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不登校でも、オンライン学習で出席扱い 母の訴え「生きた制度に」

出席扱いの申請を断られた親子。11月に行われた会見では「現場が安心して運用できるような、明確なガイドラインや実例が必要だ」と訴えました=写真は「すららネット」提供
出席扱いの申請を断られた親子。11月に行われた会見では「現場が安心して運用できるような、明確なガイドラインや実例が必要だ」と訴えました=写真は「すららネット」提供

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不登校の子どもが、オンライン教材などを使い学習したときに、一定の条件を満たせば学校側はそれを出席扱いとできます。しかし、そのことを不登校中の子どもの6割が「知らない」と答え、不登校の子どもがいる保護者の約9割は、学校からの説明や提案が「なかった」とする調査が発表されました。仕組みを知っていて学校に利用申請をしたものの、断られたという生徒は「勉強が滞らない仕組みを作ってほしい」と訴えます。

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利用者は増加傾向

文部科学省の通知では、義務教育段階の不登校の児童生徒が、学校外の民間施設や公的機関でICTなどを活用した学習をした場合、校長が指導要録上の出席扱いとすることができると記されています。また、その成果は評価に反映することもできます。

不登校の小中学生は、35万3970人(2024年度)にのぼり、この仕組みを使っている子どもたちも、徐々に増えています。2014年度には249人だった利用者は、昨年度1万3261人にまで増えています。

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仕組みの提案や説明、親の9割「ない」

オンライン学習サービスを提供する「すららネット」などは、ICTを使った学習が出席扱いになることについての認知度を調べました。
不登校の小中学生と親を対象に、8月から10月までの間に、計400人から回答を集めました。

その結果、ICTを活用した学習が出席扱いになることを「知らない」と答えた子どもは63.5%で、「知っている」と答えた36.5%を上回りました。親も、26.6%が「知らない」と答えました。

また、その仕組みについて学校から説明や提案があったかという問いに対し、「あった」と答えたのは子どもで12.8%、大人で11.1%でした。子どもは87.2%が、大人は88.9%が、「なかった」と答えました。

この仕組みを利用するには、利用者側からの申請が必要となりますが、申請をしても断られた人の存在も明らかになりました。断られた理由として最も多かったのが「学校に前例がない」、次に多かったのは「学校に出席扱いの制度がない」でした。

不登校の児童生徒は増加を続けています。写真はイメージです=Getty Images
不登校の児童生徒は増加を続けています。写真はイメージです=Getty Images

「本来結びつきたかった学校から認められる」

調査をした、すららネットの佐々木章太さん(子どもの発達支援室長)は、かつて出会った生徒との出会いを通じて「この仕組みの意味を考えさせられた」と振り返ります。

中学時代に不登校になった佐々木さんの生徒は、すららネットで学びを継続し、学校からも出席扱いとしてもらっていたそうです。その後、通信制高校進学後のテストで5教科ほぼ満点をとったといい、通学スタイルに復帰したそう。

佐々木さんは「学校という『本来結びつきたかったところ』から努力を認められたことで、自己肯定感の回復になったと思う」とし、「このような結果につながるなら、この仕組みを知ってもらう価値がある」と話します。

今回の調査結果については「不登校の子どもの6割が仕組みを知らないという数字は、インパクトがあった。まずは認知を広げることが大事」と話し、保護者や学校、自治体への説明を重ねていくと共に、文科省への制度改善を求めていくといいます。

「進路」保障する一つの手段

「勉強が滞らない仕組みを作ってほしい」と訴えるのは、出席扱いの利用申請をしたものの、断られた経験を持つ中学3年生の生徒。

中学2年生の頃から体調不良で登校が難しくなったという生徒は、「起立性調節障害と診断されたが、出席日数確保のために学校に行かないといけないと思うのはとても苦しかった」と振り返ります。

仕組みを使っての出席扱いを学校に提案しましたが「前例がない」と言われ「家でがんばって勉強をしても、学校が認めてくれないなら意味がない」と感じたといいます。「ICT学習の出席扱いが保障されていれば、もっと進路の選択肢が広がっていたかも知れない」と悔しさをにじませます。

生徒の母親は「現場の先生を責めたいわけではない。現場が安心して運用できるような、明確なガイドラインや実例が必要だと思っている。制度がかたちだけでなく、生きたものになるようにしてほしい」と訴えます。

結果分析の監修をした、名古屋大大学院の内田良教授(教育社会学)は、「不登校の当事者にとって、大きな悩みは『進路』です」とした上で、「学校からいったん離れた後、『将来どうしたら良いんだろう』と悩んだときに、この仕組みは追い風になる」と話します。
「学びが継続できるという意味でも非常に大事な効果になるし、進路を保障する一つの手段だと知ってもらいたい」

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