――選択的夫婦別姓がないから、法律婚をしたいのにできなくて、事実婚を選択している「別姓未婚」の人が約60万人いると言われています。そのことについてどう思いますか?
名前は自分のアイデンティティと密接に関わっているものなので、姓を変えたくないから結婚しないという人が増えているのは、世の中の流れとして当然だと感じます。
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今、いろいろな自治体で婚活を推奨していますよね。婚姻数と出生数にはある程度相関関係があるから、政府や自治体は結婚をさせようとしているのでしょう。
でも、夫婦別姓を選べるようにしないまま、結婚を推奨するのは違うんじゃないかなと思っています。
それに、結婚しないでずっと一人で生きる自由もあります。そういったさまざまな選択肢がある世の中のほうが私はいいと思うんです。
――法律婚と事実婚はどういうところが違いますか?
法律婚の場合は、いろいろな権利が自動的に発生します。仮に法律婚をした翌日にどちらかが交通事故に遭って亡くなったとしても、残された片方の当事者には配偶者としての権利があり、遺産を相続できます。
しかし、事実婚の場合にはそれがありません。法律婚に紐づく相続権の有無は、結構大きな違いだと思います。
――残されたパートナーの家族と相続で争うことになったとき、事実婚だとかなり不利になるんですね。
相続に関しては、そう言えると思います。
ただ、現在日本では同性婚が認められていないので、同性カップルも相続権がなく、同じ状況に置かれていることは、もっと知られてほしいですね。
男女のカップルだったら、法律婚をするかしないか選択できますが、同性カップルはそもそも選択すらできないわけですから。
――同性婚も認められる社会になったほうがいいし、事実婚ももう少し権利を拡充していくといい、ということでしょうか?
事実婚の権利を拡充して選択肢が増えることはいいのですが、難しいんですよね。
同性婚の結婚について、現在の法律婚と違う制度を作ってよいのか、仮に作るとして異性カップルと同性カップルで違う権利設定にするのは差別ではないか、といった議論も起こりえるので、事実婚にどこまで法的効力を与えるのかは難しい問題だと思います。