IT・科学
世界初ネットいじめ被害者 モニカ・ルインスキーさんが語る「恥」
ビル・クリントン元大統領とのスキャンダルから17年。世界で初めての「ネットいじめ」の被害者と言われるモニカ・ルインスキーさんが、自身の経験について語りました。
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ビル・クリントン元大統領とのスキャンダルから17年。世界で初めての「ネットいじめ」の被害者と言われるモニカ・ルインスキーさんが、自身の経験について語りました。
1998年にアメリカのビル・クリントン元大統領との不倫が発覚したモニカ・ルインスキーさんは、世界で初めて「ネットいじめ」の被害者になった人物です。そんなモニカさんが長い沈黙を破り2015年3月、トークライブTEDに登場。現代の「ネットいじめ」について警鐘を鳴らしました。
モニカさんは、会場に向かってこう切り出しました。
「今の40代の人たちの中で22歳に戻りたくないのは、きっとわたしくらいだと思います」
そして、「22歳のとき、一度も間違ったことや後悔したことをしたことがない人はいますか?」と聴衆に問いかけると、誰も手を挙げませんでした。
「わたしは上司と恋に落ちました。みなさんの中にもそんな経験をしたことがある人はいると思いますが、その上司はアメリカの大統領ではないでしょう」
大統領との不倫というニュースは、日本でも大きく報道されました。モニカさんには、新聞やテレビ、雑誌、あらゆるメディアが世界中から殺到しました。
モニカさんは、当時を振り返り「わたしを見たことがある人はたくさんいましたが、本当にわたしのことを知っている人は少数でした」と語りました。
ニュースはインターネット上にも拡散しました。
「その時の屈辱は耐えがたいものでした」
モニカさんが批判を浴び続けていた時、力になったのは両親だったそうです。
「寝るときもシャワーを浴びるときも両親は片時もそばを離れず、(ゲイを理由にネットいじめにあい自殺したアメリカの大学生タイラー・クレメンテさんのように)批判や侮辱されることによって、娘が死んでしまうのではないかと恐れていました」
モニカさんが不倫騒動の渦中にあった1998年は、インターネットが急速に浸透し始めた時期でした。
「わたしがネットを通した批判にあったとき、まだそれに名前はありませんでしたが、今は『Cyber bullying (ネットいじめ)』と呼ばれています」
モニカさんは、まさに世界初の「ネットいじめ」の被害者といえる存在でした。
「イギリスのNGOの統計によると、2012年から2013年の間、ネットいじめに関する相談が87%増えたそうです。オランダでは、ネットいじめが、直接のいじめより自殺を助長するという傾向があるという結果が出ました。恥をかかされることは、喜びや怒りよりも強く感じる感情であるという報告もあります」と訴えました。
LINEなど、様々なコミュニケーションが生まれている現代。モニカさんは、ネットいじめについて、こう呼びかけました。
「気持ちに寄り添ってもらうことが大切で、とても支えになります。共感は屈辱を上回る影響力があります」
「侮辱が商品になり、恥が産業化しました。批判的であればあるほど(ネット上で)クリックされ、クリック数が多いほど利益を得る人がいます」
「同性婚を認めるようになると、平等性をみんなが求めるようになり、持続可能性を訴えるとみんながリサイクルするようになりました。社会的な侮辱に対しても同じで、必要なのは文化の革命です」
クリック数が、利益に直結するネットの世界についても言及しました。
「ゴシップをクリックすればするほど、その人たちの生活に対する感覚が麻痺し、その感覚が麻痺すればするほど、さらにクリックしてしまいます。その間、誰かが利益を得て、誰かが苦しんでいるのです。何かをクリックするとき、わたしたちはなにかを選択しています」。
さらに、そうした悪循環に、自分たちも加担しかねないことを指摘。
「『公的な恥』がわたしたちの文化に浸透し、わたしたちがそれを認めるほど、ネットいじめ、『荒らし』、ハッキング、そしてオンラインハラスメントが生まれてしまいます。なぜなら、それらの根底には『恥』があるからです。こういう悪循環はわたしたちが作り上げたのです」
「ネット上では(批判しあうことより)共感しあいながら会話し、ニュースを読み、クリックするべきです。」
10年以上の沈黙を破ってなぜ今、公の場に出ることにしたのか。よく聞かれるという問いについては、こう答えました。
「過去を避けて屈辱の人生を生きていくのをやめようと思ったからです。自分の人生の語り手は自分でしようと考えました」
「あなたたちの前にいるのは10年もの間沈黙いていた女です。それはもちろん変わりましたが、つい最近のことです」