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大好きな納豆、片手で食べられず「幸せ濁った」 高校生が自助具開発

これまで製作した自助具は8個!

納豆のタレに穴を開ける道具=本人提供
納豆のタレに穴を開ける道具=本人提供

目次

納豆のパックを、片手で開け、タレもかけられますか?障害やけがで両手を使って生活しにくい人の動作を助けたい。4年前から、「自助具」の開発を続ける高校3年生がいます。

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中学生の頃から「自助具」開発

「みんなと一緒にゲームをしたいという友人の悩みを解決したかったんです」

岡山県立岡山操山高校3年の原深唯(みゆい)さんが自助具に関心を持つようになったのは、中学3年の頃のことでした。
片手にまひのある友人が、ゲームのコントローラーの操作に難があったことがきっかけでした。
自分でコントローラーを操作して、よく使うボタンとそうではないボタンを調査。よく使うボタンを片手で持てる形のコントローラーにできないか、3Dプリンターを使って試行錯誤してみたといいます。

友人からは制作過程でフィードバックをもらい、原さんの想定とは異なるリクエストをもらうことも多かったそう。

「片手まひを患っている本人だからこその悩みで、聞かないとわからないんだな」と感じたといいます。

障害のほかにも、突き指など片手が不自由になった友人たちには都度都度、困り事をヒアリング。「薬の錠剤が開けられない」「ドライヤーで髪が乾かせない」「丸いドアノブが回せない」「レトルトのカレーが最後まで出し切れない」――。

これまでに、実際の悩み事から原さんが制作した自助具は8個に上ります。

「使ってもらったときの『使いやすい』という反応もうれしいですが自分にはない視点での『使いづらい』『こうしたほうがいい』という反応の方が興味深い」と話します。

片手で納豆を食べるための自助具と、自助具開発のためのノート=本人提供
片手で納豆を食べるための自助具と、自助具開発のためのノート=本人提供

タレの袋、開けるための「針」で試行錯誤

最新作の「納豆を片手で食べるための自助具」は、全国の中高生の自由研究作品が集まる「自由すぎる研究EXPO」で5つの賞を受賞しました。

毎日必ず1パックは納豆を食べる原さんですが、高校1年生のときに右手を怪我したことで、一時期、大好きな納豆を食べることができなくなってしまいました。

そのことから発想して、納豆を片手で食べるための自助具の研究を開始。学校で週1回ある探求の授業を使って試作を10回以上繰り返しました。

受賞した自助具は、納豆が入った器を固定するパーツと、袋からタレを出すためのパーツで出来ています。

研究の中でも特に苦労したというのが、タレの袋の開け方。

両手が使える場合は袋を破ってタレを出しますが、片手では開けられません。そこで原さんは、ホッチキスのようなU字の器具をプラスチック板で製作。

袋を挟んで、内側の針5本が袋に穴を開けることで、タレが出る仕組みです。

タレがほどよい勢いで出せるようにしたり、タレを出した後に針から袋を外しやすいようにしたりするため、針の本数や配置を試行錯誤したといいます。「机上の空論ではわからないもので、何度も試作を繰り返しました」

開発に使った素材はすべて100円ショップで扱っているもの。

「100円ショップのアイテムでも研究はできるし、それを突き詰めれば今回の自助具くらいまでは作ることができることを伝えたかったんです。3Dプリンターがないと作れないと思わせるようなことはしたくなかった」と語ります。

片手でも何でもできる世界にしたい

一方、自助具がなくても、一時的な怪我であれば、誰かの力を借りながらであれば、納豆を食べることはできたはずです。

それでも原さんが自分ひとりで食べるための「自助具」の制作にこだわったのには、「自分でできる達成感が生きがいにつながる」という思いがあったからだといいます。

「片手生活を自分で経験してみると、だんだんと親に頼むのも気が引けてくることに気がつきました。『私のドジのせいで……』って申し訳なくなってくるんです」

「大好きな納豆を食べて幸せになろうと思っているのに、幸せが濁っていくように感じました」

自分の体験から、日常的な困り事を抱えている人は、「誰かに頼まないといけないからもう何もしたくない」という無気力につながることもあるのではないか考えたそうです。

「片手での生活でも、何でもできる世界にしたい」と考えたといいます。

原さんは今後大学に進学し、「開発者だけではなく、困っている人と一緒に考えるユニバーサルデザインを目指したい」と、建築やデザインを学びたいと考えているそうです。

片手で納豆を食べる自助具を持つ、原深唯さん=本人提供
片手で納豆を食べる自助具を持つ、原深唯さん=本人提供

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