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突然の大声や首振り、まばたき…「トゥレット症」周囲どう接すれば?

200人に1人の割合で発症するというデータも

トゥレット症の人に対して、周りはどう接すればよいのでしょうか
トゥレット症の人に対して、周りはどう接すればよいのでしょうか 出典: 朝日新聞社

目次

突然、「あっ」と声が出たり、首を振ったり――。街中でそんな人を見かけたら、発達障害のひとつ「トゥレット症」の当事者かもしれません。自分の意思とは関係なく勝手に体が動いてしまったり、声が出てしまったりするため、当事者会のメンバーは「驚く気持ちもわかりますが、『温かい無視』をお願いしたい」と呼びかけています。どんな症状なのか、周囲はどう対応すればいいのか、取材しました。(朝日新聞編集委員・岡崎明子)

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トゥレット症の診断基準は

自分の意思とは関係なく、勝手に体の動きや声を繰り返してしまうチック症は、子どもの10人に1~2人が発症するありふれた病気です。

多くは自然に改善していきますが、運動チックと音声チックが1年以上続く場合、トゥレット症と診断されます。

10~12歳ごろに症状のピークを迎える人が多く、大人になっても激しい症状が続く人はあまりいません。しかし、少数派だからこそ、勉強や就職、人間関係などさまざまな場面で生きづらさを感じやすいといいます。

チックの症状は多岐にわたり、当事者によっても出方はさまざまです。

<運動チックの例>
・首をふる
・まばたきをする
・体をたたく
・跳び上がる

<音声チックの例>
・短い声が出る
・せき払いをする
・他人の言葉を繰り返す

音声チックのなかには、汚い言葉やひわいな言葉を繰り返す「汚言症」もあります。この汚言症は目立つので注目されやすものの、発症する人は少ないそうです。

トゥレット症の特徴
トゥレット症の特徴 出典: 朝日新聞社

「やってはいけない」と思うほど…

東大こころの発達診療部の金生由紀子准教授は「やってはいけないと思えば思うほど、やってしまうのがトゥレット症の特徴の一つ。『強迫性』と『衝動性』の疾患といえます」と説明します。
 
最近の研究では、200人に1人の割合で発症するというデータもあり、2~4対1の割合で、男性の方が多いとわかっています。
 
原因はよくわかっておらず、かつては「親の育て方が悪い」と言われることもありました。
 
最近の研究では、運動の調整にかかわる大脳基底核を中心に、脳機能に偏りがあることで起こると考えられている。単一遺伝子による遺伝病ではないが、遺伝が関係することもあるといいます。
 
また、ほかの精神疾患を併発している割合が高いのもトゥレット症の特徴です。注意欠如・多動症(ADHD)を併発している人は約50%、強迫症(OCD)を併発している人は約30%とされます。
 
強迫症状を伴うチック症の場合、自分の中で「ぴったりだ」という感覚が得られるまで、行為を繰り返さないと落ち着かない、と訴えるケースもあります。
 
東大の金生准教授は「その人により、症状のとらえ方はさまざま。友達にいじめられた経験や、親から受け入れられず叱られた経験など、育った環境により困難度も異なる」と指摘します。
 
治療は、まずはトゥレット症がどういう障害なのかを知り、症状が悪化しない方法について学ぶ家族ガイダンスと心理教育から始まります。
 
そのうえで、生活のしづらさがまだ強ければ、チックの症状を抑えるエビデンスがある抗精神病薬や、α2アドレナリン受容体作動薬などが処方される場合が多くなっています。
 
NPO法人日本トゥレット協会のホームページ(https://tourette-japan.org/)では、医療機関の情報も掲載しています。
 
 
東大こころの診療部の金生由紀子准教授=東京都文京区
東大こころの診療部の金生由紀子准教授=東京都文京区 出典:朝日新聞社

「何事もなかったかのように接して」

「トゥレット当事者会」(https://www.tourette.jp/)は、LINEやフェイスブックなどでつながっている約1400人のメンバーがいます。
 
代表の谷謙太朗さんは、当事者自身がつながれるだけでなく、家族を支援する場をつくりたいと2019年に会を結成しました。
 
当事者会が訴えるのが、「温かい無視」です。症状が出たとき、その人自身を無視してほしいということではなく、「何事もなかったかのように接してほしいと」いう意味とのこと。
 
「それでも、大きな声や動きに驚いてしまうこともあると思う。だからこそ、まずはトゥレット症という病気を知ってほしい。知っていただくだけでも互いの不安は軽減するかもしれません。社会の理解が得られるように、僕たちもできる限りのことをしていきたいと思っています」
朝日新聞の連載「私はトゥレット症 『温かい無視』を」
朝日新聞の連載「私はトゥレット症 『温かい無視』を」 出典:朝日新聞社
【連載】私はトゥレット症 「温かい無視」を
【第1回】「うるせえ」電車で殴られた僕 奇声が止められない発達障害、知って

【第2回】隣から「馬鹿」「死ね」聞こえても無視して…トゥレット症と生きる私

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