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〝スメハラ〟注目で 夏の汗のニオイ対策、何ができる?専門家に聞く

汗のにおいは気になるものだが……。※画像はイメージ
汗のにおいは気になるものだが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

夏が本格化する中、職場などでの“スメハラ”対策が話題です。多くの人が悩む汗のにおい。どうすれば改善できるのか、専門家に話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「汗のにおい」には複数の種類

職場の同僚の体臭や口臭、たばこ、香水、柔軟剤のにおいなどの“スメハラ(スメルハラスメント)”に悩む人が増え、企業が対策に乗り出しているというニュースが7月に話題になりました。

人事評価に反映したり、減給・降格などの処分をしたりする企業もあることから、X(旧Twitter)では「難しい問題」「やりすぎでは」などの感想が盛んに投稿されています。

夏も盛りに向かい、汗のにおいを気にする人が多いことから、注目されたこのニュース。「実際にどうケアや対策をしたらいいのか」と悩む声も聞かれました。

汗のにおいを抑えるためにはどうすればいいのでしょうか。日本医科大学武蔵小杉病院形成外科の桑原大彰医師に話を聞きました。

桑原医師は、一般的に「汗のにおい」とされるものには、さまざまな種類の体臭が入り混じっている可能性を指摘します。

まずは「汗臭」。汗の酸っぱいにおいで、酢酸やプロピオン酸、酪酸などが原因になります。また、いわゆる“わきが”と呼ばれる腋臭では、「3-Methyl-3-hydroxyhexanoic acid(HMHA)、3-methyl-3-sulfanylhexan(3M3SH)」といった物質が原因になります。これらは汗に由来するにおいです。

さらに、しばしば枯れ草のようと表現される加齢臭(原因は皮脂腺の分泌物であるパルミトレイン酸から生成されるノネナール)、足の裏のにおい(原因はイソ吉草酸などの脂肪酸)、頭皮のにおい(ジアセチルや脂肪酸)などが加わり、時に不快に感じられる「汗のにおい」になるのです。

他にも、においが強い食品を摂取すれば体臭に影響したり、思春期や更年期、妊娠のホルモンの変化により体臭が変化したり、身につけている服のにおいを体臭だと感じたりすることもあります。

気になる“わきが”には誤解も

桑原医師は、汗自体は無臭に近いものだが「汗腺の種類によって汗に含まれる物質が異なり、それが皮膚の常在菌に分解されるなどして不快なにおいになることがあります」と説明します。

ヒトの汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の二種類があります。一つ目のエクリン腺から出る汗自体にはにおいがほとんどなく、水と少量の塩分、尿素、乳酸、その他の少量の有機酸などが含まれています。エクリン腺は全身に広く分布し、特に手のひら、足の裏、額に多く存在します。

エクリン腺の汗は主に体温調整を目的とし、蒸発により気化熱を奪うことで体を冷却します。また、皮膚を弱酸性に保つ役割を持ち、体の表面の菌の過度な増殖を抑制します。そのため、皮膚の保湿や防御機能の補助にも関わります。

しかし、皮膚の細菌がその汗の成分や、皮脂成分を分解することによって、酸っぱい汗臭を生じさせることがあります。
二つ目のアポクリン腺から出る汗も、分泌直後は無臭です。この汗腺は脇の下や乳輪、陰部、耳の中など特定の部位にのみ存在しており、水分の他に脂質やたんぱく質、糖分、鉄分など多様な成分を含む、粘り気のある汗です。

アポクリン腺の汗は中性から弱アルカリ性で、皮膚上の菌が増殖しやすく、多様な成分が菌により分解されることで、特有の強いにおいが発生します。分泌はストレスを感じたときや興奮した時に多くなります。

特に脇のにおいが強い状態を腋臭症、いわゆるわきがと言いますが、これは後者のアポクリン腺分泌物由来のにおいとされます。ただし、桑原医師は「腋臭症には誤解も多い」と注意喚起します。

「わきがは不快なにおいのため、他人からの忌避だけでなく社会生活やパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。一方で自身ではにおいに気づかないことも多く、双方ともに悩まれることが多い疾患です。

わきがという単一のにおいがあるわけではなく、成分の異なるさまざまなにおいが入り混じっており、体調などによっても変わるため、自分や周りの人の意見で判断するのが難しい面もあります。

真にわきがなのか、他の要因で体臭がしているのかを検査すること、原因に合わせた治療を行うことができますので、気になる場合は専門の医療機関を受診することをおすすめします」

汗のにおいの悩み、どう対策?

対策として、自分でできるのは「主に清潔を保つ、酸化を防ぐ、適切なスキンケアをする、ということになるでしょう」と桑原医師は話します。

「毎日の入浴やシャワーで皮膚表面の汚れや皮脂をしっかり洗い流すことが重要です。ただしこのとき、こすりすぎて皮膚にダメージを与え、防御機構を壊さないように注意してください」

また、「抗酸化作用のあるビタミンCやEを含む食材を摂取することは理論上プラスに働きますし、加えて運動するなどで新陳代謝を促進し、ストレスを軽減して健康的な皮脂分泌を維持することが大切です」と話します。

乾燥する冬に重要だと考えがちな保湿ですが、桑原医師は「夏場にも大事なケア」といいます。「冷房の使用や高温による影響、加齢に伴う皮膚バリアの破綻などで皮膚の水分を保持できなくなったり、菌が増殖しやすくなったりするとにおいが強くなるので、保湿や角質ケアをして、皮膚の保護膜を形成・再生させます」

制汗シートや制汗剤などデオドラント用品については、「シートやスプレー、ロールオン、スティック、ジェルなど自分のライフスタイルや季節に合ったタイプを選んでください」と桑原医師。

意外にも、使用するタイミングは朝の身支度時や入浴後のほか「夜、就寝前も有効」とのこと。夜間は汗腺の活動が低下しており、成分が肌に浸透しやすいため、症状が軽減された状態で翌朝からスタートできるのだそうです。

「デオドラントにはわきが専用の、体臭を抑える力が強いものもあります。また吸湿性の高い素材の衣服を着用し、定期的に洗濯して、においのもとを減少させることも有効です。わきがは医療機関で根治的な治療も検討できる場合があるので、専門家に相談してみてください」

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