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妊婦は流産・死産リスク「リンゴ病」検査した方がいい人は?方法は?

専門家が検査を勧めるのは妊婦だけではなく……。※画像はイメージ
専門家が検査を勧めるのは妊婦だけではなく……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

2024年末にかけて、首都圏を中心にリンゴ病の過去最大の流行が起きました。妊婦が初感染すると流産・死産の原因になることがあり、専門学会は2025年に全国的な流行が起きるおそれがあるとして、警戒を呼びかけています。ワクチンがなく、お母さんから赤ちゃんへの感染を予防する方法も確立されていないリンゴ病。お母さんが過去に感染し、免疫(抗体)があれば母子ともにかかりにくい状態ですが、検査などはできるのでしょうか。専門家に話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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2025年は全国的な流行を危惧

2024年末にかけて、過去最大となるリンゴ病(伝染性紅斑)の流行が首都圏を中心に起きました。

リンゴ病は大人がかかった場合、約半数は症状が出ませんが、子どもと同様の発疹や、手や腕、膝の関節の腫れ・痛みが出る場合もあります。多くは自然に症状がよくなりますが、妊婦が感染すると、おなかの赤ちゃんの流産・死産の原因になることがあります。

2024年12月10日、日本産科婦人科学会は「パルボウイルスB19によるリンゴ病(伝染性紅斑)はおなかの赤ちゃんに影響することがあります」として注意喚起。

「日本人妊婦の抗体保有率は、20~50%とされ、妊婦が初めて感染した場合は約2割でウイルスが胎盤を通過し胎児感染を起こし、そのうち約2割が流産・死産、胎児貧血や胎児水腫(※)を起こします」

※胸や腹に水がたまったり、全身にむくみが出たりする状態。

そして、「2025年は全国的な流行が危惧されますので注意が必要です」として、警戒を呼びかけました。

リンゴ病ではどんな検査する?

妊婦の初感染で重大なリスクがあるリンゴ病。原因となるパルボウイルスB19のワクチンは開発されておらず、お母さんから赤ちゃんへの感染を防ぐ方法も確立されていません。リンゴ病に詳しい、手稲渓仁会病院不育症センター長で医師の山田秀人さんに、感染対策や検査について取材しました。

山田さんは「感染者の咳やくしゃみを吸い込まないようにマスクをすること、感染者と食器などを共有しないこと、子どもにもキスなどのスキンシップをしないこと、よく手を洗うことやこまめにうがいをすることが感染予防になる」と説明します。

妊婦がリンゴ病の人と接触した、あるいはリンゴ病にかかった可能性がある場合、症状だけで診断することが難しいため、感染者との接触の有無や、保育士など感染しやすい子どもと関わりが多い職業かどうかなどの問診に加えて、検査で血液中の抗体を測定することにより、感染や免疫の有無を確認します。

測定するのは「IgG抗体」「IgM抗体」と呼ばれる抗体です。一般的に、 ウイルス接触後、数日から1週間で他人に感染する時期となり、約10日目よりIgM抗体が検出され始め、さらに数日後にIgG抗体が上昇します。

IgM抗体は感染直後には見られず、数週間で消えます。IgG抗体はウイルスにもよりますが、長期間、体内に残ります。

妊婦のパルボウイルスB19感染では、IgG抗体が高ければお母さんに免疫があって感染しにくい状態、IgM抗体が陽性なら最近になって初めて感染した可能性があるため、赤ちゃんへのリスクがある状態になります。妊婦はIgM抗体の検査は保険適用ですが、IgG抗体の検査やウイルスを調べるPCR検査は自費の扱いになります。

自費でIgG抗体の検査をした場合、医療機関にもよりますが、費用は3000~4000円ほどが相場とのことです。検査キットを常備していない医療機関もあるため、検査ができるかどうかは事前に確認するといいそうです。

妊婦のIgM抗体が陽性であれば感染したととらえ、週1回程度、エコーなどで赤ちゃんの状態を調べ、異常があればより専門的な医療機関で、赤ちゃんへの輸血などの高度な治療が施されることもあります。

「本来であれば、妊娠がわかったときや妊娠を希望する時点で、パルボウイルスB19の免疫の有無をIgG抗体について測定するべきです」と山田さんは指摘します。

「しかし、保険適用になっているのは初感染のおそれがある場合のIgM抗体の測定のみです。基本的な感染対策以外の予防法が確立されていない以上、教育や啓発が必要ですが、それと合わせて、もし感染していたときでもなるべく安心して出産に臨めるような体制を整えるべきではないでしょうか」と話しています。
 

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