の日本信号の報告書に使われた作品 出典: 日本信号提供

ツイッターで拡散


 日本信号によると、年2回発行している株主向け報告書で、2014年から福島さんの絵を使用しており、今回で4作品目。

 授産施設の製品を株主総会のお土産として配るなど、障害者支援活動に取り組むなかで福島さんの絵を知り、「一人でも多くの方に見てもらいたい」と株主向け報告書に使うことになったそうです。

 これまでも株主から「絵とは思えないほどに細かい」といった驚きの声が上がっていたそうですが、今月発表した報告書の表紙はツイッターなどで一気に拡散。

 広報担当者は「今回のようにネットで大きく取り上げられることは初めてだったので、少々驚いています。当社の報告書をきっかけに、福島さんの絵を多くの方に知っていただける一助になっているのであれば幸いです」と話します。

2015年6月の日本信号の報告書に使われた作品
2015年6月の日本信号の報告書に使われた作品 出典: 日本信号提供

本人の思いは


 福島さんや家族は、話題になっていることをどう捉えているのか? 父親の清さん(73)は「本人は喜怒哀楽は弱いけど、絵がほめられてることを伝えるとニコニコしています。気持ちも落ち着くようです」と話します。

 幼児のころから言葉が遅れていたという尚さん。家に閉じこもってばかりいた3歳のころ、母親が漫画のように蒸気機関車の絵に目鼻をつけ、泣いたり困ったり、笑ったりする表情を描いては、尚さんに語りかけたそうです。

 尚さんはその絵を気に入り、何度も手を引っ張って絵を描いてほしいとせがみました。そのうち、自分でも機関車や信号機の絵を描き始め、小学生のころにはボール紙とセロハンテープで電車のクラフト作りに熱中したといいます。

父親の思いは


 絵画を習ったことはありませんが、蒸気機関車から新幹線まで、外観のデザインだけでなく細かな部品も記憶して、資料を見ずにフリーハンドで描き上げます。

 「記憶力は優れてるのかもしれませんが、雑誌などを何度も読んで列車に関することが頭の中に入ってるんです。天才ってわけじゃないんですよ」と清さん。

 尚さんが中学生のころ、清さんが一度だけ絵を取り上げたことがありました。クラフトも燃やし、就職のための実習に集中させようと思ったそうです。尚さんは暴れました。

 「親の焦りだったと思います。健常者と同じように育てなきゃと。障害を受け入れることができなかったんですね。今なら、誰だって不安や悩みは抱えてるって思えるけど。黒が灰色に、灰色が白になるように、ちょっとずつ変わってきました」

2014年12月の日本信号の報告書に使われた作品
2014年12月の日本信号の報告書に使われた作品 出典: 日本信号提供

地元で常設展も


 現在では市内のカフェに常設展があり、他県でも絵画展を開くなど、尚さんの作品への評価は広がっています。

 父親の清さんはどう思っているのか? こんな答えが返ってきました。

 「いきなり絵がかけるようになったんじゃなくて、年相応の絵を描き続けて今に至ります。継続は力なりです。話題になっていることについて、とりわけ私からお話しすることはありません。障害があろうがなかろうが、親として子どもを後押しするだけです」

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