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「妊娠する前」に必要な準備〝不十分〟でも…今すぐ男性にできること

風しんについて - 厚生労働省
風しんについて - 厚生労働省 出典: https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index.html

目次

妊娠を望むとき、男性側にも必要な準備があります。妊婦がかかると生まれてくる子どもに重い障害をもたらしてしまうことのある病気、風しんのワクチンの接種もその一つです。記者も抗体検査を受けてきました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「妊娠する前」に必要だが…

記者が子どもを持つ前、妊娠初期に夫として自分ができるのは「妻を支えること」というくらいの認識でした。しかし、我が家の第一子の出産を経て、男性側にもしておくべき準備が多くあることがわかりました。「風しんのワクチンの接種」もその一つです。

厚生労働省によれば、風しんはウイルスによって引き起こされる急性の発疹性感染症。強い感染力を有し、飛沫感染で、ヒトからヒトへ伝播します。厄介なのが、特に成人で発症した場合、高熱や発疹が長く続いたり、関節痛が起きたりするなど、小児より重症化することがあるということ。

そして、風しんに対する免疫が不十分な妊婦が、妊娠20週頃までに風しんウイルスに感染すると、「先天性風しん症候群」の子どもが生まれてくる可能性が高くなることです。

先天性風しん症候群とは、風しんウイルスが胎児にも感染することで起こる、難聴、心臓病、白内障、精神や身体の発達の遅れなどの病気のこと。妊婦が妊娠1カ月で風しんにかかった場合は50%以上、妊娠2カ月の場合は35%の割合で起きるとされます。

予防にはワクチン(主に接種されているのは麻しん風しん混合ワクチン)が最も有効です。ワクチン接種により、95%以上の人が風しんウイルスに対する免疫を獲得することができるとされます。

このワクチンはウイルスの毒性を弱めて作られたワクチンなので、妊娠前には接種できません。「妊娠する前」に抗体検査や予防接種を検討することが重要です。

20~40代の女性はほとんどが過去に風しんの予防接種を受けているため、風しんに対する免疫(抗体)を持っています。しかし、中には予防接種を受けても免疫(抗体)がつかない人もいて、さらに、予防接種後、年数の経過と共に、免疫が低下してしまうこともあります。

厚労省はリーフレット「準備OK?妊娠を考えるなら、麻しん風しん混合ワクチンを。」で、「20~40代の女性の約14%は風しんの感染予防に十分な抗体を持っていません」としています。

このリーフレットでは「風しんの報告の7割以上が男性」とも報告されており、男性が無関係でないことがわかります。

公的な風しんの予防接種制度が設けられたのは1977年度で、女性が予防接種を受けるようになりました。その後の制度改正により、1979年4月2日以降に生まれた人は男女とも予防接種を受けるようになりました。

つまり、1979年4月1日以前に生まれた男性は、このような公的な風しんの予防接種の機会がなかったため、風しんの免疫(抗体)を持っていない人が多いと言われているのです。
 

15分ほどであっという間に

記者は1986年生まれなので、予防接種を受けているはずの世代ですが、記録が手元になく、そもそも接種を受けたか、「1回の接種では免疫がつかなかった場合の多くに免疫をつけることができる」とされる2回接種を受けたか、を確かめることができませんでした。

国は2014年に「風しんに関する特定感染症予防指針」を策定し、妊娠希望女性“等”に対する抗体検査を行う都道府県、特別区及び保健所設置市への補助事業を実施しています。

記者が住む東京都など、多くの自治体では「妊娠を希望する女性」と「妊婦の同居家族」を対象として、風しんの免疫の有無を確認するための抗体検査を無料で受けられる事業を行っています。

自治体ごとに風しん対策の補助の有無や補助の額などのあり方が異なりますが、東京都内の私の住む自治体では、以下に該当すれば、無料で風しん抗体検査を受けられます。

その条件は「(1)妊娠を希望している女性(19歳以上の方)」「(2)妊娠を希望している女性と同居している19歳以上の方」「(3)妊娠している女性と同居している19歳以上の方」で、男性も(2)(3)であれば無料で風しんの抗体検査を受けられるのです。

第一子の妊娠の時に妻は風しんの抗体検査を受けており、第一子は無事に誕生しましたが、私はその前後で抗体検査を受けていませんでした。次の子どもをもうけることを検討する中で、今回は私も抗体検査を受けておくことにしました。

実際にしたのは、まず、「XX区 風しん 検査」とネットで検索すること。区の公式サイトであることを確かめて、その案内に従います。とはいえ、対象者であれば、「現住所や年齢の確認できるもの(保険証や運転免許証など)」を準備し、区の協力医療機関に電話予約するだけ。

私の場合はたまたま我が子のかかりつけの医療機関で大人も検査可能だったので、まさかの子どもを連れずに小児科に受診することになりました。

予約日時に医療機関へ行き、「あら、XX(子どもの愛称)のお父さん」などと言われながら、確認書類を提示。医療機関に備えてある検査申込書を受け取り、必要事項を記入のうえ提出。

よくお会いする先生に軽く説明をされ、なじみの看護師さんたちに検査(採血)され、結果の説明の予約を入れて帰りました。この間、15分ほどで、あっと言う間に終わりました。

後日、説明を聞くと、私の場合は幸い、十分な抗体価がありました。ここでもし抗体価が低い場合は、予防接種の申し込みができます。

記者の住む自治体では、予防接種も無料で受けられる、ということでした(ただし、大人用のワクチンが常にある医療機関でなければ、ワクチンの入荷までに少し時間がかかるということでした)。

子どもができてあらためて実感したのが、子どもの健康とはかけがえのないものであること。そして、風しんのような病気は、それを生まれてくる前から損なわせるおそれがあるもので、怖いということです。

独立した人間ではあるものの、生まれる前、幼いうちは、ひしひしと責任を感じる子どもの健康。それを守るための準備としては、風しんの検査は、やってみれば想像よりはるかに簡単で、だからこそ多くの人に検討してほしい仕組みでした。
 

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