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「彼女がほしいし家族がほしい」ダウン症のある俳優、吉田葵さんの夢
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僕も彼女がほしいし、家族がほしいと思いました――。ダウン症の当事者が初めて主演を務めたインド映画「アハーン」の上映後トークイベントで、俳優として活躍するダウン症の吉田葵さんが、自身と重ねて思いを語りました。(朝日新聞withnews・水野梓)
そんなとき、潔癖性のオジーと出会います。オジーはみんなに自分のルールを押しつけ、妻アヌにも愛想を尽かされてしまいます。しかし、アハーンとの関わりでふたりが互いに変わっていく……というお話です。
吉田さんは、共感するシーンばかりだったそうで、「日本中だけじゃなくて世界中のダウン症の人にも見てほしい」と語ります。
18歳の吉田さんは、ドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」でダウン症の弟役を演じて注目を集めました。
役所広司さん主演の映画「PERFECT DAYS」でもダウン症の少年を演じています。
吉田さんは、兄がチアリーディングをやっていて、さまざまなイベントやNHKの紅白歌合戦に出演するようすを見て、「僕もみんなの前に出て、見ている人に元気とハッピーを届けたいな」と考えるようになったそうです。
初めてオーディションに参加したのが、ドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」でした。
長期の撮影で大変だったのは、自身の体調管理だったと振り返ります。
朝日が昇る瞬間のシーンでは、「やり直しがきかない」と言われたそうです。「一瞬、緊張するな」と思ったそうですが、結局は平常心で撮影にのぞめたといいます。
吉田さんの夢は、「ハリウッドスターになること、カフェで接客をすること、そして、いつか結婚して家族をつくること」とのこと。自分の夢と、アハーンの夢が重なっていて感動したそうです。
特に感動したセリフは、アハーンの「自分の人生をつくりたい」というもの。
トークの中では、「僕も彼女がほしいし、家族がほしいです」と笑顔で語りながら、「自分も目標に向かって努力するのが大好きなので、これからも頑張りたい」と勇気づけられていました。
映画「アハーン」のニキル・ペールワーニー監督は、パンフレットに収録されたインタビュー(聞き手・配給担当の秋元麦踏さん)で、アブリ・ママジさんとどのようにコミュニケーションをとり、映画をつくってきたのか、詳細を語っています。
しかし、映画の中で「ダウン症」という単語は2~3回しか出てきません。
当初から表現を控えようとしていたわけではないそうですが、撮影や編集を経ていくなかで、「そういう表現を繰り返す必要はないと感じるようになった」といいます。
「結局のところ、ある人の、ある人生についての物語であって、障害についての物語じゃない」「偶然ダウン症というコンディションがある、一人の人間の物語なんだ」と語ります。
そして観客に、このようにも呼びかけています。
「彼はあなたや私と同じくらい魅力的で、ユーモアがあって、ウィットに富んでいて、チャーミングなんだ。だから障害も、この人の一面に過ぎない。言葉にしてしまえば安っぽいかもしれないけど、人間とは、人生とは、障害や病気を超えたものでしょう」
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