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通算1千敗 内藤九段に見習いたい最強老人力 棋士生活56年の境地
将棋の内藤國雄九段が、通算1千敗を喫しました。実は勝つのと同じくらい難しいのが敗戦記録。「負けても満足」という境地に達した内藤九段にしかできない偉業です。
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将棋の内藤國雄九段が、通算1千敗を喫しました。実は勝つのと同じくらい難しいのが敗戦記録。「負けても満足」という境地に達した内藤九段にしかできない偉業です。
将棋の内藤國雄九段(75)が12日、最後の公式戦に敗れ、歴代3人目の通算1千敗を喫しました。現役を続けていなければ対局ができない棋士。実は連勝と同じくらい難しいのが敗戦記録です。現役生活56年の内藤九段は、「負けても満足」という境地に達した、老人力の塊のような勝負師でした。
先日、橋本崇載八段が「二歩」の反則を犯して話題になりました。プロの対局は、歴戦の棋士でも平静を保つのは難しいもの。
56年間現役の内藤九段は、ミスした時の心得について、こう語っています。「ミスそのものもさることながらミスした時の気持ちの揺れが、勝負にとっては大きなマイナスなんです」。
そして、経験に裏打ちされた持論として「だから勝負の最中に一番してはならないのは、今指した手を後悔すること」と述べています。
1千敗と聞くと、弱いというイメージがありますが、実は将棋の世界では、そうとは言えません。なぜなら、負けが続くと、参加資格自体を失ってしまうからです。現役の期間が長くなければ、負け続けることもできないのです。
そんな内藤九段ですが、今年1月に引退の意向であることが明らかになっています。「ひざと腰が痛く、長時間の対局に耐えられなくなった」とし、3月に正式発表します。
プロ棋士は、イベントなどでアマチュアのファンと対戦することがあります。飛車落ちや角落ちなど、ハンデをつけているとはいえ、時々、プロが負けることもあります。そんな時、内藤九段は「心から喜べるようになった」と明かしています。
「ファンを楽しませるのも、プロの仕事のうちだからね」と、その境地について語っています。
将棋は、敗者が「負けました」と認めることで勝敗が決まります。内藤九段は「勝負の世界にいる者にとって一番の健康法は勝つこと。でも勝とうとすることは寿命を縮めると思う」と語っています。
最後の5分間は「勝つか負けるかわからないし、このまま倒れるんじゃないかと思う」という苦しさだと告白しています
そんな内藤九段、実は演歌歌手でもあります。1976年に「おゆき」で歌手デビュー。160万枚のヒットになりました。
将棋ファンからは「歌なんかやめてしまえ」という声もあったそうですが、内藤九段は「別の世界を見て、自分にとってはすべてだと思っていた将棋が、実は勝負の世界の中のほんの一部でしかないことに気づいたんです」と振り返っています。
「本職の成績が悪くなって収入も減ったんですよ。あれだけのことは、二度とやる気はないけど、やらしてもらって良かったなあと思ってる」とも。
2008年10月6日の朝日新聞の記事「(エンタメ研究所)内藤國雄の世界」では、将棋界について「技術を磨くだけで良いのだろうか?」と、内藤九段にしか言えないような苦言を口にしています。
「羽生善治君も佐藤康光君も、定跡にとらわれず、びっくりするような手を指す。ただし、あまりにも高度な技術すぎて、研究論文の発表みたい。私でさえ難しいのだから、一般のファンはどうだろう。これで良いのかな?」。