お金と仕事
来年の新社会人、就活費用10万円超 「学生時代の経験」諦める人も
経験格差、感じる人も…でも「勝手に決めつけないで」

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経験格差、感じる人も…でも「勝手に決めつけないで」
物価高の影響は学生の就職活動にも――。
就職活動や、その準備にかかる費用が増加傾向であることが、就職情報会社「マイナビ」の調査で明らかになりました。その費用の捻出のため、貯金の意思を持つ学生は8割。その影響を探りました。
就職情報会社「マイナビ」によると、就職活動およびその準備にかかった費用は、リモート面接なども多かったコロナ禍には2万円台から3万円台でしたが、24年卒は7万135円、25年卒は6万8839円。そして、10月に内定式を迎える26年卒業予定者は一気に跳ね上がり10万965円となっています。内訳をみると、特に交通費と宿泊費の増加が顕著に見られます。
地域別でも、すべてのエリアで費用が増加しており、マイナビキャリアリサーチラボの研究員・長谷川洋介さんは「この物価高の中、移動の負担は容易に想像できます」と話します。学生も早めから対策を検討しているそうです。
5月、27年卒の学生3千人を対象に、就職活動などの「キャリア形成活動」に向けた貯金をしているかを聞いた質問では、およそ8割の学生が、すでに貯金をしていたり、貯金する意思を示したといいます。
何に備えた貯金かを聞くと、最も多かったのは「交通費」の64.4%、次に多かったのは「アルバイトができない期間の生活費」の56%でした。
このような就活への事前の「備え」が必要になるほどの円安・物価高。
2026年卒業予定の学生のライフスタイル調査(1633人対象)で、「円安・物価高の影響」を聞いたところ、「交際(飲み会や外食・レジャー)を控えるようになった」(13.9%)、「部活動やサークルに関する出費を切り詰めた」(2.9%)、「海外留学をあきらめた」(2.8%)といった影響がでており、長谷川さんは「学生の間にしかできないことを諦める人もいる」と指摘します。
学生からは「アルバイトを月80時間以上しなければ生活できなかったので、その分、他の体験(留学やサークルなど)に時間を使えなかった」といった声も聞かれたそうです。
マイナビでは、それらを理由に、学生は就活において「格差」を感じている可能性を指摘。来年卒業予定の学生を対象に「就職活動中に『格差』を感じたこと」を聞くと、「学生時代の経験(学業や学業以外の経験格差)」を選択した人が最も多く35.3%に上ったといいます。
学生からの声には、「留学や海外在住経験への評価が異常なほど高いと感じた」「サークルや部活、留学のエピソードの方が印象がいい気がした」といったものがあり、長谷川さんは「企業受けのいい経験に偏りがあると考えている学生が多い」と指摘します。
就活にかかる費用のために、学生が何かを「諦めた」と感じないために、できることはあるのでしょうか。
就活費用の中でも、特に負担の大きい交通費や宿泊費を減らす手段として、オンラインでの面接などもあります。一方で、マイナビが実施した2026年卒の採用企業に向けた調査(2881回答)では、ウェブ面接を採り入れている企業は56.4%と半数を超えました。一方で、会場に足を運ぶ場合は交通費が必要になりますが、全員に最終面接の交通費を支給する企業は4割程度にとどまったといいます。
長谷川さんは、「課題解決のためには、企業や自治体、大学側からの、交通費や宿泊費の補助や、オンライン選考のさらなる拡充などの取り組みが必要」と提言します。
また、就活費用捻出のために「経験」を諦めたと感じている学生がいることについては、「アルバイトの経験も、伝え方によっては自己PRになる」とします。
「集団面接の場などで、他の学生の経験を華々しく感じ、負い目に感じたり萎縮したりすることもあると思う」と寄り添った上で、「企業側が評価するのは華々しいものだけじゃない。学生側はアルバイトなども含めてアピールし、そのアピールを企業側もくみ取り、お互いに意図を確認する選考の場になるといい」と話します。
「学生も、企業の採用基準を勝手に決めつけずに、就活にあたってもらえたらと思います」
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