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天津爆発、各地で工場反対デモ 旗印は「PX」 ネットで呼びかけ
中国・天津市で起きた爆発事故。現場は危険化学物質を貯蔵する倉庫だったことから、中国では同じような施設に対する反対運動が起きています。
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中国・天津市で起きた爆発事故。現場は危険化学物質を貯蔵する倉庫だったことから、中国では同じような施設に対する反対運動が起きています。
中国・天津市で8月12日深夜に起きた爆発事故。死者は100人を超える大惨事になりました。現場は危険化学物質を貯蔵する倉庫だったことから、同じような施設に対する反対運動が起きています。工場建設の計画に対し、ネット上でデモを呼びかける事態に。浙江省嘉興市では、中止になった計画も出ています。
8月11日の『嘉興日報』に「嘉興市に10万トン規模のハイレベルな石油製品加工プロジェクト建設」の公告が掲載されました。翌日、天津の事故が起きたことで、嘉興市のプロジェクトへの注目が高まり、反対の声も大きくなりました。
中国版ツイッターの微博(Weibo)や、中国版LINEの微信(WeChat)では反対意見が多数投稿されました。ネット上では一時、PX関連の工場ではないかという誤った情報が紛れ込んだこともあり、石油製品の加工工場と流通センターであることが判明した後も、「断固反対しよう」との声が相次ぎました。
「金山銀山(工場)よりも、緑を返せ」
「上の世代は、(化学汚染)企業を阻止できなかった。私たちは、次の世代のためにも、阻止しなければならない」
「生活環境と次の世代のためにも、断固反対します。嘉興人民、団結しよう」
「当局に電話をかけよう。反対の声を届けよう」
嘉興市政府や近隣の県政府の前では、住民による反対デモが繰り広げられました。その結果、15日に、最終的に市政府がプロジェクトの許可を取りやめる事態になりました。
反対運動のキーワードになっているのがPXです。PX(Para-Xylene)はパラキシレンのことで、化学製品の原料の一つですが、毒性があるため、各地でPX工場建設の反対運動が起きています。
PX工場建設の反対運動は、2007年のアモイでもありました。前年にアモイ市での工場の建設が許可され、11月に着工、2008年に生産が始まる予定でした。しかし、PXの毒性に対する不安が高まります。当時はまだ微博もWeChatもなかった時代ですが、携帯のSMS(ショート・メッセージ)やウェブ上の掲示板を使いして、「散歩」(デモ)を呼びかけるメッセージが出回りました。
メッセージはPXの危険性を次のように訴えました。
「猛毒を持つこの化学工業製品が生産されれば、アモイ全島に原子爆弾を投下したと同じことになります。子孫のためにも頑張らないと・・・このメッセージを見たら、アモイ市のあらゆる知り合いへ拡散してください」。
その後、2011年大連市、2012年寧波市、2013年に昆明市と成都市などで、市民によるPX関連施設の建設に反対する運動がありました。
反対運動の高まりによって、寧波市や昆明市などでは工場建設や生産拡張などの計画が中止に追い込まれました。
中国では、これまでも何度か、化学物質関連工場で爆発事故が起きています。アモイで建設が中止になった工場は、同じ福建省の古雷鎮に移設されましたが、2013年7月と 2015年4月の2回にわたり爆発事故が起こりました。
また、2010年7月に、大連市でも石油の輸送管の爆発事故が起こりました。これらの事故では、人的な被害はありませんでしたが、大気汚染や原油の流出による海の汚染が大きな問題になりました。
多くの死傷者が出たの天津での爆発事故によって、中国での化学工場の建設に対する視線は、一層、厳しくなりそうです。
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