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IT・科学

川上量生会長「ニコ動、全部つくりなおす」 後編

カドカワと生み出す新たなプラットフォーム、新サービス「ニコキャス」、コンテンツの未来とは。KADOKAWA・DWANGOの川上量生会長へのインタビュー後編。

川上量生会長=古田大輔撮影
川上量生会長=古田大輔撮影 出典: 朝日新聞

目次

 KADOKAWA・DWANGOの川上量生会長のロングインタビュー後編。ニコ動はユーザーが自由に創作し、交流する場として発展した。そこから川上会長が学んだこととは――。

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KADOKAWA・DWANGO川上会長インタビュー

「ユーザー任せじゃ駄目と思った」

 ――ニコニコは、プロのコンテンツの二次利用やクリエーターの自由な創作の場として発展してきました。プロを大切にしようという考えはどうやって生まれてきたんでしょう。

 その質問は難しい。(顔を手で覆い考え込む)わりと正直に答えると、音楽に関しては、ニコニコがはやったら、正直、これ日本の音楽産業がつぶれる可能性もあるなと思いました。そのときの筆頭株主はエイベックスで、道義的にやっちゃいけない。そうならないようにしようと思ったんです。UGC(ユーザーが自らコンテンツを作ることや、その仕組み)のコンテンツによってプロのコンテンツがつぶれる世界、そうはならないように誘導しようとまず思いました。ユーザーだけに任せたコンテンツはすごく偏るんです。受けそうなコンテンツに画一化してくる。ユーザーにだけ任せるのはだめだと思ったんですよね。

 いま起こっている現象は、おそらく芸能界や音楽業界が誕生する過程で起こっていることが全部起きていると思っています。たとえば権利の問題。強すぎる権利があって、JASRACでもないと困るよな、とか、事務所がちゃんとタレントを管理しないとやってられないよな、とか。30年前、50年前とか日本のコンテンツ業界でたぶん起こってたことなんですよね。みんな忘れてるけど(笑)。

 それがいまニコニコで起こってるんだなと。なので、僕は同じことが起こればいいと考えたんです。ネットに時代に合わせてそのなかで新しい要素を付加していけばいい、と。ユーザー自身のコンテンツのレベルをあげていくような方向だったり、お金を払ったり、そういう方向にしました。ニコ動のアーティストをちゃんと育ててくれる事務所のひとと話したりとか。ちゃんとテレビとかで仕事ができるような人に育ててもらう。ちゃんと儲かるように。

 日本ネットクリエイター協会をつくって、著作権管理団体に作品を登録する支援をしたり、放送二次使用料の徴収代行をしたりしています。ネットクリエーターでも健康保険に入れるようにしたりとか。地道にやってます(笑)。インフラ面から、ネットでものをつくる、それでちゃんと生活が成り立っていけるような関係にしていこうとやっています。

 ――プロと一般ユーザーの関係がシームレスにつながっているようなプラットフォームということでしょうか。

 そうなればいい。いずれそうなりますから。だんだん要求レベルが上がって競争も進んでいくので。

プロを大切にする発想はどこから。質問にしばし黙考する川上会長
プロを大切にする発想はどこから。質問にしばし黙考する川上会長

「単純に一緒にすることない」

 ――出版社をつなぐ役割を担っていくんでしょうか。

 そこはないですね。ただ、KADOKAWAと一緒になっていくことによって、一歩信用される可能性は増えたと思うんですよね。

 ――会社としてでしょうか。

 会社というよりは、ITの礎(いしずえ)的なものとして、業界から信用してもらえる可能性は生まれたと思うんです。みんな疑り深い人たちだから、時間かけて信じられるようになったら一緒にやりましょう、という感じで僕は良いと思っているんです。

 ――「週刊文春デジタル」のような取り組みが広がっていく可能性もありますか。

 そうですね、ドワンゴという会社も着メロからずっとコンテンツ業界とは付き合っているんですよ。コンテンツ業界の難しさは重々承知していますので、基本一緒にやろうというようなことを外部の人が言ってまとまる業界ではないですから。すべてのコンテンツ業界が(笑)。成立するかどうかは、その中での微妙な人間関係で決まったりしますよね。それが僕らだけの努力ではできないやつですから、そういうふうな感じにみんながなれば、はい。

 ――DWANGOにはニコニコ静画、KADOKAWAにもブックウォーカーがありますね。一緒にするという話はありますか。

 当然それはあるでしょうけど、やるとしても、新しいのを作るでしょうね。僕ら開発会社でもあるので、二つを一つにするのって新しいもの作ると同じぐらいカロリー(熱量)がかかるんですよね。新しいもの作って一緒にするんだったらまだ意味はあるんですが、単純に一緒にするということはしません。

niconico
niconico

「もっと匿名性の世界を」

 ――話は変わりますが、匿名性の世界をもっと作りたいとおっしゃっていますね。どういうイメージですか。

 作るというよりは、まず匿名性が必要なのは、現実世界で落ちこぼれた人がやり直すためには、匿名性のプラットフォームが必要なんですよね。昔だったら2チャンネルだったし、今だったらツイッターですよね。そういうの必要なんですよ。その中で匿名性の特徴を持ちつつも、新しいコミュニケーションのプラットフォームはずっと移っているんです。ただ、ツイッター以降は新しいものが出ていないんですよね。そろそろ、革新的なアーキテクチャーができるんじゃないかと僕は思っていますけどね。

 ――具体的に考えているものはありますか。

 いくつかありますよ。ニコ動自身が匿名性メディアの一つの核になっていますから、ネットの中でも、要するにニコ動の新しいバージョンとして、世の中に問うんだと思いますね

 ――それは近々発表すると言われている新サービスの「ニコキャス」もそうですか。

 それも含めてです。

 ――ニコキャス以外もですか?

 将来的に、ニコニコ動画自体は全部作り直すことも検討しています。いろいろ考えているところですね。

 ――ニコキャスは年内には出ますか。
 出ますよ、アップルさんさえ審査を通してくれれば。そろそろ通るんじゃないですかね(笑)。

27日のシンポジウムに登壇

 川上会長は27日、グローバルな時代の知的財産戦略をテーマとした「IP2.0シンポジウム」(角川アスキー総合研究所主催)のパネル討論に登壇します。イベントの詳細や申し込みはこちら。

KADOKAWA・DWANGO川上会長インタビュー

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