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今井雅之さん死去 舞台で伝え続けた特攻隊 「クレージーではない」
今井雅之さんが亡くなりました。代表作は特攻隊員をテーマにした「THE WINDS OF GOD」。今井さんが伝えたかったこととは。
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今井雅之さんが亡くなりました。代表作は特攻隊員をテーマにした「THE WINDS OF GOD」。今井さんが伝えたかったこととは。
がんを公表していた今井雅之さんが5月28日、亡くなりました。54歳でした。代表作は、売れない漫才師がタイムスリップして特攻隊員になる舞台「THE WINDS OF GOD」。スポンサー集めに苦労し、時に「好戦的」と批判もされながらも、死の直前まで公演を続けました。今井さんが「THE WINDS OF GOD」で伝えたかったこととは何だったのでしょうか。
今井さんの父親は旧警察予備隊時代からの自衛官でした。今井さん自身も陸上自衛隊で74式戦車を操縦していたという経歴を持ちます。俳優志望でしたが、父親から「20歳まで自衛隊の任務が務まったら認める」と言われ入隊。約束通り1981年に陸自をやめ俳優養成所に入り、役者の道に進みます。
今井さんは最初、「国や天皇のために身をささげたスーパーマン」として特攻隊員を描こうとしました。しかし、東京・神田の古本屋に通い、生き残った隊員の話を聞くうち、「違う」と思い直しました。「ただ、愛する親きょうだいを守りたかっただけなんだ」。その驚きを台本にしました。
1988年に初演を成功させ、その後、各地で公演を続けます。
舞台は漫才師がタイムスリップするところから始まります。
《売れない漫才師の2人が交通事故に遭い、気が付くと、1945年8月1日の鹿児島の特攻基地にタイムスリップしていた。死に急ぐ特攻隊員たちに反発する2人だが、「家族を守るには仕方がない」「生まれた時代を恨むしかない」と話す隊員と心が通じ合う。終戦前日の早朝、自らも戦闘機で飛び立つ――》
今井さんにとって特攻とは何だったのか。2005年6月10日、戦後60年を振り返る朝日新聞の記事では、次のように答えています。
「国による非人道的作戦だが、隊員はクレージーではなかった。そんな普通の人間に特攻をさせた戦争こそが狂気なんだ」。
舞台「THE WINDS OF GOD」は1995年に映画化、1998、1999年にニューヨーク・オフブロードウェー公演。話題を集めながら「神風」「特攻隊」を取り上げることへの抵抗も強く感じ、2001年で終演しました。
しかし、米同時多発テロを機に再演を決意。2005年から全国各地で公演を続けていました。病魔に冒されながらの出演は2015年4月まで続きました。降板を告げるブログには、こんな言葉がつづられていました。
「今は治療を第一に、絶対に元気になり舞台に戻って参りたいと思っております! WINDSは自分の魂です」