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「無関心層が選挙に行けば…」石丸氏を支えた〝選挙の神様〟の言葉

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この1年あまり、都知事選や参院選で石丸伸二氏(42)を追いかけてきた記者。そのなかで「選挙の神様」と呼ばれる選挙プランナーの故・藤川晋之助氏と出会いました。取材を振り返ります。(朝日新聞記者・中村英一郎)
およそ1年にわたって、石丸伸二氏の選挙を追いかけてきました。
東京都知事選では、石丸氏が注目の的となりましたが、東京都議選と参院選では、新興勢力が議席を増やすかたわらで、石丸氏が代表を務める「再生の道」は、候補者が全員落選しました。
対照的に見える結果ですが、共通することもあるように感じます。
石丸氏を初めて知ったのは、2023年の夏ごろでした。
広島県安芸高田市長として、メディアを問い詰める切り抜き動画を、同僚に教えてもらいました。
当時は、広告営業として15年働いてから記者になって1年あまり。「同じことをされたら、たまったものではない」と思いました。
翌年、都知事選で石丸氏を取材することになりました。この時、「選挙の神様」と呼ばれる選挙プランナーで、今年3月に亡くなった故・藤川晋之助氏と初めて会いました。
まだ選挙戦が始まる前のこと。石丸氏の選挙参謀を務めていた藤川氏は不敵な笑みを浮かべていました。
「政治無関心層が選挙に行けば、おもしろい結果になる」
何度も、石丸氏の街頭演説に足を運びました。そこには、1千人超の聴衆。ユーチューバーがその姿を追い、5千人以上集まったボランティアスタッフが支えていました。
話を聞くと、多くが、政治に不満がたまり、興味すら失っていた人たちでした。
都知事選の結果は、約166万票で2位。聴衆の盛り上がりは分かっていましたが、実際の票数は予想を上回り、その結果にはさすがに驚きました。
今年1月、石丸氏は新党の設立を発表しました。
1128人の応募があり、選考を経て、都議選と参院選に計52人が立候補。試行錯誤の選挙戦の末、全敗でした。
ただ、候補者は大企業の会社員など、ほぼ全員が政治の素人でした。それ以外にも、石丸氏がこの1年間で、政治参加を促した人は何万人もいます。
取材した支持者の中には、応援をやめた人もいますが、政治への興味は失っていないように見えました。
SNSなどを入り口に、無関心だった有権者が政治に目覚める。そして、時として選挙の行く末を左右する――。
そんな流れが、3月に亡くなった藤川氏が言った「おもしろい結果」なのでしょう。
応募者の面接を重ねる石丸氏に、「天国にいる藤川さんは、どんな思いでこの場を眺めているのでしょうか」と聞いたことがあります。
石丸氏はこう言いました。「きっとお酒を飲みながら、ニコニコしていますよ」