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行定勲監督、国内で断られ中国との合作に 「日本では大物釣れない」
行定勲監督の最新作は、日本の製作会社に難色を示され中国との合作になりました。日本を代表する監督がなぜ? 背景には「わかりやすさ」を求める日本映画の現状があるようです。
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行定勲監督の最新作は、日本の製作会社に難色を示され中国との合作になりました。日本を代表する監督がなぜ? 背景には「わかりやすさ」を求める日本映画の現状があるようです。
「GO」「世界の中心で、愛をさけぶ」などのヒット映画で知られる行定勲監督の最新作は、日本の製作会社に難色を示され中国との合作になりました。日本を代表する監督がなぜ? 背景には「わかりやすさ」を求める日本映画の現状があるようです。行定監督は「今の日本映画の作り方では大物は釣れない」と話しています。
熊本県生まれの行定監督は、98年に初作品を手がけました。2002年、初のメジャー作品となった5本目の「GO」が大ヒット。キネマ旬報主要各賞を総なめにしました。当時のインタビューでは「うれしいのは記録に残ること。公開が終わっても消えずに、永遠のものになる気がして」と語っています。
「GO」は在日コリアンの高校生を窪塚洋介さんが熱演しました。日本の高校に進んだ主人公と、日本の少女との恋に落ちます。それまで自分には関係ないと思っていた国籍のことを、なぜか彼女には言い出せない。そんな心情を描いた青春映画の傑作です。
この時22歳だった窪塚さんは「映画の中の『広い世界を見るのだ』というセリフがとても気にいっていて、それはたくさんの価値観に触れて、その中から自分の気持ちのいい価値観をつかみとれということ。この作品と出あって、自分って何だろう、自分の生きている世界って何だろう、そんなことを真剣に考えるきっかけになりました」と話していました。
行定監督はその後も、「世界の中心で、愛をさけぶ」「北の零年」など、ヒットを飛ばします。2011年には、携帯向けのドラマ「パーティーは終わった」を手がけました。ドラマには、俳優の成宮寛貴さん、高岡蒼甫さん、林遣都さん、小出恵介さん、仲里依紗さんらが出演しました。
2014年には芦田愛菜さん主演の「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」を製作。芦田さんについて行定監督は「台本を読み込み自分なりに考えてせりふを言う。根っからの女優ですよね」と絶賛しています。
そんな行定監督の最新作「真夜中の五分前」は中国との合作です。ある時姉妹が事故に遭い、1人が死亡。生き残ったのは姉か妹か。答えが観客に委ねられるというストーリーです。そんな筋書きに、日本の製作会社は「今の観客には分からない」と難色を示したそうです。
「製作者側が明快な物語を求める。観客を馬鹿にしているんです」と行定監督。結局、約4千スクリーンという、日本の総スクリーン3300よりも多い中国の映画館で先行上映されました。
行定監督は、今の日本映画の現状を次のように見ています。「魚群探知機で魚がいると分かった場所にしか餌を落とさない。今の日本映画の作り方では大物は釣れない。一握りの監督しか飯を食えない時代が来た」
日本映画の製作本数は年間600本を超え、最盛期だった1950~60年代よりも多くなっていますが、ほとんどがビデオカメラのデジタル化で実現した超低予算映画。行定監督の最新作が中国との合作にならざるを得なかったのには、そんな実情があるようです。