連載
#107 夜廻り猫
両親の介護に明け暮れた2年間…「生きてるのがつらい」夜廻り猫

コロナ禍が落ち着いて実家に帰ったら、マッサージチェア2台があり、健康食品が山積みになっていて……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、両親の介護に疲れ果てた女性のエピソードです。
きょうも夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵。ひとりで思い悩む女性の、涙の匂いをかぎつけます。
一人っ子の女性は、コロナ禍が落ち着いて3年ぶりに実家に帰ったところ、床が腐り、マッサージチェアが2台置かれ、健康食品が山積みになっているのを発見します。
自分の貯金で支払いをし、家を修理。ケアマネージャーに連絡し、それから毎月のように帰省して両親の介護に明け暮れましたが、「この2年間、休日がなかった。この先もそうなんだなと思ったら、生きてるのがつらくて」と吐露します。
「よさそうな施設は満員、空いているところは……」
「私は嫌がっている両親を施設に入れる」と声を落とします。
遠藤はあいづちを打ちながら、ただ女性の話を受け止めるのでした。
作者の深谷かほるさんは「人に迷惑をかけるな、とよく言いますが、誰にも負担をかけずに亡くなる人は少ないと、いろいろな例を見ていて思うようになりました」と語ります。
「そもそも『人に迷惑をかけるな』という呪縛が大変に重く、多くの人が苦しんでいると思います」
同年代の友人のなかにも、親の介護のために「自分の人生を犠牲にしたのではないかと思われてしまう人もいます。犠牲という言い方は失礼かもしれませんが…」と語る深谷さん。
「自分もそれが控えている身ですが、老後の備えがあまりにも重過ぎては無理です。『がんばればできる』程度の備えですむように、政治にはお願いしたいです」
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