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田辺誠一が新境地、偉人の名言にイラスト ゲーテ格言に「バブー」?
画伯こと田辺誠一さんが、偉人たちの名言に絵を描くという、斬新な本が生まれました。
ツイッターやLINEスタンプのゆるい絵が評判の「画伯」こと田辺誠一さんが、偉人たちの名言に絵を描くという、斬新な本が生まれました。名言を選んだのは、「夢をかなえるゾウ」「人生はもっとニャンとかなる!」で知られる水野敬也さんです。グラハム・ベルの名言に「ほげーっ」とパンダがオナラをし、ゲーテの言葉には「バブー!!」とおじいさんが叫ぶ。異色のコラボを成し遂げた2人に、制作秘話を聞きました。
水野敬也さんが選んだ名言に田辺誠一さんがイラストを描いた「偉人たちの最高の名言に田辺画伯が絵を描いた。」(朝日新聞出版)は、実用書のようで、画集のようでもある、不思議な一冊です。
偉人たちの最高の一言を紹介、それを田辺さんが絵で表現しています。田辺さんが描いた偉人の顔や、手書き文字による田辺さんの一言も付きます。
例えばゲーテ。「毎日を生きなさい。今日、自分の人生が始まったかのように。」という言葉には、布団から起きたおじいさんが「バブー!!」と元気よく叫んでいます。田辺さんの一言は「いつでも未来に向かってるんですね。ステキです!」。
ゆるーい絵が特徴の画伯ですが、制作の途中でイラストが上手になってしまい、担当編集者が焦る場面も。できあがった絵は水野さんが吟味し、泣く泣くボツになった作品も少なくなかったそうです。
実用書、自己啓発書の分野で数々のヒット作を生み出してきた水野敬也さん。画伯として揺るぎない存在となった田辺さん。2人の本にかけた思いを聞きました。
──お互い、一緒に仕事をしてみての印象は?
(田辺さん)
水野さんを古田新太さんだと思っていました(笑)。作家の方って普段、接する機会がないので……。前から本を読ませてもらっていて。ある意味、その通りの方でした。伝えたいことに対するエネルギーにあふれている。
あくまで、論理的に。そこに楽しいストーリーというシュガーコーティングをして、誰もが納得できる形で、提供している人です。
(水野さん)
田辺さんってストイックな方なんです。だからイラストは何点もあげてくれました。1枚だけ描いて「これで決まり」みたいだったら嫌だなあと思っていので、うれしかったです。良い作品にしたいという気持ちが伝わって、素晴らしい仕事ができました。
──手強かった名言はありましたか?
(田辺さん)
3分の2は手強かったですね。名言をそのまま書いても単なる情景描写になってしまうので。かみ砕いてかみ砕いて、絵としてどう表現すればいいのか、悩みました。
一瞬で面白くて、でも名言だとわかるもの。さらに絵を見ることで違う角度でメッセージを伝えられる。小学生、中学生に楽しんでもらいたいけど、大人もクスっとできる。それが基準になっているので、相当、考えましたね。
(水野さん)
まず名言。そこから絵を頼むという、ある意味むちゃぶりだったんです。絵が描きやすい名言というのもあるかもしれないけど、それではよくないと思った。まったく絵を考えずに、いい名言を選んで、お渡ししました。
だから田辺さん、大変だったと思います。一つの名言について5パターンくらい描いてもらったものもあります。
ソクラテスの名言につく絵は、かなり深いです。虹を見上げながら歩いている、その先には千円札が落ちている。6パターンくらい描いてもらいました。田辺さん、千円にするか、1万円か、10円かでも悩んでいましたけど。これ部屋に飾っておきたいくらいです。
(田辺さん)
千円を通り過ぎた方がいいのか、前の方に落ちているのがいいのか。いろいろ模索して。その辺は水野さんにジャッジしてもらいました。
──偉人の顔のイラストも不思議な魅力があります。
(田辺さん)
似顔絵は、使える写真などを元に、何となく自分の印象で描きましたね。だから、そうですね。モデルが誰か、言われなかったらわかんないのもありますよ。自分でも。
(水野さん)
今回の本。画伯のほんわかとした絵と、歴史上の偉人という、組み合わせが大事でした。ぼくの名前よりも、偉人と田辺さんとのマッチが見どころ。だから偉人の顔の絵は欠かせなかった。この企画で大事にしたところです。
──ネットで検索すれば名言自体、読めてしまうものもあります。その中で本にする意味とは?
(水野さん)
ネットでも、今まで出版されている名言集でも、悩んでいる人がぱっと見て使えるものが、あまりないと思ったんです。それをまず集めるというのが重要だった。ここにあるのは、どの状況でも見たとしても、自分の中に残っていく名言なんです。そこに田辺さんの絵が入ったことで、オンリーワンになった。
──「画伯」がいつもツイッターに投稿している自由な画風との違いは?
(田辺さん)
今回、お題があって、そのお題をどうクリアしていくか、というやりがいはありましたね。ボツになったら、理由があるんだろうなと思うし。もしかしたら、自分の中でも、ある部分に到達していない部分があったんじゃないかって。ふっと舞い降りる瞬間、そういうのがないというか。
だから、お題をクリアしていくのが楽しかったですよ。よりよいものを目指す気持ちは、演技と同じかもしれないですね。
──数々のヒット作を出してきた水野さんにとって、実用書の意義とは?
(水野さん)
実用書って、好きな人は好き、でも買わない人は買わない。それではもったいない。僕自身、学生時代に恋愛マニュアル本を買ったけど、恥ずかしいから本棚の奥にしまったという経験があるんです。二層式の本棚の後ろに突っ込んで、前の方にはニーチェとかを置いていた。
でも、実用書ってけっこう大事で、その知識があるだけで、人生とか変わったりするんですよね。伝えたいけど、伝えられらない。実用書は、それを課題として抱えてきた。ぼくは、それをどうクリアするかを考えてきたので。だから色んな形があるなって思うんです。
──絶妙なコンビですが、次回作の計画は?
(水野さん)
次は、子どもたちが名言を読んで絵を描いて。それを画伯が監修する。そんなのも面白いんじゃないかなと思っています。
(田辺さん)
子どもってめちゃくちゃ変なこと考えていますから。それで一冊作れるんじゃないすか。ボクがそれを「清書」してもいいですよね。
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