連載
#63 イーハトーブの空を見上げて
鉄道模型やプラレール1084両ずらり 半世紀のコレクションを展示
古民家のガラス扉を開けると、部屋一面に飾られた鉄道の模型やヘッドマークが客を迎える。
岩手県奥州市の「奥州懐古館・やまびこ」。
鉄道ファンの伊藤淳さん(65)が4年前、実家の旧仏具店を改装してオープンした「鉄道古民家猫カフェ」だ。
「ひっそりと営業しているので、あまりお客さんが来ると困ってしまうのですけれどもね……」
コーヒーの香りが漂う店内。
周囲を見回すと、全国各地の鉄道のプレートや模型、店内を走るジオラマなどが飾られ、まるで「鉄道ミュージアム」だ。
「7年ほど前に東京の会社を早期退職し、都内の自宅にあった趣味関係のものを、ごっそりこっち(奥州)に持ってきて飾ったんです。せっかくなので、カフェでもやろうかと」
中学2年生の時、友人と宮城県内にSLを見に行った。
線路の脇で待っていると、蒸気機関車が白い煙を巻き上げて通過する際、機関士室から白い紙がひらりと落ちた。
「拾い上げてみると『次に臨時列車のSLが来る』と書かれていました。子ども心に、なんだかとってもうれしくて。それ以来、大の鉄道ファンになりました」
廊下や客室には、カフェに展示されている10倍以上の「個人コレクション」がずらりと並ぶ。
国鉄時代の懐かしいポスター、プロペラ旅客機の大型模型、ブリキのおもちゃ。
鉄道玩具「プラレール」は、発売当初のものも含めて1084両が並べられている。
2階には五輪関連の古いポスターや関係者の制服が飾られ、映画「スターウォーズ」やビートルズのグッズで埋め尽くされた部屋もある。
「まだまだ、やりたいこともあって。店から裏庭へとレールを敷いて、実際に人が乗れるトロッコを走らせたいんです」
人生100年時代。
店内にいる保護猫「こまち」の背をなでながら、少年のように未来を語る。
(2024年6月取材)
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