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コウメ太夫、SNSでもイジられる魅力 実は〝勉強〟でできたキャラ

コウメ太夫さん(右)と福岡県川崎町キャラクター小梅ちゃん
コウメ太夫さん(右)と福岡県川崎町キャラクター小梅ちゃん 出典: 朝日新聞社

目次

『エンタの神様』(日本テレビ系)でブレークし、現在でも特殊な立ち位置でバラエティーを賑わせる孤高のピン芸人・コウメ太夫。強烈な芸風は飽きられやすいと言われるが、なぜ彼は一定の存在感を保ち続けているのか。SNS上での“イジられ方”やこれまでの出演番組などを踏まえ、コウメが放つ魅力について考える。(ライター・鈴木旭)
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そもそも「自分は自分だ」と思っている

先月9日に放送された『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日)にコウメ太夫が出演し、率直な考えを赤裸々に披露してスタジオを沸かせた。

同番組は、「文は人なり」をコンセプトとしている。芸人やタレントなど、幅広いジャンルの人が書いた生々しい文章を音声化し、とろサーモン・久保田かずのぶとウエストランド・井口浩之がそれを聞いて本音をぶつける深夜バラエティーだ。

この日のテーマは、「井口が聞きたいコウメ太夫の本音」。「テレビ」「後輩」「ネタ」に分けて3つの質問がぶつけられたが、とくにコウメの性格が表れていたのは2つ目の「同じ事務所の後輩に嫉妬する?」に対するコウメの回答だ。

「そもそも『自分は自分だ』と思っている」との力強い書き出しから始まり、「後輩に対してどう思う等聞かれる事が時々ありますが、だからなんだよと思います」と感情が乗る。一方で、賞レースに比べて『エンタの神様』でブレークした芸人があまり評価されていない件については、「自分はいちいち比べません。どちらも生き残る人などはほんのわずかですよね」と冷静に分析。

次に「チュウリップはユリになれますか?」(原文ママ)と印象的な一文を挿入したうえ、「自分らしく好きな様に、自分に向いている事を出来る様に地道に頑張る事しか僕にはできません」と、ひたむきでマイペースな姿勢を感じさせる言葉で締めた。

これに久保田は「ゴーストライターついてる?」と笑わせつつ、「人に興味ないんじゃない?」と文章から受けるコウメの印象を吐露。続けて、いまだにコウメが“着メロ”といった時代錯誤のワードをネタに差し込んでいる事実からも、「『これ伝わらへんやろな』まで考えてない」と自身の見解を語った。
 

一般ユーザーが「#まいチク」を評価、分析

たしかに共感を呼ぶようなネタでコウメが笑わせる姿は想像しづらい。SNS上で独特な扱いを受けているのは、そんな芸風もあってのことだろう。

コウメがTwitter(現・X)に2016年3月から毎日投稿している一言ネタ「#まいにちチクショー」に対し、2017年から一般ユーザーの“まいにちチクショー指導くん”が手厳しい評価をリプライし始めた。7つの星マークのうち黒星がいくつかで評価の高さがわかり、そこに率直な補足コメントを寄せるというものだ。

例えば「フクロウが飛んでいると思ったら~、私のおふくろでした~。チクショー!!」というコウメの投稿に、黒星2つをつけて「シンプルにそんなに面白くないし、お母様にも失礼。しかもなんで飛んでんねん。コウメは無名からいくつもの試練を乗り越えてここまで這い上がってきたろ。今まで築き上げてきたものが崩れてしまうぞ」などと“指導”する。

さらには、この投稿に対して評価を下す“まいチク指導くんを評価くん”や“まいチク指導くんを評価くんを援護くん”といったユーザーが出現し、大いに「#まいチク」を盛り上げたが、2017年末にまいにちチクショー指導くんが引退を宣言。これをきっかけにそのほかのアカウントも軒並み投稿を終了している。

また、同時期に多角的な視点から「#まいチク」を分析するユーザー“哲学者コウ・メダユー”も登場。コウメが「受験生かと思ったら~、その通りでした~。チクショー!!」と投稿すれば、「小梅氏は人間の持つ直感作用を『〜と思ったら〜』という定型句を用い、一つの問題系とし、追求するのだ。革新的な作品」などと、あたかも含蓄のある詩のごとくフレーズの意味を深掘りしていく。

このユーザーの投稿は現在も続いており、フォロワー10万人を超える人気アカウントとなっている。強烈で原始的な芸風と同時に“何を考えているかわからない不可解さ”を感じさせる存在ゆえに、周囲は想像力をかき立てられて思わず手を加えたくなってしまうのかもしれない。
 

「コウメ太夫で笑ったら即芸人引退」企画

毎度バラエティーで強烈なインパクトを残すのも、その奇妙な個性に役どころや企画がフィットしているためだろう。

今年3月放送の『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)では、白塗り&スーツ姿の不動産業界専門家・赤井貴先生(本名)として登場してスタジオを沸かし、今年6月放送の『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)の「太夫フェス訳あって2023 後半戦」では、自身のネタのお手本を白塗りのフジモン太夫(FUJIWARA・藤本敏史)から指南されるというチグハグな展開で笑わせた。

こうした突飛な役どころが多い中で、もっとも筆者の脳裏に焼きついているのが2012年に放送された『テベ・コンヒーロ』(TBS系)の企画「コウメ太夫で笑ったら即芸人引退スペシャル」。

“プロの芸人ならコウメ太夫のネタで笑うはずがない”という偏った仮説のもと、コウメがロンドンブーツ1号2号、おぎやはぎ、有吉弘行の前で次々と持ちネタを披露。笑ってしまった時点で即引退してもらう、というものだ。

一発目は、『エンタの神様』で広く知られることとなった「コウメ日記」。太夫の着物姿で扇子を揺らしながら「チャッチャカチャンチャン♪」とネタを始めると、徐々におぎやはぎらの肩を揺らし、「偏差値の低い学校に入学し~た~ら~、先生がチンパンジーでした~♪ チクショー!」でロンブー・田村淳を撃沈させた。

続くギターを弾いての一言ネタ、様々な偉人の霊を憑依させる“イタコ太夫”の一言ネタ、太夫に扮した湘南デストラーデの吉田尚(現「ナオ・デストラーデ」)との漫才も意外性があったが、何よりも爆笑を誘ったのは子どもの落書きのような絵とともにボニージャックスの「一週間」の替え歌「チクショー1週間」を歌うフリップネタだ。

「月曜日はスリに遭って、火曜日はオレオレ詐欺に遭って、水曜日はドブに落ちて、木曜日は雷に撃たれ、金曜日は竜巻に呑まれ、土曜日はは~た~ん(破綻)。チクチクチクチクチクチクショー、チクチクチクチクチクチクショー♪」

それまで「危なかった」「笑いそうになった」と濁していたが、このネタばかりは誰もが声を上げて笑い、ラストで「コウメ太夫のネタを見ると芸人は全員笑う」と結論づけていたのが印象深い。
 

コウメ誕生エピソードと魅力の核心

興味深いのは、意識的に自身の芸風を生み出しブレークした芸人ということだ。前述の『耳の穴かっぽじって聞け!』の中で、井口から投げかけられた「ネタ作りのこだわりは?」という質問に対し、コウメはこう答えている。

「売られていたお笑いの本を何度も読み直して勉強しました。漫才 コント 漫談 キャラなど そして お笑いに対することがその本には書いてあった記憶があります テレビにでれるようになってから、気がついたのですがこの本書いてたのエンタのプロデューサーさんでびっくりしたのを覚えてます。

エンタに出演している波田陽区さんを見て合間にリズムを入れて決め台詞を言うネタにヒントを得て、これを女形でしている人がまだ出ていないと思ったので、コウメのキャラをすると決意しました」

コウメは所属事務所SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)のお笑い部門を救ったことでも知られている。2004年に立ち上がった同部門は、年齢や芸風を問わず次々とフリー芸人を受け入れたこともあり、「芸人の墓場」とまで言われていた。しかし、2005年にコウメが所属し、『エンタの神様』でブレークしたことで状況が変わったという。

2022年10月放送の『ダウンタウンDX』(読売テレビ/日本テレビ系)の中で、同事務所の錦鯉・渡辺隆はかつて流行した携帯電話の着ボイスの売り上げでコウメが宇多田ヒカルを抜いて1位となり、「それでソニー立て直してくれたというか、お笑い部門を」と語り、相方の長谷川雅紀は「コウメ太夫がいなかったらお笑い部門もなくなってたかもしれない」と感謝している。

コウメらエンタ芸人の活躍によって、SMAは2007年に常設劇場「Beach V」を構えた。そのことでネタを磨く土壌ができ、バイきんぐ、ハリウッドザコシショウ、錦鯉といった賞レースの優勝者を多く輩出することになったのだ。

これだけの大役を果たしながら、およそ後輩から慕われているようには見えず、当人は何の気なしに活動しているように見える。ミステリアスな要素はどこまでいっても増すばかりで、きっとそれこそがコウメの魅力の核心につながっているのだろう。
 

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