連載
#104 夜廻り猫
「午後も頑張ってください」元気をもらえた笑顔と言葉 夜廻り猫

薬をのんで、なんとか働いている男性。いつものキッチンカーが見つからず、新しいところで注文したら……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、気分が沈んでいる男性のエピソードです。
職場に話す人もいなく、抗うつ薬をのんで、なんとか働いている男性。
昼食時に外に出ると、いつものキッチンカーがなく、別のキッチンカーの男性と目が合ってしまいました。
「こういう時、逃げられない性格だ」と思いつつチキンカレーを頼むと、キッチンカーの男性は満面の笑みで「午後も頑張ってください」と袋を手渡してくれました。
夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵は、その話を聞いて笑顔に。男性は「なんか元気をもらえたんだ」「また会えたら、『おいしかったです』って言いたい」と顔をほころばせます。
遠藤は「それはいい」「言いなされ言いなされ」と言いながら、子猫の重郎とともに「応援の舞」を踊るのでした。
作者の深谷かほるさんは、「春は良い季節のはずですが、なんとなく苦手でした」と語ります。
進学や進級、就職――。「節目にまつわる『さぁ、テンション上げて頑張らないと』という空気にうまくついていけなかった記憶があるからかもしれません」と振り返ります。
年月が経った今は、「真新しいランドセルを背負いながらも下を向いて歩いている子を見ると、『大丈夫だよ、ゆっくりでいいよ、楽しくなるよ……』と心の中でエールを送ったりするのです」と話しています。
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