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ファッション大好き芸人、アパレルでバイト 得意のSNS投稿も駆使
「てるてる娘」まるちゃん 繁忙期の師走を前に
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「てるてる娘」まるちゃん 繁忙期の師走を前に
安倍季実子 ライター
共同編集記者TikTokで毎日投稿を続け、1万人を超えるフォロワーを持つ女性コンビ「てるてる娘」のボケ担当まるちゃんは、バッグブランドでバイトをしています。人と接するのが苦手だったそうですが、大好きなファッションに関わりたいと飛び込んだアパレルの世界。そこで待っていたのは、芸人としての生きる道にもつながる発見でした。(ライター・安倍季実子)
TikTokに「女子あるある動画」を毎日投稿し、じわじわと人気を集めているお笑いコンビ「てるてる娘」。ボケのまるちゃんは、芸人活動と並行してニューヨークのバッグブランドManhattan Portage(マンハッタンポーテージ)でアルバイトをしています。
もともとは人と接するのがあまり得意ではなく、「どちらかというと、作業を淡々とこなす方が向いている」と感じていました。
ただ、昔からファッションが好きだったこともあり、2019年に新店舗のオープニングスタッフとしてバイトを始めました。
「すでにできあがっているグループに入るのは気が引けるけど、オープニングならみんなが初対面なので、仲良くなりやすいかなと思って選びました」
現在は新宿ルミネエスト店で、週4日働いています。
「立地がよく、バイト終わりにすぐライブハウスへ行けます。一緒に働くスタッフは、私の芸人活動にも理解があって、急なオーディションが入っても融通を利かせてくれるので、本当に助かっています」
現在は接客だけでなく、ショップのSNS担当や新人教育も任されています。当初は心配していた接客も、今ではすっかり板につきました。
「普段どんなバッグを使っているのか」「どこに持って行きたいのか」「何を入れたいのか」を尋ねて、ぴったりなバッグを探します。
「すぐに見つかることもあれば、1時間くらいお話ししながら探っていくこともあります」と語ります。
今でも忘れられないのは以前、オープニングスタッフで働いていた店舗での出来事です。
「オープン初日にいらっしゃったお客様と、記念バッグのかわいさにすごく盛り上がったんです。購入された際に、『いいお買い物ができました。ありがとうございます』と言われたのが本当にうれしくて。これが接客のやりがいなんだって実感しました」
6年間のバイトの中で、仲のいいお客さんも増え、常連さんの中には差し入れをしてくれる人や、芸人活動を応援してくれる人もいるといいます。
「ほかの店舗に行った際に『ルミネには芸人のスタッフがいる』と、私のことを広めてくれたお客様もいます。バイト先の同僚が単独ライブを見に来てくれることもあります。どちらもすごく励みになっています」
接客の面白さにハマったまるちゃんは、昨年、ルミネのショップスタッフの接客スキルを認定するコンテスト「ルミネスト」に初参加しました。
「おもてなしのスペシャリスト」を認定する制度で、接客のロールプレイングで審査します。
「最初は、芸人でそんな賞を持ってたら少し面白いかなという軽い気持ちでエントリーしたんですが、シルバーを持つ先輩と、営業後も夜まで練習をするうちに本気になっていきました」
その結果、初挑戦ながらブロンズ賞を受賞しました。
残念ながら、今年は動画審査を通りませんでしたが、「来年こそは」と、さらなる接客スキル磨きに励んでいます。
マンハッタンポーテージ自体はセールをしませんが、館内のほかの店舗がセールを始めると来店客が増えるため、12月から年始にかけては忙しくなります。
「年末年始は旅行に行くお客様も多いので、それに向けてバッグを購入する方が増えます。それに、うちの店舗は免税カウンターの横にあるので、お会計の前に立ち寄るインバウンドのお客様も多いんです」
なかでも特に忙しいのが、年末年始です。建物が休みになる1月1日だけを除いて、ほぼ毎日出勤します。
「芸人の仕事が入らない限りは、今年も12月31日まで働いて、2日からバイトはじめです。新春は福袋もあるんで、朝から混雑するでしょうね」と笑います。
接客のほかに大事な仕事がSNS担当です。以前から、自分のインスタでリールを作っていた経験が生きているといいます。
「普段からインスタやTikTokで発信しているので、ほかのスタッフより詳しい方だと思います。撮影・編集だけでなく、たまに私自身がモデルになることもあります」
一方、コンビ「てるてる娘」のTikTokでは、「女子あるある動画」を毎日投稿しています。約1年前にコンビのアカウントを開設してから、毎日投稿するうちにじわじわと人気を集め、今ではフォロワー1万人を超えています。
「一度に10本近く撮りだめすることもありますが、慣れればそんなには苦じゃないです。1日で14本撮ったこともあります」
個人のインスタでは、ファッションやコーディネートの投稿を続け、アパレルブランドからPR案件を任されることもあるそうです。
ファッション好きから始まったバイトとSNS。
まるちゃんは「接客中にネタのヒントが浮かぶこともありますが、ちゃんとネタになることはほぼないです。それよりも、アパレルで働いていること自体が、私の個性になっていると思います」と分析します。
こうした日々の経験を重ねる中で、芸人として大切にしたいことも見えてきました。
「これまでに、芸人を辞めていく仲間をたくさん見てきました。忙しさやプレッシャーなど、理由は様々ですが、私はそうはなりたくありません。もちろん賞レースでいい結果を残したい気持ちもありますが、それよりもさえぴーと漫才を続けていくことの方が大切なんです」と語ります。
「私はファッション、さえぴーはカメラなど、それぞれ好きなことがあります。そのジャンルで知ってもらって、そこからネタを見てもらう。この流れの方が、私たちらしい気がします」
ファッション、SNS、芸人活動といった好きなことを続けながら、自分たちのペースで夢をかなえていきたいと考えているそうです。
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