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東京ベイエリアに浮かぶ「UFOみたい」な円盤 昭和の生活を残す姿

辰巳橋周辺から見た都営辰巳一丁目団地。2024年10月18日、朽木誠一郎撮影。画像の一部を加工しています。
辰巳橋周辺から見た都営辰巳一丁目団地。2024年10月18日、朽木誠一郎撮影。画像の一部を加工しています。 出典: 朝日新聞社

目次

東京のベイエリアの景色に「UFOみたいな円盤」が浮かんでいることに気づいた――その正体は? 行政を取材すると、昭和期によく見られた建造物で、その生活を今に残していること、そして、今後は取り壊しの予定であることがわかりました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「円盤」中に入っているのは水

<有明~新木場周辺の東京のベイエリアの景色を見ていると、その中に、不思議な構造物が浮かんでいました。SNSには「UFOみたいな円盤」という書き込みも。円盤は細い柱で地面につながっていますが、その下は他の建物に隠れて見ることができません。周囲には高い建造物が少なく、その「円盤」だけがやけに目立っています。その正体は?>

東京都住宅政策本部を取材しました。「円盤」の正体は、東京のいわゆるマンモス団地の一つ、都営辰巳一丁目団地の給水塔です。

都営辰巳一丁目団地(都営辰巳団地、辰巳一丁目アパート)は、敷地面積約13万9000平方メートル。鉄筋コンクリート造の87棟3326戸があり、高層棟は2棟のみで、中層棟が地域一体に広がります。1967~69年度に建設されました。

給水塔はその中に現在2基(当初は3基)あります。1968年2月に竣工されたもので、製造元は日本鋼管株式会社(現JFEエンジニアリング)。容量は高架槽120立方メートル、受水槽300立方メートル。高さは40.2mです。

給水塔による給水方式では、一旦、高い位置にポンプで水を持ち上げて貯め、重力と高低差を利用して各住戸に水を送り届けます。

周囲が中層の建物のなか、給水塔の方が高さがあるため、その形状が目立っているといえます。

昭和期の団地の象徴的な給水方式と、そのための建造物で、上部の高架槽にはユニークな形状のものが見られ、愛好するマニアの人たちもいます。都営辰巳一丁目団地のものは、「UFOみたいな」円盤型と呼ばれる、上部が円盤状の形です。

都営辰巳一丁目団地の給水塔が円盤型なのは、同部担当者によれば、「昔のことなのではっきりとはわからないが、一般的には団地として給水の容量を決め、その容量を賄えるだけの設備を発注するため、発注先の企業の製品の仕様だと思われます」とのこと。
 

2032年度までに団地が建て替え

昭和期の団地の生活の名残りである給水塔ですが、現在は取り壊しが予定されています。これは、都営辰巳一丁目団地全体が、2013年度から建て替えの最中だからです。

老朽化や、耐震性が不十分であること、住民の高齢化が進む一方でエレベーターがない棟もあることが理由です。

87棟を17棟(現時点の予定)に、5階建を14階建にするなどして、集約化・高層化します。整理される敷地は公園や保育施設、高齢者施設等のために活用するということでした。

当初、4期14年で2027年に完成予定でしたが、入札不調による工事着手の遅延、および新型コロナウイルス感染症の影響による工事の一時中止があり、現在は第3期の工事中です。工事終了予定は2032年度に変更されました。2017年度に第一期の工事が完了し、居住者は順次、移転(引っ越し)しているということです。

あわせて、給水塔も1基は2014年に取り壊され、残り2基も2014~15年に塗り替えられました。今後、順次、建て替えを進めていく中で、「いずれは取り壊しになる」そう。新しい団地の給水方式は、給水塔を必要としないポンプで圧力をかけて給水する方式であるためです。

遅くとも工事終了の2032年度までには取り壊される給水塔。辰巳のある東京のベイエリアを訪れた際には、その姿を景色の中に探してみてはいかがでしょうか。
 

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