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#42 小さく生まれた赤ちゃんたち

NICU退院後の生活はどうしたら…「ピアサポート」で家族を支える

日米の違いを小児科医・ふらいと先生に聞きました

画像はイメージです=Getty Images
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目次

小さく生まれた赤ちゃんたち
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早く小さく生まれたり、病気があったりして、生後すぐNICU(新生児集中治療室)に入院しなければならない子どもたちがいます。この子は生きられるのだろうか、成長できるのだろうか、家に帰って生活できるのだろうかーー。親の不安や悩みは尽きません。現在、アメリカで子どもの疫学の研究をしている小児科医「ふらいと先生」こと今西洋介さんに、日本とアメリカの「ピアサポート(同じような立場の人による支援)」の違いについて聞きました。(聞き手:朝日新聞withnews編集部・河原夏季)

<今西洋介さん(ふらいと先生)>
1981年、石川県金沢市生まれ。新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。X(@doctor_nw)のフォロワーは14万人を超える。3姉妹の父親。著書に『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)、『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』(集英社インターナショナル)。ふらいと先生のニュースレター(https://flight.theletter.jp/)を配信している。

「ピアサポート」に積極的なアメリカ

ーーNICUに入院する赤ちゃんやご家族の支援に関して、日本とアメリカで違いを感じることはありますか?

今西さん:日本では、NICUからの退院がゴールのようなイメージがあります。その後のフォローアップはありますが、「小さく生まれても大きく育ってよかったね」となる印象です。

アメリカの場合は子どもを地域に帰し、地域で育てていくイメージで支援体制が整っています。

自治体の支援にも恵まれていますし、教会の役割も大きく、ドネーション(寄付)文化もあります。

ボランティアをする人も多く、早産で生まれたり障害があったりする子どもの親御さんが、お子さんが自立したあとで社会に還元しようと参加しています。ボランティアは病院の中でも活動していて、NICUで治療を受けたあとに移るGUC(新生児回復室)などでも活動しています。

例えば、ダウン症などの特定疾患や気管切開、寝たきりなどのお子さんの親御さん同士でつながって支援する「ピアサポート」が盛んです。

赤ちゃんの退院前に先輩ご家族と会ったり、患者会につながったりして関係を作っていれば、家に帰って生活するときにどんな支援が必要で、どんな社会福祉の制度があるのかといった情報を得られます。

こうした取り組みは日本でも行われていますが、アメリカではさらに積極的です。医療者から患者会を紹介することもよくあります。
 
ーー日本でも一部の病院で導入されているのですね。

今西さん:当事者同士で語り合う「ピアカウンセリング」は、私が以前所属していた子ども専門の病院で導入されています。

地方の病院になると病気や障害のあるお子さんが生まれる事例が少ないので、できない医療機関もあるかもしれません。

私がおつなぎするときも、ピアサポートを必要としているかどうか、ご家族の状況を見極めながらお声掛けしていました。
 
【関連記事】「小さく産んでごめんね」 自分を責めてしまう母親たち…小児科医・ふらいと先生が伝えてきたこと
画像はイメージです=Getty Images
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ーーアメリカでの取り組みで参考になることはありますか?

今西さん:文化の違いもあると思いますが、アメリカは早期発見、早期介入が原則です。

例えば、母親が幼い頃に虐待をされていたなど、「逆境的小児期体験(ACE/Adverse Childhood Experiences)」があったという情報を自治体がキャッチしています。

虐待をされてACEのスコアが高い人ほど、自分の子どもにも虐待する可能性が高いと言われているため、妊娠時から支援をしていきます。

日本では、ラブホテルで産み落とされた赤ちゃんが死亡したとして、出産した女性が逮捕されてニュースになることがありますが、それは病院以外で出産せざるを得なかったケースの氷山の一角です。

そのように出産した母親の生育歴を見ていくと、幼い頃からネグレクト(育児放棄)されていたり、性的暴行を受けていたりする場合がありますが、日本ではまったくマークされていません。そういうケースの女性の妊娠には、早期から支援を届けたほうがいいのではないかと思います。

おそらく、日本の多くの周産期医療者は、赤ちゃんを死なせてしまった母親を逮捕するよりも支援が必要だと感じているのではないでしょうか。アメリカでは逮捕よりも支援だという考え方がしっかり浸透しています。
 
【関連記事】「あなたは障害のある子どもを見過ぎている」 小児科医・ふらいと先生が当事者家族に言われた〝厳しい〟言葉…淡々とした説明にある思い
画像はイメージです=Getty Images
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小さく生まれた赤ちゃんのピアサポート

2500g未満の低出生体重児を出産したり、赤ちゃんに障害があったり……。NICUに入った赤ちゃんを見守るしかなく、不安が募る親たちの支えのひとつは「家族会」などのピアサポートです。

4年前、私(筆者)が都内の病院で両手に収まるほどの小さな息子を出産した際、最初に参考になったのは院内にある家族会でした。

NICUがある病院では、家族会を運営しているところもあります。主にその病院に入院中の赤ちゃんや卒業生の家族を対象に、定期的に交流会が開かれていて、退院後の過ごし方やNICUを卒業した子どもの成長などを知ることができます。

院内に家族会がない場合は、地域の先輩家族が開く家族会(サークル)もあります。なかには住んでいる地域に関係なくオンラインで参加できる家族会も。詳細は「日本NICU家族会機構(JOIN)」のサイトで調べることができます。

NICUで過ごした子どものなかでも、2500g未満で生まれた低出生体重児や妊娠37週未満での早産で生まれた子どもを対象にした家族会も多く立ち上がっています。

私も息子がNICUに入院中、SNSで見つけた家族会にオンラインで参加し、話を聞いてもらって心が軽くなりました。

孤立する家族がひとりでも減ることを願い、引き続き発信していきたいと思います。

【関連リンク】日本NICU家族会機構(JOIN) https://www.join.or.jp/
【体験談メールでお届け】
早産などで赤ちゃんが小さく生まれた家族の体験談を、メールでも紹介しています。こちら(https://asahi-writers.theletter.jp/)からご登録ください。無料で登録できます。
【体験談】22週450gで生まれ、寝たきりの息子 「かわいい」に救われた
【関連リンク】10人に1人が2500グラム未満 小さく生まれた赤ちゃんのリスク(朝日新聞デジタル)

低出生体重児に関する情報・サポートがあります

◆「低出生体重児 保健指導マニュアル」(厚生労働省・小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査 研究会) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000592914.pdf

◆早産児育児ポータルサイト「Small Baby」 https://www.small-baby.jp/

◆「はじめてのNICU」 https://www.nicu.jp/

◆日本NICU家族会機構(JOIN) https://www.join.or.jp/

◆母子手帳サブブック「リトルベビーハンドブック」に関して NPO法人HANDS
https://www.hands.or.jp/activity/littlebabyhandbook/
 
 

日本では、およそ10人に1人が2500g未満で生まれる小さな赤ちゃんです。医療の発展で、助かる命が増えてきました。一方で様々な課題もあります。小さく生まれた赤ちゃんのご家族やご本人、支える人々の思いを取材していきます。

みなさんの体験談や質問も募集しています。以下のアンケートフォームからご応募ください。
【アンケートフォームはこちら】https://forms.gle/dxzAw51fKnmWaCF5A
 

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